相続や名義のこと2025.12.05
実家の田んぼをどうする?相続後の手続きと活用・処分の選択肢を紹介
こんにちは。イエステーション北章宅建 江別店の赤井です。
「農業はできないけれど、実家の田んぼはこのまま放置して良いのだろうか」
「売却以外にも選択肢はあるのだろうか」
実家の田んぼを相続することになり、このような悩みを抱えていませんか?
田んぼは、宅地とは異なり、法律や手続きに独特のルールがある土地です。
そのため、よくわからないまま相続してしまい、管理や税金の負担だけが続いてしまうケースも少なくありません。
今回は、「実家の田んぼをどうするか」と悩んでいる方に向けて、実家の田んぼを相続した際の必要な手続きや、放置することのリスクについてご紹介します。
あわせて、相続した田んぼを放置しないための選択肢として、活用する方法と手放す(処分する)方法を紹介し、売却するポイント、相続放棄する場合の注意点についても詳しく解説します。

実家の田んぼを相続したらどうする?必要な手続きと放置するリスクも確認
実家の田んぼを相続した場合に必要な手続きについて解説します。
あわせて、田んぼを放置することで生じるリスクについてもお伝えしますので、確認してくださいね。
実家の田んぼを相続した後の手続き
実家の田んぼを相続した場合、まず確認・対応しておきたい手続きがいくつかあります。
相続後に行うこと①「相続登記」
実家の田んぼを相続した場合、最初に対応しておきたいのが「相続登記」です。
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きのことです。
2024年(令和6年)から相続登記は義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きを行わなければなりません。
正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が科される可能性もあるため、早めの対応が重要です。
相続後に行うこと②「農業委員会への届出」
田んぼを相続した場合は、相続登記とは別に、田んぼの所在地を管轄する農業委員会への届出も必要です(農地法第3条の3)。
農地は、誰がどのように管理・利用しているかを行政が把握する必要がある土地とされています。
そのため、相続によって所有者が変わった場合は、被相続人の死亡を知った日から10カ月以内に、新たな所有者に変わった旨を、農業委員会へ届け出ることが求められています。
なお、この届出はあくまで所有者変更を知らせるためのものであり、「相続をしたら農業を始めなければならない」という意味ではありません。
手続きを終えても、田んぼを放置するのはおすすめできない
相続登記や農業委員会への届出といった手続きを済ませたとしても、田んぼをそのまま放置することは望ましくありません。
相続した時点で、田んぼの所有者としての管理責任が発生しているからです。
実際に耕作していなくても、所有者である以上、一定の管理の義務や固定資産税の負担は続きます。
また、長期間手入れをせずに放置すると、雑草の繁茂や害獣の発生などにより、近隣とのトラブルにつながる可能性もあります。
「とりあえず何もしない」という選択は、結果として将来的な負担やリスクを大きくしてしまうことも少なくありません。
早い段階で「実家の田んぼをどうするか」を考え、次の選択肢を検討していくことが大切です。
実家の田んぼをどうするか迷ったら?活用・手放す選択肢をご紹介
それでは、「実家の田んぼをどうするか」と悩んでいる場合、どのように扱うのが現実的なのでしょうか。
相続した田んぼを放置しないためには、「活用する」または「手放す(処分する)」といった
選択肢があります。
ここでは、代表的な方法を「活用する」「貸す」「売却する」「国庫に返す」の4つに分けてご紹介します。
①活用する|自家栽培・家庭菜園として使う
田んぼを自分で、家庭菜園や自家栽培として活用する方法があります。
定期的な草刈りや現地確認は必要となるため、時間や労力を確保できない場合には不向きですが、自分で少しでも手入れする機会を作ることで、田んぼを完全に放置せずに済みます。
②貸す|第三者に活用してもらい、管理につなげる
田んぼをほかの農家や農業法人など、第三者に貸して活用してもらう方法もあります。
代表的なのが、農地を貸したい人と借りたい農家をつなぐ公的な仕組み「農地中間管理機構(農地バンク)」です。
借り手がいれば自分で耕作しなくても農地の管理につながり、あわせて賃料も得られる可能性もあります。
ただし、必ず借り手が見つかるとは限らず、農地の条件や地域によっては制度を利用できない場合もある点には注意が必要です。
③売却する|農地のまま売る・農地転用して売る
ここまで紹介した「活用する」「貸す」といった方法は、いずれにしても田んぼを管理し続ける必要があります。
自分で耕作する時間が取れない、借り手を探す手続きも負担に感じるという場合は、売却を検討することも現実的な選択肢の一つです。
売却すれば、田んぼの管理から離れられるだけでなく、固定資産税などの金銭的な負担からも解放されます。
田んぼの売却方法には、「農地のまま売却する方法」と「農地転用してから売却する方法」の2つがあります。
どちらが選べるかは、田んぼの種類や、農用地区域内にあるか、市街化区域内にあるかなど、立地条件によって異なります。
④国庫に返す|相続土地国庫帰属制度を利用する
売却や貸し出しが難しい場合には、「相続土地国庫帰属制度」を利用して、田んぼを国に引き取ってもらう方法もあります。
この制度は、一定の要件を満たせば、相続した土地を国に返すことができる仕組みです。
ただし、土地の状態によっては利用できない場合があり、原則として審査手数料や負担金が必要になる点には注意が必要です。
そのため一度、田んぼの所在地を管轄する法務局に「制度を利用できそうかどうか」を相談してみるのがおすすめです。
制度について詳しくは「相続した空き家や土地は国や自治体に寄贈できるのか?」でも解説しています。
実家の田んぼをどうするか決めるための判断ポイント
実家の田んぼにはいくつかの選択肢がありますが、実際には「継続して管理できるかどうか」が大きな判断ポイントになります。
自分で手入れをする時間が取れない場合や、貸し出しが難しい場合には、売却や相続土地国庫帰属制度といった「所有自体を手放す方法」を検討する方も少なくありません。
実家の田んぼをどうするか悩んだときは、無理のない選択肢を一つずつ整理して考えていくことが大切です。
実家の田んぼを売却する場合のポイントは?
実家の田んぼを売却する場合、一般的な土地売却とは異なる点があります。
ここでは、売却時に知っておきたいポイントを整理して解説します。
田んぼを農地として売却する場合
田んぼを農地のまま売却する場合、買い手は誰でも良いわけではありません。
農地は、農業を継続することを前提とした土地であるため、購入できるのは、一定の条件を満たした農業従事者や新規就農者に限られます。
また、売買にあたっては、農業委員会の許可が必要です。
そのため、次の点をあらかじめ理解しておく必要があります。
- 買い手が限られやすい
- 条件によっては、売却までに時間がかかることがある
田んぼを農地転用して売却する場合
田んぼを宅地や商業地として売却したい場合は、所在地を管轄する農業委員会に農地転用の許可を得る必要があります。
この許可は、農地法に基づいており、農地を他の用途に転用する際には必ず取得しなければなりません。
農地転用が認められれば、地目を変更し、住宅用地などとして売却できる可能性が広がるでしょう。
ただし、全ての田んぼが転用できるわけではありません。
農用地区域内にある土地など、立地条件によっては転用が認められない場合もあります。
そのため、売却を検討する際は、農地転用が可能な土地かどうかを、あらかじめ農業委員会で確認しておくとスムーズです。
地目変更については「不動産売却で地目変更は必要?手続きの流れや注意点も解説」で詳しく解説しています。
いずれの場合も不動産会社・専門家へ相談するメリットは大きい
田んぼの売却では、次のように、個人だけで判断するのが難しい場面が多くあります。
- 農地の種類や区分の確認
- 農地のまま売るか、農地転用できるかの判断
- 必要な許可や手続きの整理 など
そのため、手続きや売却方法に少しでも不安を感じたら、農地売却の実績がある不動産会社や、相続・土地に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
専門家のサポートを受けることで、その田んぼの条件に合った売却方法を整理した上で進めやすくなり、無理のないスケジュールで売却を検討できるでしょう。
実際に、北章宅建では、相続した土地をどのように処分すべきか悩まれていた方のご相談にも対応しており、状況に応じた解決策をご提案してきました。
詳しくは、こちらの事例をご確認ください。
長沼町に相続した土地がありますが、使用していないので処分したいです。
実家の田んぼを相続放棄する場合の注意点

実家の田んぼを相続したくない場合、「相続放棄すれば全て解決するのでは?」と考える方もいるかもしれません。
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を承継しないことを選択する手続きですが、いくつか知っておきたい注意点があります。
注意点①田んぼだけを個別に放棄することはできない
相続放棄は、特定の財産だけを選んで放棄することはできません。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めて放棄することを意味します。
そのため、「田んぼだけを手放し、現金や建物などといった自分に必要な財産だけを相続する」ことはできず、相続放棄をすると、全ての相続財産を一括で放棄することになります。
もし、田んぼ以外に価値のある財産や必要な財産がある場合は、相続放棄が本当に適切な選択かどうか、慎重に検討する必要があります。
相続放棄について詳しくは「不動産関係の「相続放棄」その判断や方法、注意点とは?」をご参照ください。
注意点②相続放棄をしても管理義務が残る場合がある
相続放棄をしたからといって、すぐに田んぼの管理責任から完全に解放されるとは限りません。
次の相続人や管理する人が決まるまでの間は、一定期間、最低限の管理義務が残る場合があります。
そのため、「相続放棄=何も対応しなくて良い」と誤解していると、思わぬ負担が生じる可能性があります。
注意点③相続放棄には期限がある
相続放棄には、期限が定められています。
原則として、相続の開始を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申立てを行う必要があります。
この期間を過ぎると、相続放棄が認められなくなる可能性があるため、早めに情報収集を行うことが重要です。
相続放棄を選ぶ前に考えておきたいこと
相続した田んぼをどうするか考える際、相続放棄で全ての問題が解決するとは限らず、実際には対応が難しいケースも少なくありません。
田んぼの管理が難しい場合は、「売却する」「相続土地国庫帰属制度を検討する」といった、所有自体を手放す選択肢も含めて検討することをおすすめします。
まとめ
●実家の田んぼ相続時は、相続登記と農業委員会届出が必須
実家の田んぼを相続した場合、相続登記と農業委員会への届出を行う必要があります。
これらは相続後の基本的な手続きとなるため、早めに内容を把握し、対応しておくことが大切です。
●実家の田んぼをどうするか迷ったら、状況に応じて最適な方法を選択しよう
相続した田んぼの扱い方には、「活用」「貸し出し」「売却」「相続土地国庫帰属制度を利用する」といった選択肢があります。
自分で田んぼの管理が難しい場合は、売却や相続土地国庫帰属制度の検討をおすすめします。
●相続した田んぼの売却には農地法に基づく許可や事前確認が欠かせない
田んぼを売却するには「農地のまま売却」「農地転用して売却」といった方法があります。
いずれの場合でも、農地法に基づく許可や事前確認が必要です。
条件の判断や手続きは複雑になりやすいため、早い段階で不動産会社などの専門家に相談すると、スムーズに進めやすくなります。
●相続した田んぼの対処法として「相続放棄」を選ぶ場合は注意が必要
相続放棄をすると、田んぼだけでなく、全ての相続財産を放棄することになります。
また、状況によっては一定期間、管理義務が残る場合もあるため、相続放棄が適した方法かどうかは慎重に判断することが重要です。
北章宅建は、不動産に関するご相談を全て無料で対応しています。
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著者
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