土地や空き家のこと2023.01.12
土地の一部を売却する方法とは?「分筆」の手順や費用を解説〜その4
土地の一部分を売却したい場合、「分筆」という手続が必要です。分筆は土地家屋調査士という専門家に依頼し、分筆が完了したら仲介する不動産会社を選定して売却活動を行います。
これまでの記事では、土地を分筆して売却するまでの準備や手順を説明してきました。今回は分筆にかかる費用や注意点について解説していきます。
土地の分筆にかかる費用は?
土地を分筆する際には、土地家屋調査士への報酬と登録免許税の費用が必要になります。
【測量費】
土地の境界が確定している場合の費用は、10万円程度が目安です。
しかし隣地との境界が確定しておらず、境界確定から行う場合は、測量費に加えて筆界確認書(※1)や境界確定図(※2)の作成にそれぞれ10万円程度かかるため、費用は約30万円〜100万円ほど必要になります。
※1:筆界確認書…測量を行って所有する土地の境界を明確にした証明書
※2:境界確定図…確定した境界を記載した図面
【登記申請費】
分筆の登記申請を土地家屋調査士にしてもらう費用で、5万円程度です。
【登記免許税】
分筆後の土地1筆につき1,000円の費用がかかります。
土地を分筆する際の注意点
土地の一部を売却するため分筆する場合、いくつか注意すべき点があります。
①土地を整形地にする
一般的に、土地は正方形や長方形のように形が整っている整形地の方が高く売却できます。土地の形状で建築が制限されることがないため活用しやすく、建物のプランの自由度が高くなるからです。
逆に、売却する方の土地を旗竿地やL字型、三角形などの不整形地にしてしまうと、建築上のロスが大きくなるため、土地の価値を下げてしまいます。ありがちなのは、残す方の土地の使い勝手を優先するために、もう一方の土地が旗竿地になる、というケースです。売却する土地をいびつな形状にしてしまったばかりに人気がなく、売れないというのでは本末転倒です。
スムーズに売却するためにも、分筆の際は売却する土地が整形地になるよう注意しましょう。
②接道義務を満たす土地にする
接道義務とは、「建築物の敷地は、建築基準法に定められた道路に2メートル以上接していなければならない」という決まりのことです。接道義務を満たしていない土地には建物が建てられないため、まず売れることはありません。分筆に際しては、この点をしっかり確認して進めましょう。
③残す土地が適法かどうかに注意
住まいがある土地を分筆する場合、建物が建っていない方の土地を売却すると思います。この時、分筆後も引き続き居住する建物が、適合性を維持できるよう注意しましょう。
売り出す土地をできるだけ大きくしたいからと、家が建っている方の土地面積を減らしすぎると、その家が建ぺい率、容積率、北側斜線などの基準に適合しない違反建築物になってしまう可能性があります。
しかし違反建築が発生するような分筆でも、登記は可能です。それは、分筆手続きには建築士や行政の建築指導部門がまったく関与しないから。気づかれないまま登記された場合、売却した土地に建築確認申請が行われて初めて違反が判明することに…。この段階で判明すると、建物の一部を取り壊さざるを得なくなってしまうため、建物付きの土地を分筆する場合は、残す建物の適法性が維持できるかどうか慎重に検討してください。
④境界標は確定測量図と照合する
境界標があっても100%安心はできません。測量精度が低い時代の境界標や、工事や自然災害によってずれるなど、実際には境界標に誤差があるケースは少なくないからです。
測量図には「確定測量図」「地積測量図」「現況測量図」の3種類があり、このうち境界を主張できる根拠となるのは「確定測量図」のみです。確定測量図は、その土地に隣接しているすべての隣地所有者や役所担当者が立ち会いのもとで境界線を確定して作る図面だからです。
有効なのは確定測量図に示す境界ポイントの境界標だけですので、分筆の際は土地の境界標を鵜呑みにせず、確定測量図と現地の境界標に相違がないか照合しておきましょう。
⑤分筆できない土地もある
実はすべての土地が分筆できるわけではありません。次のような土地は分筆を行うことができないため、注意が必要です。
・接道義務をギリギリに満たしている土地
・条例で分筆が禁じられている土地
・地区計画などで一筆の土地の最低面積が定められている土地
・分筆により面積が0.01平方メートル未満になる土地
接道の長さが規定ギリギリだと、節税目的の分筆であると判断され、分筆が認められません。また、地域の条例等で最低敷地面積が規定されている住宅地などでは、規定以下の面積になる分筆が認められないこともあります。
土地の分筆に関しては、下記のコラムでも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
まとめ
土地を有効活用するため、広い土地の一部を売却したいと思ったら、必ず分筆をしなければなりません。分筆には測量と法務局への登記が必要ですので、専門家である土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
分筆にかかる費用や時間は、確定測量図の有無で大きく変わってきます。確定測量図があればスムーズで、分筆にかかる費用は15〜20万円程度です。一方、隣地との境界が確定していない場合は、隣地所有者と境界確定の協議をした上で同意を得ることが必要となり、費用も100万円程度かかるケースがあります。
売却のために分筆するのですから、活用しやすい形状にすることや接道義務を満たすよう注意し、少しでも高く、かつ売れやすい土地に分筆することが重要です。不動産会社や土地家屋調査士のアドバイスを参考に、望ましい形で分筆できるよう進めていきましょう。