不動産管理コラム
不動産管理のこと2025.12.09
アパートの外国人入居者によくあるトラブルとは?事例と対策
こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。
日本に居住する外国人が増えています。
外国人に部屋を貸す際、次のように感じるオーナー様もいるかもしれません。
「外国人入居者を受け入れるのは少し不安…」
「どんなトラブルが起きやすいのか、事前に知っておきたい」
外国人の方が入居することで、騒音・無断同居といったトラブルが起きやすくなるケースもあるためです。
正しい知識と対策を押さえておけば、多くのトラブルは事前に防ぐことができます。
今回は、実際に起きやすいトラブル事例と予防のために大家側でできる対策、そして深刻化した場合の手段まで解説します。
アパートの外国人入居者トラブル事例
まずは、外国人入居者を受け入れる際に起こりやすいトラブル例を「生活面」と「退去時」 に分けて紹介します。
日本人同士でも起こり得るものですが、外国人の場合は文化や生活習慣の違いによる「誤解」や「感覚の違い」が原因で発生するケースがあります。
生活面で生じやすいトラブル
生活面で生じやすいトラブルは、主に次の6つがあります。
- 騒音トラブル
- ゴミ出し・分別ルール違反
- 無断同居・又貸し
- 家賃滞納
- 共用部分のマナー違反
- 在留資格切れによる居住トラブル
①騒音トラブル
外国人入居者の騒音トラブルとして、下記のようなケースが見られます。
- 友人を大勢招いて夜遅くまでリビングで会話する
- 大きな声でベランダで談笑する
- 音楽や映像をスピーカーで大音量で楽しむ
騒音は日本人同士でも頻発する問題ですが、外国人の場合、母国の生活感覚のまま過ごすことで、トラブルに発展してしまう場合があります。
②ゴミ出し・分別ルール違反
外国人入居者のなかには、以下のようなゴミ出しのルール違反をしてしまう人もいます。
- 曜日や時間を守らずにゴミを出してしまう
- 可燃・不燃の分類を正しく行えない
- ペットボトルの洗浄やラベル剥がしなどをしない
ゴミ出し・分別のルールが自国と異なっていたり、日本のルール自体を理解できていないケースが多く、結果的にご近所トラブルへ発展してしまうことがあります。
③無断同居・又貸し
こちらも、日本でのルールを理解していないことで起こり得るトラブルです。
- 契約者ではない友人や家族を無断で住まわせる
- 留学生同士でシェアしようとして人数が増える
- 契約者が帰国した際に、知人に部屋を使わせる
「母国では一般的な住まい方」の延長で、無断同居や又貸しを行なってしまうケースがあります。
④家賃滞納
家賃滞納は経済的な事情から、日本人でも外国人でも起こり得るトラブルです。
ただし外国人入居者の場合は、滞納が発生した後の対応が難しくなる点が、大家にとって悩ましいポイントといえます。
下記のようなケースが、家賃回収を難しくさせる要因になります。
- 帰国・強制送還で突然音信不通になる場合がある
- 言語の壁があり、支払意思の確認や話し合いが進めにくい
- 勤務先や親族との連絡がつきづらい
滞納が起きてからの回収や連絡が難航しやすい点に注意が必要です。
⑤共用部分のマナー違反
共用部分の使い方に対する感覚の違いから、次のようなトラブルが起こるケースもあります。
- 共用廊下にベビーカーや荷物を置いたままにする
- 自転車を決められた場所以外に停めてしまう
- 共有スペースで長時間通話・飲食をする
⑥在留資格切れによる居住トラブル
在留資格が切れたまま、滞在を続ける外国人居住者もなかにはいます。
資格が失効してしまうと賃貸契約を継続できないのはもちろん、在留資格切れの不法滞在と知りつつ家を貸すことは、「不法滞在を助ける行為」とみなされる可能性もあります。
退去時に発生しやすいトラブル
退去時に発生しやすいトラブルには、主に次の5つがあります。
- 原状回復費用をめぐる行き違い
- 家具・家電・私物の放置
- 鍵返却・退去手続きの不備
- ライフライン未解約
- 敷金返還をめぐるトラブル
①原状回復費用と敷金に関するトラブル
原状回復費用の請求に対して「なぜ支払いが必要なのか」、敷金が返還されないことに「なぜ返ってこないのか」と納得できず、トラブルになるケースがあります。
日本は、敷金から原状回復費用を差し引いた金額が返還される仕組みです。
しかし、外国人入居者のなかには「傷や汚れの修繕費は大家負担だろう」「敷金は全額返ってくるだろう」と、退去時の「原状回復」や敷金のルールを理解していないケースがあるからです。
ルールを事前に理解できていないと「なぜ請求されるのか」「なぜ返ってこないのか」が伝わりにくく、結果として大家側への不信感やトラブルにつながりやすい項目です。
②家具・家電・私物の放置
外国人入居者が、退去時に私物を残したまま帰国してしまうトラブルもあります。
単純にいらない家財をどう処分して良いかわからない場合もあれば、「次の人が使うかもしれない」と善意で残してしまう場合もあります。
③鍵返却・退去手続きの不備
外国人入居者は、退去手続きを「管理会社へ連絡するだけ」と誤解していることも多く、次のような不備が起こります。
- 鍵をポストに投函したまま出国してしまう
- 退去立会いをせずに出国してしまう
手続きの流れをきちんと共有できていないと、部屋の中の確認に時間がかかってしまったり、確認事項があった際に連絡を取れなくなってしまったりと、大家側の負担も大きくなります。
④ライフライン未解約
外国人入居者の場合、電気・ガス・水道などの契約を解約せず退去するケースも。
これは「光熱費は家賃込み」と誤解していることが原因で起こりやすく、契約者本人に「自分が契約している」という認識が薄いことが背景にあります。
アパートの外国人入居者トラブル対策と予防法
外国人入居者に対して、トラブルを防ぐために大家が実践できる対策として、次の4つがあります。
- 理解しやすい契約書と丁寧なルール説明で誤解を防ぐ
- 連絡先・身分情報を複数確保して、連絡不能リスクに備える
- 入居後のフォロー体制を整えて誤解やトラブルを未然に防ぐ
- 賃貸保証会社の利用を徹底し、家賃滞納リスクに備える
それぞれ解説していきましょう。
①理解しやすい契約書と丁寧なルール説明で誤解を防ぐ
外国人とのトラブルの大半は、ゴミ出し・共用部の使い方・原状回復・敷金の使途など、「日本では当たり前」と思っている部分の認識ズレが原因です。
そのため、まずは専門用語を避けたわかりやすい契約書やルールブックを用意しましょう。
さらに、契約書を渡すだけでなく、入居前に口頭で丁寧に説明する時間をつくることが重要です。
特に誤解が起きやすい下記の項目は、図解や写真、多言語版の案内を使うとより伝わりやすくなります。
- ゴミ出しの方法・曜日
- 共用部のマナー(廊下・ベランダの使い方)
- 原状回復や敷金の扱い
- 光熱費の支払い・退去時の解約
- 近隣への騒音配慮
チェックリストを作成し、理解した旨をサインしてもらえば、トラブルが起こった際の対応に活用できるでしょう。
騒音やゴミ捨て管理への対応は、下記コラムでも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご参照ください。
アパートの騒音注意文の書き方と対応手順を解説
アパート・マンションのゴミ捨て場管理の重要性とは?トラブルと対策も
②連絡先・身分情報を複数確保して、連絡不能リスクに備える
外国人の場合、家族や親族が近くにいなかったり、勤務先が同じ国の人が経営する企業だったりと、いざというときに連絡が取れにくいケースがあります。
そのため、入居前に以下を必ず確認しておきましょう。
- 日本国内の緊急連絡先
- 勤務先の連絡先
- 日本在住の知人など、複数のコンタクト先
- 在留カード・パスポートのコピー
これらを事前に把握しておくことで、トラブル時のリスクの軽減につながります。
③入居後のフォロー体制を整えて誤解やトラブルを未然に防ぐ
入居後の小さな誤解や、在留資格の更新忘れなどの「うっかり」が、大きなトラブルにつながるケースは少なくありません。
そのため、外国人入居者に対しては、生活ルールの定着や重要手続きの注意喚起など、下記のような入居後のフォロー体制を整えておくことが大切です。
- ゴミ出し・共用部マナーの案内を、入居後も見直せるよう掲示・配布する
- 困りごとを相談しやすい連絡手段の確保する
- 生活上の不明点がないか軽く声かけする
「言われたらやる」「聞かれたら答える」だけではなく、先回りしたフォローを行うことで、誤解やルール違反を未然に防ぎやすくなります。
④賃貸保証会社の利用を徹底し、家賃滞納リスクに備える
家賃滞納そのものは日本人・外国人を問わず経済的理由で起こる問題ですが、外国人の場合は滞納後の回収が特に難しいという特徴があります。
そのため、賃貸保証会社への加入を必須とすることが基本です。
最近は多言語対応の保証会社も増えており、外国人入居者に適したサービスを選ぶことで、大家側のリスクを大幅に減らせます。
なお、賃貸管理全般のトラブル対策として、クレーム対応の基本も押さえておきたい場合は、「賃貸管理のクレームの事例と適切な対応について解説」が役立ちます。
ぜひあわせてご参照ください。
アパートの外国人入居者トラブルは法的解決策も

予防策や対策を講じても状況が改善せず、すでにトラブルが深刻化している場合は、法的な手続きを用いて問題を解決する方法もあります。
ここでは、大家が取れる主な法的手段を紹介します。
まずは弁護士に相談する
家賃滞納や無断転貸、退去拒否などが長引く場合は、自己判断で動いてしまわず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
専門家を介することで、現在の状況で取れる手続き・必要書類・進め方を明確にできます。
賃貸借契約を解除して「退去」を求めることができる
専門家とも相談し、契約違反が明らかと考えられる場合には、契約解除を行い、退去を求める法的手続きを進められます。
【代表的な解除事由】
- 家賃滞納:繰り返される場合は解除が認められやすい
- 無断転貸:重大な契約違反で、無催告解除も可能
- 無断同居:契約違反として退去を求める手続きが可能
- 勝手な改造:原状回復+契約解除を求めることも可能
解除に向けた手続きは、「内容証明郵便での督促 → 期限を区切った催告 → 解除通知」という流れが一般的です。
退去しない場合は「明け渡し訴訟」へ
契約解除後も入居者が退去しないときは、裁判所に「建物明け渡し請求訴訟」を申し立てます。
ただし、判決が出るまで時間がかかることや弁護士費用や訴訟費用が発生することに留意しておく必要があります。
判決後も退去しない場合は強制執行が可能
裁判で明け渡しが認められても従わない場合は、裁判所の強制執行によって退去させることができます。
まとめ
●アパートの外国人入居者トラブルは生活面・退去時でさまざまある
外国人入居者とのトラブルは、生活面では騒音・ゴミ出しルールの誤解・無断同居・家賃の支払いトラブルなどが起こりやすいです。退去時には原状回復費用・敷金返還をめぐる行き違いや私物放置、ライフライン未解約などのトラブルにも注意が必要です。
●アパートの外国人入居者トラブルは「説明不足」や「リスク」を避ける対策が重要
対策として、契約前に生活ルールや費用の仕組みを丁寧に伝え、多言語でわかりやすくまとめた契約書・ルールブックを用意しておくことが効果的です。
保証会社の利用や連絡先の複数確保、声かけによる注意喚起など、リスクを見越した準備とフォロー体制も役立ちます。
●長引く外国人入居者とのトラブルは法的解決策も
話し合いや改善の要請でも解決が難しい場合は、契約解除や明け渡し請求など、法的な手段に進むことも可能です。
北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
著者
小樽駅前店 小幡 将大賃貸物件に関するお悩みや不安、ご相談ごとは、どんなに小さなことでも私たちにお任せください。入居者様にとっては毎日の暮らしを支える住まいであり、オーナー様にとっては大切な資産です。だからこそ、お一人おひとりに寄り添い、誠実で丁寧な対応を心がけています。「ここに相談して良かった」と思っていただけるサービスを、これからも提供してまいります。
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