ローンやお金のこと2022.02.24
親の借金の肩代わりで子どもが家を取られる可能性は?〜後編
亡くなって初めて、自分の親が借金を作っていたことが発覚するケースは、そう珍しいことではありません。もし親が多額の借金を作ったまま亡くなった場合、子どもは、自分の家を売却してでも返済しなければならないのでしょうか?
親の借金のために、子どもが家を手放すことになる可能性はあるのか。前回に引き続き解説していきます。
亡くなった親の借金は相続の対象
借金をしている親が存命の場合は、基本的に子どもの家が借金のために取られることはありません。しかし、亡くなった場合は状況が変わってきます。
遺産相続では、預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などの負債も引き継がなくてはなりません。親の借金は相続人である子どもに継承され、今度は「子ども自身の借金」となってしまうのです。
返済できない場合、借金の貸し主である債権者は、子どもの財産を差し押さえて債権を回収することになります。子ども名義の預貯金や生命保険、車などが差し押さえられる可能性がありますし、最悪の場合は家を競売にかけられることもあります。
親が借金をしている状態で亡くなると、たとえ連帯保証人になっていなくても、「相続」によって借金の返済義務を負うことになり、自分自身の家を失う可能性が出てくるため注意が必要です。
親が死亡した時に、相続人である子どもに引き継がれる可能性がある負債には、以下のようなものがあります。
・ローンなどの借金
事業ローン、カードローン、クレジットカード、個人からの借入金など
・分割払いの未払金
携帯電話や絵画、骨董品、ブランド品など、分割払いで購入した残債など
・未払いの家賃、水道光熱費
家賃や水道光熱費を滞納していた場合は、負債として相続人に引き継がれる
・未払いの買掛金、リース債権
親が事業をしていて未払いの買掛金(購入代金)やリース債権があると、相続人に支払い義務が生じる
・未払いの損害賠償金
交通事故などにより損害賠償債務を抱えている場合、相続人に債務が相続される
・未払いの税金
税金の滞納があると、相続人が納税の義務を負う
実家などの遺産を売却して借金を返す
亡くなった親に借金や債務があった場合、相続する子どもが返済しなければなりません。「自分の借金ではない」と逃れることはできないため、額によっては非常に大きな負担になります。
借金や債務を相続した場合、まずは親から引き継いだ遺産で支払うことを考えましょう。例えば預貯金や株式、車などを売って返済に充てること。実家を相続したなら、実家の土地建物を売却したお金で、多額の借金が返済できるかもしれません。
相続放棄して自分の家を守る
親の借金の額が、プラスの遺産よりもはるかに多く、遺産を全て売却しても払い切れない場合があります。残った額は、子どもが自分の家などの財産を処分してでも支払わなければなりません。
こうなる前に打てる手が「相続放棄」です。相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も、すべての遺産の相続を放棄する手続きです。相続放棄をすれば、借金も負債も一切相続しなくて済むため、子どもは自分の家などの財産を手放す心配がなくなります。
ただし、注意すべき点もあります。
1つは、相続放棄の手続きには期限があること。手続きできるのは、自分が相続人になったことを知ってから「3カ月以内」です。相続開始からすぐに行うようにしましょう。
2点目は、相続放棄をする前に一部資産を売却するなど遺産に手をつけてしまうと、相続放棄できなくなる点です。
また、親の借金を返済した場合も「相続を承認した」とみなされる可能性がありますので、注意が必要です。
なお、親が借金している場合でも、存命中なら親の家を売って借金を返済することも可能です。
いずれにしても遺産相続が発生したら、まずは親が遺した借金と資産、どちらが大きいかを調べること。親が所有する実家の不動産の価値を調べることから始めてください。