相続や名義のこと2023.09.28

不動産の共有名義の片方が死亡したらどうなるの? 相続手続きの注意点や売却方法を解説~その3

共有名義の不動産を所有している場合、共有者の片方が亡くなってしまったら、故人に相続人がいればその人が共有持分を相続します。相続人がいない場合は、家庭裁判所の手続きを経て「特別縁故者」や「生きている共有者」が取得することが可能ですが、手間や時間がかかります。

今回は、共有名義の片方が亡くなった場合、相続で特に注意すべき点について具体的に見ていきましょう。

共有持分の相続に関する注意点

共有名義人の片方が亡くなった場合、遺産相続でトラブルが発生することがあります。リスクを回避するためにも、共有者として注意すべきポイントを解説します。

他人との共有は回避する

不動産を夫婦の共有名義にしていた場合、配偶者が亡くなると、その持分を相続した他人と不動産を共有するケースがあります。夫婦で共有していた時には協議しやすかったことも、他人が相手となれば自分の意見を主張しにくく、何かと気を遣わなければなりません。
共有名義の不動産は独断で売却や賃貸に出すことはできず、共有者全員の同意が必要です。共有者の人数が多いほど、意見を調整するのは難しくなるでしょう。このように、共有名義の不動産は運用に著しい支障が出てしまいます。相続トラブルを避けるため、家族ではない人と不動産を共有する選択は避けるべきです。

あらかじめ遺言書を作成しておく

夫婦共有の場合、子どもがいないと、亡くなった配偶者の両親や兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。こうした事態を防ぐには、事前に双方で遺言書を作成し、片方が亡くなった場合はもう片方に不動産の持分すべてを相続する旨を記載しておく方法が最も確実。遺言書がある場合は、その内容が法定相続よりも優先されるからです。

特に内縁関係の夫婦の場合は相続権がありませんので、遺言書の存在は重要です。長年パートナーとして一緒に財産を築いても、亡くなった人の財産を受け取る権利はないため、確実に共有持分を取得させるためにもパートナーに財産を譲る旨の遺言書を作成しておくことが大切です。

〈遺留分に注意〉
遺留分とは、一定の法定相続人に最低限保証される遺産取得分のことで、遺された相続人の生活を保障するためのものです。例えば、もし亡くなった人が遺言書に「相続人ではない第三者に全財産を相続させる」といった内容を記していれば、遺された家族の生活が困窮する可能性があるからです。遺族の生活を守るという意味合いがあるため、被相続人の兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。

遺留分の割合は、「法定相続割合の1/2または1/3」と定められています。もし遺言書で自分に取得の権利があった遺留分が侵害された場合、その相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使して、遺留分の額の金銭を取り返すことができます。そのため、例えば内縁関係のパートナーに全財産を譲ると遺言を遺していた場合でも、本来の相続人が請求を起こして認められれば、相当額の金銭を受け取る権利が発生します。

生前に遺留分を放棄させる

せっかく遺言書を遺しても、遺留分侵害額請求を起こされてしまうと、被相続人の希望通りには相続できなくなってしまいます。遺言書通りに相続を進めるためには、対策として遺留分の権利を持つ人がその権利を自ら手放す「遺留分放棄」を利用する方法があります。

被相続人が生きている時に相続人が遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。許可されるかどうかは、次の基準により判断されます。

・遺留分権利者が自らの意思で放棄しようとしているか(他者が強要してはならない)
・遺留分放棄に合理的な理由と必要性があるか
・生前贈与を受けた、借金の肩代わりをしてもらったなど、遺留分放棄をする見返りがあるか

例えば、子どもが1人いる夫婦で、夫が不動産の持分すべてを妻に相続したい場合、すでに住宅資金などの贈与を受けている子どもが納得した上で遺留分放棄の意思表示をしていれば、家庭裁判所から許可されやすくなるでしょう。その上で、被相続人が遺言書で妻を相続人に指定すれば、不動産の持分すべてを妻に相続することができます。

離婚した場合はすぐに共有関係を解消する

自宅を夫婦共有名義にするケースはよくありますが、もし離婚後も共有名義にしたまま元配偶者が亡くなった場合、その後の対応は複雑で厄介です。亡くなった元配偶者とは、あくまでも不動産の共有者という関係で、法定相続人ではないので遺産分割協議には一切関与できません。

そのため協議の結果次第では、元夫(元妻)の親兄弟と不動産を共有することになってしまいます。すでに他人となった人たちと不動産を共有することになると、自分の持分を売却するにも相続人全員の同意が必要になるなど、相当面倒な事態になります。不動産の共有名義は、離婚時に可能な限り解消しておきましょう。

住宅ローンの残債があれば団信の加入を確認する

被相続人が団体信用生命保険(団信)に加入している場合は、住宅ローンの借入先の金融機関に必要書類を提出し、保険金支払の手続きを行いましょう。残債があっても、団信に加入していれば、亡くなった配偶者名義の住宅ローンは完済されます。

ただし一般的な住宅ローンとは異なり、フラット35は団信の加入が任意となっています。もし被相続人が団信に加入しておらず、住宅ローンに残債がある状態であれば、相続人はマイナスの財産である住宅ローンも引き継ぐことになります。引き継ぎの手続き後、抵当権変更登記を行います。住宅ローンは金額も大きいため、団信の加入状況は必ず確認しましょう。

次回は、相続した共有不動産を売却する方法について解説します。

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不動産の共有名義の片方が死亡したらどうなるの? 相続手続きの注意点や売却方法を解説~その3

札幌手稲店 野口 祥子

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