不動産管理コラム

不動産管理のこと2025.10.28

原状回復のオーナー負担とは?費用目安とトラブル対策を解説

こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。

「どんな場合にオーナーが費用を負担しなければならないのだろう?」
「原状回復費用の負担をめぐって、退去時にトラブルに発展するのが不安」
そんな疑問や不安をお持ちではありませんか?

原状回復の費用は、賃貸経営の収支に直結する重要な項目です。
負担の線引きを正しく理解しておかないと、思わぬ出費や入居者とのトラブルにつながるおそれがあります。

そこで今回は、国のガイドラインに基づいた原状回復の基本的な考え方をはじめ、オーナー負担となる代表的なケースや費用の目安、そしてトラブルを防ぐための具体策をわかりやすく解説します。
壁紙の張替え

 

原状回復の基本的な考え方

「原状回復」と聞くと、「借主が入居したときと同じ状態に戻すこと」と思われがちですが、実際には少し違います。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、原状回復とは「入居者の故意や過失で傷んでしまった部分を直すこと」という位置づけです。
例えば、うっかり壁に穴をあけてしまったり、水回りの掃除を怠ってカビが広がってしまったりした場合などは、入居者の責任で修繕する義務があります(民法第621条)。

一方で、時間が経つにつれて自然に色あせた壁紙や、家具を置いた跡のへこみなど、「普通に暮らしていて避けられない傷み」は直す必要はありません。

つまり原状回復とは、「全てを元に戻すこと」ではなく、入居者の故意や過失によって発生した「余分な損傷」だけを直すこと。
この考え方を理解しておくと、どこまでがオーナー負担なのかを判断しやすくなります。

 

原状回復がオーナー負担になる可能性があるケース

原状回復費用は、入居者の故意や過失によって発生した損傷のみが入居者負担となります。

一方、自然に生じる劣化や通常の使用による傷みは、原状回復費用として入居者に求めることができず、オーナーが修繕を行う必要があります。
代表的なオーナー負担の事例を項目に分けて見ていきましょう。

 

事例①壁や天井の「日焼け・電気焼け・画鋲の小さな穴」

壁紙や天井は、日光や家電の熱、生活習慣などによって徐々に変化していく部分です。
これらの変化は、通常の生活で避けられない自然な経年変化であるため、入居者に責任はありません。

【例】

  • 日光による窓際の壁紙の色あせ
  • テレビや冷蔵庫の裏の黒ずみ(電気焼け)
  • ポスターをとめた画鋲の小さな穴

「ポスターやカレンダーを飾るための画鋲使用も?」と思われるかもしれませんが、一般的な生活の範囲内に想定されるので、「通常使用による損耗」としてオーナー負担が基本です。

 

事例②床(フローリング・畳・カーペット)のへこみや変色

家具の設置や日光の影響による床材の劣化も自然な損耗と考えられます。

【例】

  • タンスやベッドを置いたへこみ
  • 日光による畳やフローリングの色あせ
  • 日焼けによるカーペットの変色

次の入居者に快適な空間を提供するための表替えや清掃も、オーナーの管理責任に含まれます。

 

事例③設備・機器の経年劣化による故障

給湯器やエアコンなどの設備は、一定期間を過ぎると自然に劣化します。
入居者が正しく使用していたにもかかわらず故障した場合、修繕や交換はオーナーが対応する必要のある内容です。

【例】

  • メーカー指定の使用期限を超えた給湯器の故障
  • エアコンの寿命による動作不良
  • 照明器具や換気扇の経年劣化による故障

 

事例④鍵の交換・ハウスクリーニング・消毒などの管理目的の対応

入居者の入れ替わりに伴う物件管理上の措置も、基本的にはオーナー負担です。
次の入居者を迎えるために必要な清掃や安全対策は、オーナーの責任範囲に含まれます。

【例】

  • 入居者が鍵を紛失していないのに行う鍵交換
  • 退去後のハウスクリーニング
  • 台所・トイレ・浴室などの消毒や除菌作業

 

オーナー負担となる修繕費用の目安

オーナー負担となる費用には、壁紙の張り替えや床の補修、設備の交換、ハウスクリーニングなどがあります。

費用は物件の広さや設備のグレード、地域の相場によって変動するため、実際に修繕を行う際は、複数の業者から相見積もりを取って比較するのがおすすめです。
一般的な費用目安をご紹介しますので、業者選びの判断基準にぜひご活用ください。

【張り替え・補修にかかる費用】

  • 壁紙(クロス)の張り替え:1,000〜1,500円程度/㎡
  • フローリングの張り替え:2万~10万円程度/畳
  • フローリングの部分補修:6,000~6万円程度(傷やへこみの程度による)
  • 畳の交換:7,000~2万円程度/畳

【設備交換費用】

  • 給湯器の交換:10万〜30万円程度
  • エアコンの交換:5万〜15万円程度
  • トイレ交換:10万~30万円程度
  • 洗面台の交換:7万〜20万円程度

【ハウスクリーニング費用】

  • 1人暮らし向け(1R・1K・1DK):約1万5,000〜4万円前後
  • 2人暮らし向け(1LDK~2LDK):約3万〜7万円前後
  • ファミリー向け(3LDK以上):約5万〜10万円前後

 

原状回復で起こりやすいトラブルと対処法


原状回復では、オーナーと入居者の認識の違いから、次のようなトラブルが起きやすくなります。

  • 「これはもともとあった傷だ」と主張される
  • 請求金額に納得してもらえず、「こんなに払う必要があるの?」とクレームを受ける
  • 支払いに同意してもらえず、費用の回収が難航する
  • ペットによる傷を「生活の一部」と主張され、負担範囲で対立する

こうしたトラブルは、事前の確認・明確な契約・丁寧な説明を徹底することで防ぐことができます。
それぞれのポイントを見ていきましょう。

 

①入居時の状態を記録し、入居者と共有しておく

退去時に「この傷は誰がつけたのか」をめぐる争いを防ぐには、入居時点での状態をしっかり記録しておくことが何より重要です。

国土交通省の「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」を活用し、壁や床、設備の状態を入居者立会いのもとで確認・署名しておきましょう。
写真や動画で記録を残しておけば、退去時に照合でき、責任の所在を明確にできます。

 

②契約時に特約や費用負担のルールを明確にしておく

請求額へのクレームや支払い拒否を防ぐには、契約時点で費用負担のルールを明確にしておくことが大切です。
特に、ハウスクリーニング費や軽微な修繕費など、入居者に一部負担を求める場合は特約で金額・内容を具体的に記載しましょう。

また、ペット飼育可物件では、「ペットによる損傷は入居者負担」と特約に明記しておくと安心です。
入居者が事前に内容を理解・同意していれば、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。

ペット可物件の経営メリットや注意点については、「アパート経営はペット可が有利?需要とメリット・デメリットを解説」で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

③退去時に費用の根拠を丁寧に説明する

退去時は、入居時の記録と照らし合わせながら、修繕が必要な箇所と費用の根拠を具体的に説明しましょう。
「なぜこの金額になるのか」を明示することで、入居者も納得しやすくなり、支払いを拒否されるリスクを減らせます。

経年劣化を考慮した負担割合や、耐用年数に基づく算出を行い、公正な判断であることを示すことが信頼構築のポイントです。

 

④管理会社に対応業務を依頼する

トラブル対応や請求回収をスムーズに行うには、管理会社に対応業務を任せることも有用な選択肢です。
専門知識を持つ管理会社であれば、ガイドラインに沿った適正な対応ができますので、自主管理よりもオーナーの手間やストレスを軽減できます。

自主管理で起こりやすいトラブルやその回避策については、「自主管理の大家が直面するトラブルと回避策を解説」で詳しく解説しています。
ぜひあわせてご覧ください。

 

まとめ

●原状回復とは「入居者の故意や過失による損傷を修復すること」
経年劣化や通常使用による損耗はオーナー負担、故意・過失による損傷は入居者負担となるのが基本です。

●自然消耗や劣化に対する原状回復はオーナー負担が基本
家具跡のへこみ、冷蔵庫の電気焼け、日焼けによる変色、画鋲の小さな穴、ハウスクリーニング、設備の経年劣化による故障などの対応は、原則オーナー負担です。

●オーナー負担の原状回復の費用目安
壁紙の張り替えは1㎡あたり1,000〜1,500円、フローリングは1畳あたり2〜10万円、ハウスクリーニングは広さにより1.5〜10万円程度が目安です。

●原状回復で起こりやすいトラブル回避には入退去時の対応が鍵
トラブル回避には、入居時の状態の記録、契約内容と費用の明確化、退去時の丁寧な説明、管理会社の活用などが有効です。

北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

 

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著者
原状回復のオーナー負担とは?費用目安とトラブル対策を解説

小樽駅前店 小幡 将大賃貸物件に関するお悩みや不安、ご相談ごとは、どんなに小さなことでも私たちにお任せください。入居者様にとっては毎日の暮らしを支える住まいであり、オーナー様にとっては大切な資産です。だからこそ、お一人おひとりに寄り添い、誠実で丁寧な対応を心がけています。「ここに相談して良かった」と思っていただけるサービスを、これからも提供してまいります。

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