相続や名義のこと2022.04.02
相続した空き家や土地は国や自治体に寄贈できるのか?
昨今では、独立した子が生まれ育った地域を離れ、別の都道府県や市町村へ移り住むのは珍しくないことです。
実際、総務省の調査を見ても日本全体で年々、核家族化が進んでいるようです。
それに伴い浮き彫りになっている問題の1つが、「相続した空き家や土地が不要な場合の選択肢」です。
遠隔地に住んでいるため、相続した不動産の管理ができない状態でも、所有し続けている限り固定資産税の支払い義務は免れません。
その固定資産税も、相続不動産の管理状態が劣悪であれば、倒壊や周囲の生活環境に有害とみなされる「特定空き家」(近所に迷惑をかけている空き家)として控除対象から外れ、6倍にまで跳ね上がる懸念もあるのです。
そこであなたが考えるのは、1:相続放棄、2:売却、3:寄贈の3点ではないでしょうか。
本記事では1つ目の相続放棄、3つ目の寄贈に着目をし、必要のない空き家や土地を国や自治体に対して寄贈可能かどうかを解説していきます。
「相続放棄」「寄贈」とはどのような方法なのか?
相続放棄
亡くなった方の資産や負債を一切相続しないことです。相続放棄の期間は「自分のために相続があったと知ってから3カ月」となります。
基本的に全て放棄することが前提なので、一定の遺産のみを相続し残りの遺産を放棄するということはできません。
寄贈
国や自治体・公共性の高い団体などに無償で引き取ってもらう方法です。
但し、必ずしも寄贈できるとは限りませんので、以下を参考にしてみてください。
相続した土地や空き家の相続放棄、寄贈は可能?
上記で説明していますが、遺産の一部を相続放棄することは認められていません。
例えば、実家だけを相続放棄し、預貯金を含む他の遺産は相続するいう選択はできないのです。
では国や自治体に寄贈はできるのかと考えますが、民法では寄贈は贈与契約と同じ扱いとなるため、積極的に寄贈を受け入れている自治体は少ないようです。
その土地や空き家の場所が、道路用地であるなど、行政上の目的がなければ受け付けていないのが実情です。
一部の自治体では、基準を設けた上で寄贈の受け入れも行なっているようなので、地域の自治体に問い合わせてみるとよいですね。
新たな法律|国庫帰属法
2021年4月に成立した国庫帰属法は、相続した不要な土地を国に返すことができる制度で、2023年4月27日から施行される予定です。
所有者不明となり事実上放置されている土地はかなり多く、全国に410万ヘクタールあると言われています。
なかなかピンとこない数字ですが、九州の面積を上回る面積と言い換えると、かなりの大きさであることが分かります。
とはいえ、全ての土地がこの制度を利用することはできず、一定要件を満たす場合のみ可能で、その要件は高いハードルとされています。
要件は次の10項目となり、これらに該当していないことが条件です。
1:建物が建築されている土地
2:担保権などが設定されている土地
3:通路などが他人に使用されている土地
4:土壌が汚染のされている土地
5:境界線が不明確、所有権などで争いのある土地
6:崖が側にあり、管理上困難を要する土地
7:工作物や樹木、車などがある土地
8:除去しなければいけないものが地下にある土地
9:訴訟を起こして争わなければ使用できない土地
10:1〜9以外で費用や労力が余計にかかる土地
上記の要件をクリアする必要があり、さらに帰属する際に10年分の管理費用を納めなければいけません。こちらの費用計算についてはまだ詳細未決定となります。
また、帰属の際の審査段階で、審査料が上乗せされる可能性もあり、こちらも詳細は決まっておりません。
最後に
相続した不必要な土地や空き家を国や自治体に寄贈できる可能性はゼロではありませんが、現行の法律では壁が高いことが分かります。
今回ご紹介した相続放棄のほか、売却なども視野に入れ情報収集しておくと安心かもしれません。
いざ相続となった時に初めて、把握できていないことや取り決めしていなかったことの多さに気づき、スムーズに進まない場合もあるようです。
相続前の段階では、繊細な内容となるため、なかなか家族内で話し合いもしづらいですが、少しずつ方向性を決めていく必要があるでしょう。