不動産管理コラム

不動産管理のこと2024.06.28

家賃の値上げの正当な理由とは?値上げ時のトラブルや対策を紹介

こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の佐々木です。

マンションやアパートなどの賃貸物件を経営されている不動産オーナー様の中には、家賃を値上げしたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、家賃は不動産オーナー様の一存で値上げできるわけではなく、正当な理由がある場合のみ、値上げすることが可能です。

そこで今回は、家賃の値上げについて解説します。
家賃を値上げするときの正当な理由や、値上げ時に起こりやすいトラブル、入居者に交渉する手順などもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
家賃の値上げ

 

家賃を値上げするときの正当な理由とは?

さまざまな理由から家賃を値上げしたいと考えている場合、正当な理由がなくては家賃を値上げすることはできないことが借地借家法で定められています。
家賃の値上げが認められる正当な理由と、認められない理由についてご紹介します。

 

家賃の値上げが認められる正当な理由

家賃の値上げは借地借家法第32条によって定められており、次の3つの理由のどれかに該当しなくては認められません。

  • 建物や土地の資産価値が上昇した
  • 物件にかかる管理費や固定資産税が上昇した
  • 近隣物件の相場より家賃が安い

それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。

 

建物や土地の資産価値が上昇した

賃貸物件の周辺地域で、再開発が行われたり駅が新たにできたりして利便性が高くなるなどした場合、建物や土地の資産価値は上昇します。
家賃は資産価値に基づいて算出するため、物件の資産価値が上昇した場合は家賃の値上げが認められます。

家賃設定をする際の算出方法については下記コラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
家賃設定の根拠とは?算出方法や決め方のコツを解説

 

物件にかかる管理費や固定資産税が上昇した

物価の上昇に伴って、これまで以上に建物を管理する費用がかかってしまうという場合もあるでしょう。
また、物件の資産価値が向上したことで、固定資産税などの税金が高くなるということもあります。

このような理由も、家賃の値上げを行う正当な理由として認められています。

 

近隣物件の相場より家賃が安い

近隣にあるアパートやマンションの家賃に比べて安い場合は、適正価格ではないと判断され、家賃を値上げすることが認められています。

なお、この場合は近隣物件の相場にあわせた家賃に値上げできる可能性が高いです。

 

家賃の値上げが認められない理由

家賃は正当な理由がなくては値上げできないため、下記のような場合は家賃の値上げが認められません。

  • 近隣の家賃相場よりも家賃が大幅に高い場合
  • 不動産オーナー様の経済的な都合による場合
  • 賃貸借契約に「家賃の値上げをしない特約」がついている場合

家賃は間取りや築年数、立地・周辺環境などによって設定されます。
そのため、近隣のアパートやマンションの家賃相場よりも大きくかけ離れた値上げを行う場合は、家賃の値上げは認められません。

また、「収益を増やしたい」「賃貸経営の損失を補填したい」といった不動産オーナー様の経済的な都合による値上げも、正当な根拠に欠けているため値上げはできません。

そして、家賃を値上げする際に注意が必要なのが、賃貸借契約に「家賃の値上げをしない特約」がついているかどうかです。
「家賃の値上げをしない特約」が付いている場合は、家賃を値上げすることはできませんので、賃貸借契約を確認しましょう。

ただし、「家賃の値上げをしない特約」が常識とかけ離れた内容である場合には、家賃の値上げが認められるケースもあります。
例えば、特約に定められている「家賃の値上げをしない期間」がかなり長期に渡るもので、その間に経済的事情が特約を定めた当時の予測をはるかに上回るほど大きく変化した場合などです。
このようなケースでは、たとえ「家賃の値上げをしない特約」が付いていたとしても、その特約が著しく公平に反すると認められ、「事情変更の原則」により家賃の値上げが認められたという裁判例があります(横浜地判昭和39年11月28日判タ172・212)。

 

家賃を値上げするときに起こりやすいトラブル

引越

家賃を値上げすることで、不動産オーナー様の家賃収入が増えるというメリットがあります。
一方で、値上げをするとトラブルに発展する可能性も。

家賃を値上げするときに、入居者との間で起こりやすいトラブルをご紹介します。

 

トラブル①家賃の値上がり・支払いを断られる

どんなに正当な理由のもとで家賃を値上げしたとしても、入居者から家賃の値上げや支払いを拒否されてしまう可能性があります。
その場合、取り立てをしたり法的な手続きを行なったりと、不動産オーナー様に大きな負担がかかってしまいます。

 

トラブル②賃貸契約を解約される

家賃が値上がりするならと、賃貸契約を解約されてしまう場合も。
解約されると家賃収入が減るだけでなく、新たな入居者を探すためにさまざまな費用が発生します。

 

トラブル③夜逃げされる

最悪の場合、入居者に夜逃げされてしまう恐れがあります。

夜逃げをされてしまうと家賃収入が減るだけでなく、部屋を片付けたり保証会社に手続きをしたりと、不動産オーナー様に大きな負担がかかることになります。

 

家賃の値上げが正当な理由でも交渉がうまくいかない場合の対処法

賃値上げの交渉の手順は次のとおりです。

  • 入居者に家賃の値上げを通知する
  • 入居者と家賃の値上げについて交渉する
  • 家賃改定合意書を結ぶ

まずは、書面で入居者に家賃の値上げを通知します。
家賃を値上げするタイミングは、契約更新時がおすすめ。
最低でも契約更新の1カ月前には通知しましょう。

その後、入居者と家賃の値上げについて交渉し、合意がとれれば家賃改定合意書を結んで完了です。

もし、入居者との交渉がうまくいかない場合、訴訟などにつながることもありますが、そもそも家賃を値上げしないというのも一つの方法です。
入居者が値上げに不満を抱き退去してしまうと、空室が発生します。
空室になると家賃収入がなくなるため、たとえ家賃を値上げしなくても収益が認められるのであれば、家賃は値上げせずに現状維持したほうがメリットは大きいでしょう。

なお、家賃を値上げしないと経営が難しいという場合は、その物件の売却も検討を。
しかし、物件の売却は大きな決断ですので、しっかり検討した上で決めましょう。

 

家賃の値上げ交渉をスムーズに進めるポイント

マンション

家賃を値上げする際は、トラブルなくスムーズに交渉を進めたいものです。

交渉をスムーズに進めるポイントは、まずは入居者に家賃の値上げが正当な理由であることを認めてもらうことです。
また、家賃を値上げすることで入居者にどんなメリットがあるかも示すと良いでしょう。

例えば、家賃を値上げする代わりに次回の更新料を無料にしたり、新しい設備を導入したりといったメリットが提示されれば、入居者も納得してくれる可能性が高まります。

なお、家賃の値上げはタイミングが重要です。
突然何の前触れもなく家賃値上げの通知が届くと、入居者は困惑してしまいます。
契約更新時や建物の改修時など、家賃値上げの理由につながるタイミングで交渉するのがおすすめですよ。

家賃値上げの交渉に不安がある場合は、法律や不動産に詳しい専門家に相談してアドバイスをもらいましょう。

 

まとめ

●家賃を値上げするときの正当な理由
家賃の値上げについては、借地借家法第32条によって定められています。「建物や土地の資産価値が上昇した」「物件にかかる管理費や固定資産税が上昇した」「近隣物件の相場より家賃が安い」の3つの理由のどれかに該当しなくては認められません。

●家賃を値上げするときに起こりやすいトラブル
家賃を値上げすることで、入居者とトラブルに発展する可能性も。家賃の値上がりや支払いを断られたり、賃貸契約を解約されたりするほか、最悪の場合は夜逃げされてしまう可能性もあります。

●家賃値上げの交渉の手順
家賃を値上げする際は、まずは入居者に家賃の値上げを通知し、入居者と家賃の値上げについて交渉します。合意がとれれば、家賃改定合意書を結んだら完了です。もし、入居者との交渉がうまく行かない場合は、値上げしなくても経営を維持できるのであれば、家賃を値上げしないというのも一つの方法です。

●家賃の値上げ交渉をスムーズに進めるポイント
交渉をスムーズに進めるポイントは、まず入居者に家賃の値上げが正当な理由であることを認めてもらうことです。家賃を値上げすることで入居者にどんなメリットがあるかも示すと良いでしょう。家賃の値上げは、契約更新時や建物の改修時など、家賃値上げの理由につながるタイミングで交渉するのがおすすめです。

北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
入居者の家賃滞納など不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

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著者
家賃の値上げの正当な理由とは?値上げ時のトラブルや対策を紹介

栗山店 佐々木 博明不動産オーナー様の大切な資産の管理と、入居者様の住環境維持に努めてまいります。些細なことでもお気軽にご相談ください。 どうぞ、よろしくお願い致します。

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