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不動産に関する手続き2025.05.30
成年後見人の不動産売却手続きとは?流れと注意点を解説
こんにちは。イエステーション北章宅建 後志店の梅津です。
ご家族の判断能力に不安を感じるようになり、成年後見人として不動産の売却を検討されている方も多いのではないでしょうか。
成年後見人による不動産売却は、通常の売却とは異なる手続きが必要です。
「何から始めれば良いかわからない」「手続きが複雑そうで不安」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回のコラムでは、成年後見人が不動産売却する際の手続きの流れや注意点について、わかりやすく解説していきます。
不動産売却における成年後見人とは?選定方法は?
まずは、不動産売却における成年後見人の立場や役割、制度の種類と選任方法について、確認しておきましょう。
成年後見人は、本人に代わって不動産を売却できる法的代理人
成年後見人は、判断能力が低下した本人(被後見人)に代わって、財産の管理や法律行為を行うために選ばれる法的な代理人です。
不動産の売却のように、重要な財産処分も本人の代わりに進められます。
財産の管理や法律行為といった責任の重い役割を担うため、申立ての段階で「自分がなりたい」と希望しても、成年後見人には親族が選ばれることもあれば、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれるケースもあります。
最終的な選任は、家庭裁判所の判断に委ねられるからです。
なお、成年後見人の職務には報酬が発生する場合もあり、その金額は業務の内容や被後見人の財産状況をもとに、家庭裁判所が最終的に決定します。
後見人の選び方と制度の違いを知っておこう
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの種類があります。
どちらも家庭裁判所の関与を前提とした制度ですが、後見人をどう選ぶか、制度がどう始まるかに違いがあります。
- 法定後見制度:すでに本人の判断能力が低下している段階で、家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が後見人を選任する制度
- 任意後見制度:本人が元気なうちに、将来に備えて信頼できる人と任意後見契約を結び、制度を発動する際に家庭裁判所に監督人の選任を申し立てる制度
法定後見制度では、申立てから後見人の選任、業務の監督まで、すべて家庭裁判所が関与します。
一方、任意後見制度は、本人が自由に後見人を選べる反面、実際に制度が発動した後は、家庭裁判所が選任した「任意後見監督人」の監督のもとで後見業務を行う必要があります。
なお、不動産の登記名義が本人以外になっているケースなどで、「どうすれば売却できるのか?」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、成年後見制度を含む複数の対応方法を解説した、以下のコラムもぜひ参考にしてみてください。
名義人が違う不動産は売却できる?売却に必要な方法と手続きとは?
成年後見人が不動産売却を行う流れを徹底解説
成年後見人として不動産を売却する場合、通常の売却とは異なる流れや注意点があります。
特に、本人が住んでいた不動産を売却する際には、家庭裁判所の許可が必要となるケースもあるため、慎重に手順を確認することが大切です。
ここでは、売却開始から引き渡しまでの流れを5つのステップに分けて、居住用・非居住用それぞれの違いも含めて解説します。
ステップ1:不動産の相場を調べる
最初に行うべきは、対象不動産の適正価格を把握することです。
複数の不動産会社に査定を依頼したり、一括査定サービスを利用したりして、相場感をつかみましょう。
申立て時に提出する査定書は、売却価格の妥当性を示す重要な資料です。
特に後見人による売却では、相場とかけ離れた価格で売却してしまうと、「本人の利益を損なう」と判断され、家庭裁判所の許可が下りない可能性があります。
ステップ2:不動産会社と媒介契約を結ぶ
相場を確認した後は、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始します。
後見人による売却では、契約内容や手続きに特有の配慮が求められる場面が多いため、成年後見制度に理解のある不動産会社を選ぶことが重要です。
媒介契約時には、売却価格や仲介手数料などの条件に加え、「売却には家庭裁判所の許可が必要である」ことも必ず伝えておきましょう。
なお、成年後見人は法律上の代理人として不動産売却を行えますが、さらに別の代理人に委任することも可能です。
委任にあたっての手続きや注意点については、「不動産売却手続きは代理人に依頼できる?委任の手続き、注意点を解説〜その1」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
ステップ3:売買契約書の案を作成する(停止条件付き)
購入希望者が現れ、売却条件が整ったら、売買契約書の案を作成します。
このとき、「家庭裁判所の許可が得られなければ契約は無効とする」という「停止条件付き契約」にしておくのがポイントです。
これにより、万が一、許可が下りなかった場合でも契約は自動的に白紙に戻るため、買い主に迷惑をかけるリスクを回避できます。
ステップ4:家庭裁判所に売却許可を申立てる
売買契約書の案が整ったら、居住用不動産であれば家庭裁判所に売却許可の申立てを行う必要があります。
申立てには以下のような書類が必要です。
- 売却許可申立書(収入印紙貼付)
- 対象不動産の登記事項証明書
- 売買契約書案
- 固定資産評価証明書
- 不動産会社の査定書
- 売却理由や代金の使途を記した資料
ここで注意したいのが、「居住用不動産」と「非居住用不動産」で手続きが異なる点です。
- 居住用不動産の場合:家庭裁判所の許可が法律上必須で、許可なしで売却すると契約が無効になる可能性がある
- 非居住用不動産の場合:原則として家庭裁判所の許可は不要(成年後見監督人が選任されている場合は、その同意が必要)
また、居住用か、非居住用に該当するかの判断は、実際の居住実態だけでなく、将来的に本人が再び住む予定があるかどうかなど、複数の要素をもとに家庭裁判所が総合的に判断します。
申立てから許可が下りるまでには通常1〜2カ月程度はかかるため、スケジュールには余裕を持って臨みましょう。
ステップ5:許可が下りたら、決済・引き渡し
家庭裁判所の許可が下りたら、正式に売買契約を締結し、決済・引き渡しを行います。
このタイミングで売買代金の授受と所有権の移転登記を同時に行い、取引完了です。
売却代金は被後見人の財産として、生活費や医療費などに充てるため、成年後見人が適切に管理・使用する責任があります。
成年後見人が不動産を売却する際のトラブル事例や注意点
成年後見人が不動産を売却する際には、特有のルールや裁判所の関与があるため、一般的な不動産取引とは違ったトラブルが起こる可能性があります。
実際に起こりやすいトラブルの事例と、その対策について解説します。
また、事前に押さえておきたい注意点もあるため、こちらもあわせて確認してきましょう。
成年後見人による不動産売却のトラブル事例3つ
実際に起きやすいトラブル事例とその対策について紹介します。
トラブル事例1:裁判所の許可が下りない
売却許可の申立てに対して家庭裁判所が「許可を出さない」というケースです。
その理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 売却の必要性が裁判所に認められない(例:預貯金など他の資産が十分にある)
- 将来的に本人が自宅に戻る可能性が高いと判断された
- 売却理由が不明確で、資金の使い道が曖昧
- 推定相続人の同意が得られていない
このような事態を避けるには、売却理由を具体的に説明できるよう準備が必要です。
例えば、「介護費用や医療費に充てるため」など、本人の利益に直結する支出であることを明確に示し、可能であれば相続人全員の同意書も用意しておきましょう。
トラブル事例2:適正価格での売却とみなされない
下記のような理由から、売却価格が「適正ではない」と判断されて許可が下りないケースがあります。
- 査定額と実際の売買価格に大きな差がある
- 市場価格より著しく低い価格で売却しようとしている
- 査定書の根拠が不明確、または信頼性に欠ける
こうした問題を防ぐには、複数の不動産会社に査定を依頼し、根拠のある適正価格での売却を心がけることが大切です。
また、裁判所に提出する査定書も、査定方法や根拠が明示された信頼性の高いものを選びましょう。
トラブル事例3:相続人の同意がなく、契約の無効を主張される
売却後に、相続人から「同意していなかった」として、契約の無効を主張されるケースもあります。
たとえ裁判所の許可が下りていたとしても、相続人の理解と同意を得ておくことはトラブル予防のうえで非常に重要です。
あらかじめ相続人全員に売却の内容を説明し、書面での同意書を残しておけば、後々の紛争を防ぎやすくなります。
また、この同意書を申立て時に添付資料として提出することで、家庭裁判所の判断をスムーズに進める一助になる可能性もあります。
売却後にも報告義務がある点に注意
不動産の売却が完了した後も、成年後見人には家庭裁判所への報告義務があります。
報告には以下のような内容が含まれます。
- 売買契約書の写し
- 売却代金の入金を示す書類(通帳や明細など)
- 売却資金の使途・管理状況の説明
これらの報告は、定期的に家庭裁判所に報告する「後見事務報告書」の一部として行われ、怠ると後見人の適性を疑われる可能性もあるため、注意が必要です。
成年後見制度や不動産売却の手続きは、専門的な知識が求められる場面が多くあります。
トラブルを未然に防ぐための対策として、専門家への相談もおすすめです。
成年後見制度に詳しい不動産会社や、後見申立てや売却手続きに詳しい司法書士・弁護士と連携することで、より安全かつスムーズに手続きを進めることができます。
まとめ
●成年後見人による不動産売却には特別な手続きが必要
成年後見制度は、判断能力が低下した方の権利を守るための制度であり、不動産売却時には家庭裁判所の許可が必要な場合があります。
本人の財産を守る観点から、成年後見人が独断で売却することはできません。
●成年後見人による不動産売却の流れは5つのステップで進める
相場調査、媒介契約、売買契約案の作成、家庭裁判所への許可申立て、決済および物件の引き渡しの順序で進めます。
特に本人が住んでいた居住用不動産を売却する場合は、必ず家庭裁判所の許可が必要です。
●成年後見人による不動産売却では、トラブル回避のための事前準備が重要
家庭裁判所の許可が下りない、適正価格での売却とみなされない、相続人とのトラブルなどを防ぐためには、十分な事前準備が重要です。
売却の目的や価格の根拠を明確にし、必要に応じて不動産会社や司法書士、弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。
北章宅建は、不動産に関するご相談を全て無料で対応しています。
空き家に関する相談や無料査定、相続問題など、どんなことでもお気軽にご相談ください。
著者

後志店 梅津 大樹小樽生まれ、小樽育ちです。 自身で不動産購入と売却を行った経験もあり、売りタイ方・買いタイ方のお気持ちに寄り添ったご提案をできればと思い、日々活動しております。今後はより一層地域に密着して活動して参ります。 不動産のお困り事は、私、梅津にお任せ下さい。
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