土地や空き家のこと2023.01.19
都市計画道路予定地は「計画決定」段階なら売却できる〜前編
売却しようと思っていた所有地が都市計画道路予定地の場合、売却できるかどうか不安になる方は多いのではないでしょうか。
実際のところは、該当する土地であっても、事業計画の進捗次第では売却が可能です。今回は、都市計画道路予定地に入っている土地を売却する場合に知っておきたい基礎知識などを詳しく紹介します。
都市計画道路予定地とは
都市計画道路は、都市計画法に基づいて計画された基幹的な道路のことで、生活利便性の向上や計画的な街づくりのためにつくられます。都市計画道路予定地は、道路を整備する予定にはなっているものの、まだ事業として決定はしていない土地です。
【都市計画法】
都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968(昭和43)年に制定された法律。道路や公園、水道、電気などを適正に配置することなどを定めています。
各自治体は、長期的な街づくりのプランに沿って都市の発展に必要な道路の拡幅や新設などを行うことがあり、都市計画道路予定地は、その対象となっている土地のことを言います。
「将来、道路になる」という計画段階なので、具体的な計画や時期は決まっていません。計画決定から何十年経ってもそのままという土地はたくさんあります。
とはいえ、事業が決定すれば状況は変わります。対象となる土地は、行政側との交渉を経て自治体に収用され、家やマンションが建っていても合意の上で立ち退きを求められます。
このように、売却の可否は事業計画の進捗次第です。都市計画道路の進捗状況を大きく分けると、計画は決まっていて着手時期が未定の「計画決定」と、事業として進めることが具体的に決まった「事業決定」の2段階。それぞれの違いや注意点などを見ていきましょう。
都市計画道路の「計画決定」段階とは
先の通り、「計画決定」とは事業の計画が決まった段階のことで、具体的な事業開始時期などは未定の状態です。いつになるかは分からないけれど、いずれ土地の収用が予定されているという状況です。
事業が動き出していませんので、都市計画道路予定地を含む所有地全体を売却することが可能です。ただし都市計画道路が含まれる土地は利用に制限があり、売却にも一定の影響があります。
計画決定していると建築制限がある
計画区域内を含む土地の売買に制限はありませんが、建築物を建てるには一定の制限が課され、都道府県知事(政令指定都市においては市長)の許可が必要です。一般的には以下の要件があります。
・階数は2階以下で、地階はつくらないこと
・主要構造部分が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などであること
・容易に移転・除去できるものであること
売却の際は、こうした建築制限があること、将来的に事業決定がなされれば土地の収用が行われる可能性がある点を、重要事項として買主に説明する必要があります。
事業保留が続く道路予定地には緩和措置あり
都市計画道路の事業が決定して動き出すまでには、非常に長い年月がかかります。いつになるか分からない事業開始まで、ずっと建築制限が課される地権者にとっては、土地を有効利用できずたまったものではありません。
そこで、長年未着手の都市計画道路は、緩和路線に指定されて建築制限が緩和されるケースが増えてきました。
自治体により異なりますが、建築制限緩和の基準はおおむね次の通りです。
・当該区域の事業の実施が近い将来見込まれていないこと
・市街地開発事業(区画整理・再開発など)等の支障にならないこと
・階数が3階以下、高さが10m以下で、地階はつくらないこと
・主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造などであること
・将来的に、都市計画道路区域内にある部分とそうでない部分を分離できるよう、設計上配慮されていること
緩和されても計画区域であることに変わりはないため、容易に移転や除去できるものであることは大前提です。
緩和路線に指定されている場合は、すぐに事業決定が行われる可能性は低いため、売却に支障がないケースが多いと言えます。
計画決定段階で売却する際の注意点
計画決定段階であれば、建築制限はあっても再建築不可物件ほど厳しいわけではありません。緩和路線では建築基準も緩和されていますので、買主にとってはまだ利用しやすいでしょう。
しかし将来的に事業決定され、土地が収用される可能性があることには注意が必要です。このリスクをふまえて、売却価格は市場価格の10%程度低くなると考えておけば良いでしょう。
次回は、都市計画道路の「事業決定」の段階について解説します。