相続や名義のこと2023.09.05
不動産の共有名義の片方が死亡したらどうなるの? 相続手続きの注意点や売却方法を解説~その2
家を購入する際、親子や夫婦で共有名義にすることがあります。もし片方が死亡すると、亡くなった人の持分はどうなるのでしょう?この場合、そのままもう1人の所有になるわけではなく、通常の不動産と同様に相続のルールに則って扱われます。
今回は、前回に引き続き相続の流れについて詳しく見ていきます。
共有名義の片方が死亡した場合の相続の流れ
相続人が決まるまでの流れについて、前回の記事では以下の①~③について解説しました。
①誰が相続人なのか確認する
②相続人を確定する
③法定相続人がいない場合の財産分与について確認する
その続きを解説していきましょう。
④遺言書の有無を確認する
被相続人の遺言書があれば、遺言書の通りに遺産分割を行います。
遺産相続では遺言書の内容が法定相続よりも優先されるため、例えば、「共有の不動産を妻のA子にすべて相続する」と書かれていれば、被相続人の持分をA子がすべて相続できます。法定相続分に左右されることはありません。
遺言書は、主に自筆の遺言書と公正証書遺言の2種類があります。公正証書による遺言は、原本が公証役場に保管されているため紛失の心配はありませんが、自筆証書遺言書は被相続人がどこに保管したのか分からない、というケースもあります。自宅や貸金庫など、保管されていそうな場所を探してみましょう。見つけても勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での検認という手続きが必要です。
〈遺言書検認の申立てに必要な書類〉
家庭裁判所に検認の手続きを行うには、遺言書のほかに次の書類と費用が必要です。
・遺言書の検認申立書…家庭裁判所で直接入手、または裁判所のホームページからダウンロード
・800円分の収入印紙
・申立人・相続人全員の戸籍謄本
・遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・連絡用の郵便切手
家庭裁判所は、検認の申立てがあると、相続人に対し検認を行う日を通知します。検認期日(検認を行う日)は相続人全員が集まらなくても問題ありませんが、申立人は必ず出席しなければなりません。相続人立ち会いのもとで裁判官が遺言を開封し、内容を確認します。
検認が完了したら、検認済証明書を申請します。遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。なお遺言書が公正証書遺言や、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言の場合は、検認は不要です。
⑤法定相続人全員で遺産分割協議を行う
遺産分割協議とは、遺産の分け方や割合を法定相続人全員で話し合うことです。有効な遺言書がなく、法定相続とは異なる分割を行いたい場合の手続きで、誰が何をどれくらいの割合で相続するか自由に決めることができるため、不動産のような分割が難しいものは、遺産分割協議で分配方法を決める必要があります。
〈相続登記で提出する遺産分割協議書とは〉
遺産分割協議による相続登記の申請には、戸籍関係書類などのほかに、遺産分割協議書の提出が求められます。遺産分割協議書には、分割する相続財産の具体的な内容や、相続人全員が分割方法や分割割合に合意した内容を記載し、各自が実印を押印します。
⑥遺産分割協議がまとまらない場合は遺産分割調停へ
遺産分割協議を重ねても意見がまとまらず、合意に至らない場合は、裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。遺産分割調停は、調停委員が中立公正な立場で当事者双方から言い分を聞いて調整し、解決案を提示したり、解決に必要な助言をして、全員の合意を目指して話し合いを続ける手続きです。
〈遺産分割調停の申立てに必要な書類〉
申立先は、相続人のうち誰か一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。必要な書類と費用は以下の通りです。
・遺産分割調停の申立書……家庭裁判所で直接入手、または裁判所のホームページからダウンロード
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本および、住民票または戸籍附票
・遺産目録と当事者目録
・遺産に関する証明書……不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書など
・1,200円分の収入印紙
・連絡用の郵便切手
調停が不成立になった場合は、自動的に「遺産分割審判」という手続きに移り、家庭裁判所が遺産の分割方法を決定します。
⑦相続登記を行う
遺産分割の方法が決まったら、相続登記の申請を行います。手続き自体はそれほど複雑ではないので自分で行うことも可能ですが、手続をスムーズに完了したいなら、司法書士に依頼すると良いでしょう。
相続登記の申請は、申請書を法務局の窓口に持参する方法のほか、郵送やオンラインで申請する方法もあります。必要な書類は次の通りです。
・登記申請書
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本または抄本
・相続関係説明図
・不動産を相続する人全員の住民票
・遺産分割協議書(相続人全員の印鑑証明書を含む)
・固定資産税納税通知書など
・登録免許税
〈登録免許税とは〉
登記申請では、登録免許税として収入印紙を申請書に貼って納めます。
相続登記の登録免許税は、不動産価額(課税価額)の0.4%です。不動産の価額は、毎年市町村から郵送されてくる「固定資産課税明細書」に記載の「評価額」で知ることができます。もし手元にない場合は、市区町村役場などで取得できる「固定資産評価証明書(価格通知書)」で確認してください。
次回は、共有名義の片方が死亡した場合に、相続で注意するポイントについて解説します。