相続や名義のこと2023.10.19
不動産の共有名義の片方が死亡したらどうなるの? 相続手続きの注意点や売却方法を解説~その4
遺産に不動産があると、相続トラブルが起こりやすくなります。現金と違って不動産は簡単に分割できない財産だからです。今回は、共有不動産を売却する方法について、詳しく見ていきましょう。
相続した共有不動産を売却する方法とは
トラブルの種になりやすい共有名義の不動産。相続人同士の争いを避けるにはどのような解決策があるのか、不動産の遺産分割・売却方法について解説します。
不動産の分割方法は4種類
複数の相続人で不動産を遺産分割するには、「共有」「現物分割」「代償分割」「換価分割(売却)」の4種類の方法があります。
〈共有〉
共有は、不動産を「分けることなく」複数の相続人の共有名義で受け継ぐ方法です。共有は売却や賃貸に出す際、共有者全員の同意が必要であるなど、管理や処分が非常に面倒です。また共有したままにすると、将来的に相続が発生した際、さらに相続人が増えて売却は困難になります。デメリットが大きいため、安易に共有名義にすることは避けましょう。
〈現物分割〉
現物分割は、不動産そのものを物理的に分ける方法です。広大な土地であれば、一筆の土地を同じ割合に分筆して各相続人が取得したりできますが、建物は分割できません。現実的な選択肢とは言い難いでしょう。
〈代償分割〉
代償分割とは、相続人の1人が不動産を取得し、他の相続人に法定相続割合に応じた代償金を払って精算する分け方です。分割しにくい土地建物でも公平に分割でき、相続した不動産に住んでいる相続人が家を出ずに済むなどのメリットがあります。一方で、「不動産を取得する相続人が代償金を用意できるかどうか」と「不動産の価格判定について納得のできる指標の選定」が課題になります。
〈換価分割(売却)〉
換価分割は、相続した不動産を売却し、その代金を相続人が分け合う方法です。現金に換えるため平等に分割できますが、相続人の中にその不動産に住んでいる人がいる場合は、売却後に住む家を探さなければなりません。
換価分割をするには名義変更が必要
換価分割、つまり相続不動産の売却を行う場合は、名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。なぜなら、登記は権利関係の過程を正しく登記簿へ載せなければならず、省略は認められていないからです。
相続人が複数人いる場合は、共有名義に変更しても問題がなさそうに思えますが、その場合は売却の同意や契約・決済の立ち会いに全員の捺印が必要になり、手続きに相当な労力がかかってしまいます。売却をスムーズに進めるには、相続人のうち代表者1人の単独名義として相続登記を行ってから売却する方が合理的です。
この時に注意しなければならないのは、代表相続人1人の名義にしてしまうと、単純に1人だけが不動産を相続して、売却代金を他の相続人に贈与したように見えてしまう点です。代表相続人へ名義変更するのは、あくまでも換価分割が目的の便宜的なものであり、相続人で遺産を分けるため。多額の贈与税が発生することのないよう、第三者から見ても換価分割だと分かるように、遺産分割協議書には換価分割を行う旨や不動産売買代金の分配について明記しておきましょう。
贈与税がかからないよう遺産分割協議書を作成したら、相続登記は約1カ月で完了します。その後は、一般的な売却方法で売却を進めます。
まとめ
共有名義の不動産を持つ人が亡くなった場合、そのまま生きている方の所有になるわけではなく、被相続人(故人)の持分は法定相続人に相続されます。しかし相続によって共有名義人が増えると、売却や活用が困難になる、面識のない他人と共有するケースが発生するなど、トラブルが起こりやすくなります。また、そもそも内縁関係の場合は相続権がありません。
共有者の片方が亡くなっても遺された配偶者が困らないよう、共有名義の不動産をもっている人は、あらかじめ遺言書を作成するなど生前に相続対策をしておくことが重要です。
一般的に、最もよく利用される遺産分割の方法は、遺産を換金して得た現金を相続人が分け合う「換価分割」です。不動産を売却するためには相続登記のための名義変更が必要で、売却活動をスムーズに進めるためにも可能な限り単独名義にしましょう。