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引越しや住み替えのこと2020.10.06
シニアの住み替えは戸建てかマンションか?物件選びのコツと注意点
※コラム内容は掲載当時の最新情報となり、現在改正されている場合があります
子どもが独立して部屋を持て余していたり、リタイア後はもっと便利な環境で暮らしたいと考えたり。生活環境の変化に伴って、住み替えを検討し始めるシニアは少なくありません。
では住み替えるとしたら、戸建てとマンション、どちらが良いのでしょう? 安心して老後を過ごすにはどんな住まいを選べば良いか、今回は戸建てとマンション、双方のメリットとデメリットや住み替えに関する注意点を解説します。
賃貸と買い替えなら、どちらにすべき?
買い替えを検討する前に、賃貸物件に住むという選択肢もあります。まずは賃貸のメリットとデメリットを見てみましょう。
〈メリット〉まとまったお金を用意しなくて良い
買い替えの場合、資金不足であれば住宅ローンを利用することになりますが、退職後や退職間際であれば、住宅ローンはかなりの負担になります。
その点、賃貸はまとまった資金を用意する必要がありません。家の売却資金をそのまま老後の貯蓄にすることができます。
〈デメリット〉高齢者は賃貸が借りにくい
一番ネックになるのは、高齢者だと入居を断られるケースが多い点です。
高齢者に物件を貸したがらない大家さんが多いのは、年収の低さや健康面へ不安があるため。特に老人1人の場合は、孤独死の懸念がつきまといます。
審査に通って入居できた場合でも、賃貸経営をやめたり老朽化で建物を解体するなど、退去しなくてはならない事情が発生することも考えられます。
そうなると、次の住まいを見つけるのはますます難しくなるでしょう。
こうした点を踏まえると、自己所有の家の方がいつまでも住み続けられるため、シニア世代にとっては安心です。
シニアがマンションに住むメリットとは
シニア世代がマンションに住むメリットを見ていきましょう。
1.交通の便が良い商業地の物件がある
都市部の駅前周辺は、高い容積率の商業地域に指定されている事例が多く、物販店や飲食店などの商業施設と高層マンションが共存した市街地が形成されています。
買い物や病院、銀行など必要な施設が周辺に揃っていて便利な上に、交通の便が良いため、車がなくても移動に不自由がありません。
2.日当たりと眺望が良い
リタイア後は、自宅で過ごす時間が長くなります。
そのため、日当たりや眺望の良さは重要なポイント。バルコニーから開放感のある眺めや木々の緑が楽しめたり、一日の大半を過ごすリビングの日当たりが良好であれば、気持ちいい生活が送れるはずです。
逆に日当たりが悪かったり、景観が味気なかったりすると、気分が滅入ってしまうこともあるでしょう。
3.バリアフリーの生活ができる
歳を重ねると身体機能が衰え、階段の上り下りやちょっとした段差も負担になります。このため戸建てでは、老後に2階を利用しなくなったという人も少なくありません。
エレベーターがついているマンションであれば移動はスムーズ。居住スペースに段差がほとんどないので各部屋への移動がしやすく、足腰の心配も無用です。
4.建物のメンテナンスを心配しなくていい
戸建て住宅は、屋根や外壁、外構、庭などに目を配り、劣化などの状況次第では、メンテナンスや改修工事をしなければなりません。その度に、専門業者を手配したり予算を検討したりと大変です。
その点、マンションの場合は、建物の修繕を管理組合が管理してくれるため、個人で責任や手間を負うことがありません。
5.セキュリティが充実している
戸建てだと、自分の家の防犯対策は自分で行います。
マンションの場合は、建物全体でセキュリティ管理を行っているので、安心して暮らすことができます。
6.利便性の高い物件は売却しやすい
シニア世代は、子ども達への相続や、将来介護施設に入居する可能性を視野に入れておく必要があります。
利便性の高い立地にあるマンションなら資産価値が高いため、もし住まいを手放す事態になっても、スムーズに売却して現金化できます。高値で売却できる可能性が高いので、子どもが相続する場合でも後の扱いにも困りません。
シニアがマンションに住むデメリット
シニアにとってメリットばかりのようなマンション住まい。デメリットにはどんなことがあるのでしょうか。
1.管理費や修繕積立金が毎月必要
マンションでは、共用部を維持管理するための管理費や将来の大規模修繕に備えて、修繕積立金を支払わなければなりません。これは毎月発生するコストであり、築年数の古いマンションでは結構な額になることもあります。
2.建て替えになると負担額が大きい
著しい老朽化や自然災害などによる破損のため、マンションの建て替えを余儀なくされることがあります。
修繕で延命できそうだと考えても、反対者がいたとしても、区分所有者及び議決権の4/5以上の賛成があればマンションは建て替えられることになります。
住人が負担する建て替え費用はかなりのまとまった額になるため、シニア世代では捻出できないこともあります。退去せざるを得ない予期せぬケースもあると知っておきましょう。
3.水害に弱い
台風などで洪水が発生した場合、低地に立つマンションは、河川の逆流現象によって、下水の排水機能が停止してしまうことがあります。
実際に、超大型台風の被災地で、低層階のトイレやキッチンの排水溝から逆流した下水が噴き出したという事例があります。
また、災害によって停電が発生すると、エレベーターも使用できなくなります。階段しか使えず、高層マンション上階の住人が大変な思いをした、というニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。
4.上階や隣家の生活音が気になることがある
マンションでは上階や隣から、掃除機や洗濯機、テレビの音、子どもの足音などの生活音が聞こえて気になることがあります。
それまで戸建てに住んでいた人にとっては、こうした聞きなれない生活音にストレスを感じるかもしれません。
シニアが戸建てに住むメリット
次に、シニア世代が住み替えで戸建てを選んだ場合のメリットを見ていきましょう。
1.建物や外構を自己判断で改修できる
戸建て住宅でいつどのような工事を実施するか、その権限は全て所有者にあります。
外壁や外構の改修工事もリフォームも、自分が気になった時に自由に工事を依頼できますし、必要がなければセールスが来ても断れば良いだけです。
2.土地を資産として残せる
家屋は年月とともに老朽化しますが、土地は手放さない限りなくなることはありません。
戸建てを所有すれば、将来、子ども達に土地という資産を残せるのが大きなメリットです。
ただし田舎の土地などは、相続した子どもが扱いに困ってしまう可能性がありますので、立地次第と言えるでしょう。
3.敷地内に駐車・駐輪スペースが作れる
戸建ての住宅では、自己敷地内に駐車スペースや駐輪場を確保することができるため、手軽に自動車が所有・利用できます。
必要に応じてカーポートも設置できます。
4.庭づくりが楽しめる
戸建てには庭がつきもの。
シニア世代には土いじりを好む方が多く、ガーデニングや家庭菜園ができる戸建て住宅は、日々の暮らしに潤いや楽しみをもたらしてくれるでしょう。
5.家を自由に装飾できる
マンションの玄関扉やバルコニーなどは「共用部」です。そのため、自分の住戸であっても装飾を施すことができません。
戸建て住宅は、家全体をイルミネーションで飾るのも、窓や玄関に装飾をつけるのも自由です。
6.近所付き合いがスムーズにできる
一般的に、マンションは近所づきあいが希薄な傾向がありますが、戸建て住宅は路上や地域の行事などで顔を合わせる機会が多いため、近隣住民とコミュニケーションしやすい環境です。
7.ペットを自由に飼える
マンションでは、ペットの飼育を禁止しているところが少なくありません。
戸建て住宅では、近隣に大きな迷惑を掛けない限り、どんなペットでも自由に飼うことができます。
シニアが戸建てに住むデメリット
シニア世代が住み替えで戸建てに住むと、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
1.上階への行き来が負担になる
歳をとると多くのシニアは足腰が弱るため、階段のある家だと、2階への上り下りが大きな負担になってきます。そのため2階は全然使わなくなる人も少なくありません。
加齢とともに、利用できないスペースが発生しやすいのです。
2.玄関までのアプローチに段差がある
戸建て住宅の地盤面は、水はけなどの関係から道路面よりも少し高くなっており、床は地盤面よりもさらに50センチメートル以上高い位置に設けられます。
このため道路から玄関までのアプローチは、どんな家でも数段の段差あるのです。建物の中も、玄関ホールで土間と床の段差が生じることは避けられません。
若い頃には気にもとめていなかった段差が、シニアになると苦痛に感じられることがあります。
3.家の改修工事を自己判断する必要がある
家の老朽化やそれに伴う不具合が気になっても、修繕すべきかどうか素人には判断が難しいですよね。またはセールスが訪ねて来て、言葉巧みに工事の契約を取ろうとすることもあるでしょう。
改修工事の実施に関して、マンションでは管理組合が行うので楽ですが、戸建て住宅では自己判断で行わなければなりません。
苦手でも知識がなくても、業者の手配から見積もりの確認まですべて自分でやる必要があるため、精神的な負担も大きくなります。
4.交通の便が悪いことがある
住宅地は静かな環境の地域に作られることが多いため、鉄道駅から離れていることがあります。
豊かな自然や静かさに憧れて農村地帯を選んだ場合、車がないとどこにも行けないという可能性も。車を運転できなくなっても生活に支障がないかなど、交通アクセスは事前によく確認しましょう。
5.近隣に商業施設や病院がない
住宅地は、家や小規模店舗がほとんどで、大規模なショッピングモールや総合病院、金融機関といった施設は離れている場合が多いです。
老後は病院に通うことが多くなるため、周辺環境が充実しているかどうかは住まい選びの大事なポイントになります。
シニアがマンションへの住み替えで注意すべきポイント
では、シニアがマンションに住み替える場合、物件選びのコツや注意すべき点は何でしょう。
1.築年数が浅い物件を選ぶ
マンションで毎月かかるコストには、管理費や修繕積立金があります。
これらの費用は、築年数が古くなるほど高額になる傾向があるため、少しでも負担を軽減するには、築年数の浅い物件を選んだ方がいいでしょう。
築年数が浅い物件は、耐震性能にも優れています。少なくとも自分達が暮らしている間は、劣化による建て替えの可能性はほぼ無いでしょうから、住み続けられる安心感も大きいと思います。
2.修繕積立金の状況を確認する
修繕積立金は、大規模改修を行うための資金です。修繕積立金が足りない物件では、大規模改修の実施が近づくと、積立金が値上げされることがあります。
そのため入居するか否か判断する際には、「これまで大規模改修を行った実績があるか」「資金は足りるのか」といった点を確認するようにしましょう。
3.遮音性能を確認する
戸建てに住んでいた人にとって、マンション特有の振動音や排水音は耳障りに感じる場合があります。
住んでからストレスにならないよう、入居に際しては、振動対策や遮音性能について確認をしておくことが必要です。
4.余裕のある資金計画を立てる
シニア世代になると、収入は下がる一方で医療費は増えてきます。
そのため住宅ローンは組まないのが懸命。たとえ融資条件に適合していても、高齢になってからローンを返済していくのはリスクが高すぎます。
できる限り、今住んでいる家の売却額の範囲内で買える物件を探しましょう。
シニアが戸建てへの住み替えで注意すべきポイント
資金的に無理をしないという注意点は、戸建てに住み替える場合でも同様です。
他にはどのような注意点があるか見ていきましょう。
1.ダウンサイジングや平屋も選択肢に
子どもが巣立ったシニア世代は、これまで住んでいた家では広すぎるはず。今よりコンパクトな家に引っ越す「ダウンサイジング」を検討しましょう。
平屋に住むという手もあります。身体に余計な負担をかけずに暮らすことができます。
2.手入れが不要な外構にする
庭づくりが楽しめる戸建ては、日々の生活を豊かにします。
でも、あくまで自分で手入れが可能な植物にとどめること。大きく成長するような高木の植栽は、後々大きな負担になります。
3.売却しやすい物件を選ぶ
終の棲家として選んでも、やがては旅立つ時が訪れます。
相続した子どもが困らないよう、将来売却をする可能性を考えて売却しやすい物件を選択しましょう。
4.段差の少ない物件を選ぶ
日本の家屋には、まったく段差のない物件はありませんが、高齢になるほど段差が少ない家を選んだ方が安心です。
勾配のある道路に接する物件は、道路から玄関までのアプローチの段差が多いため極力避けたいもの。少しでも段数の少ない物件を選んだ方が生活しやすく、将来スロープも容易に設置できます。
まとめ
老後の住み替えは戸建てとマンション、どちらが良いのか。その答えは、それぞれの価値観によって異なります。
生活しやすさを考えると、段差が少なく利便性の高いマンションに軍配が上がりますが、管理費や修繕積立金も軽視できません。
戸建ては土地を資産として残せるので、相続する子どもの将来にプラスになります。
人生100年時代の今、シニア世代といっても住み替えの後に生活する期間はけっして短くありません。
歳を重ねても安心して暮らせるよう、住み替えでは無理をせず、納得のいく物件を選んでください。