不動産管理コラム

不動産管理のこと2025.10.17

家賃の値下げ交渉への対処法!大家が知るべき基礎知識とは

こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。

「入居者から家賃の値下げ交渉をされてしまった。どう対応すればいいのだろう」
「値下げに応じるべきなのか、断ってもいいのか判断に迷う」

そんな悩みをお持ちではありませんか?
家賃の値下げ交渉は、賃貸経営を行う立場にあれば誰もが直面する可能性のある問題です。

今回は、家賃の値下げ交渉に備えて知っておくべき基礎知識から、具体的な対処法、値下げをするメリット・デメリットまで詳しく解説していきます。値下げ交渉

 

家賃の値下げ交渉に備えて大家が知っておくべき基礎知識

値下げ交渉への対処法を考える前に、まずは「いつ交渉されやすいのか」「どんなルールがあるのか」という基礎知識を押さえておきましょう。

 

家賃の値下げを要求されやすいタイミング

家賃の減額交渉は、入居者が「今の家賃は妥当なのか」と見直すきっかけがあるときに起こりやすくなります。
特に、次のような場面では交渉される可能性が高まります。

 

契約更新時

最も多いのが、更新のタイミングです。
更新料が発生することで支出が増え、入居者は「古くなったのに家賃が変わらない」「周りより高い」と感じやすくなります。

 

新規募集時(契約前)

入居希望者が複数の物件を比較して検討するなかで、「少し安くしてもらえるなら決めたい」と値下げを求めることがあります。

 

大家が知っておくべき家賃交渉のルール

次に、家賃交渉に関する法律上のルールを整理しておきましょう。

 

①入居者には、正当な理由があれば家賃の減額を求める権利がある

借地借家法第32条では、下記のような正当な理由がある場合に入居者が家賃の減額を請求できると定められています。

  • 建物や土地にかかる税金・負担が減った場合
  • 経済事情の変化により土地・建物の価格が下がった場合
  • 近隣の同条件物件より家賃が不当に高い場合

つまり、経済状況や相場が変われば入居者に交渉の権利があるのです。
ただし、大家側に必ず応じる義務があるわけではなく、実際の相場や物件価値を踏まえて判断できます。

 

②入居者は、契約期間中を含め、いつでも減額交渉を行うことができる

家賃の減額は、交渉できる時期に法的な制限がありません。
契約更新の有無にかかわらず、入居者は契約中でも減額を求めることが可能です。

 

③「減額には応じない」とする特約は法律上無効となる

普通借家契約では、「家賃を減額しない」という特約をつけても法的効力はありません。
一方で、「一定期間は増額しない」特約は有効です。

減額交渉を完全に防ぐことはできない点を理解しておきましょう。

なお、家賃の値上げについては「家賃の値上げの正当な理由とは?値上げ時のトラブルや対策を紹介」で詳しくお伝えしていますので、ぜひあわせてご参考にしてください。

 

④大家は、過去にさかのぼって家賃を返還する義務はない

仮に家賃を下げることに合意しても、効果は合意した時点から将来に向けて発生します。
「過去の差額を返してほしい」と言われても、さかのぼって減額する必要はありません。

 

家賃の値下げ交渉への大家の対処法

入居者から家賃の減額を求められても、大家が必ず応じなければならないわけではありません。
交渉の内容や理由によって、応じなくても良いケースと、応じたほうが良いケースに分かれます。

 

応じなくても良いケースとその対処法

次のようなケースでは、法的にも経営的にも減額に応じる必要はありません。

  • 家賃が周辺相場と比べて妥当な場合
  • 建物の状態や設備に特段の変化がない場合
  • 入居者の収入減少など、個人的な事情のみが理由の場合
  • 入居して間もない、契約直後の交渉の場合

とはいえ、「(入居者の)個人的な都合や一方的な希望だけでは減額に応じられない」と、値下げを拒否すると、入居者との関係が悪化するのではという不安もあるでしょう。
その場合は、家賃の相場データを根拠として示して説明すると入居者の納得を得やすくなります。

独自調査、あるいは不動産会社や管理会社に依頼して最新の近隣相場を確認するなどして、「現在の家賃は周辺と同水準であり、値下げの根拠がないこと」を示しましょう。

どうしても入居者の負担感が強い場合は、「次回の更新料を減額」「一定期間のフリーレント(1カ月無料)」 など、一時的な負担軽減策を提案するのも有効です。
家賃そのものを下げるよりも、将来的な影響を抑えられます。

 

応じたほうが良いケースとその対処法

一方で、次のような場合は減額に応じることで長期的に安定した経営につながることがあります。

  • 周辺相場が下落しており、現行家賃が割高になっている場合
  • 築年数が経過して、設備の古さが目立ってきた場合
  • 長期入居者で、滞納やトラブルもなく良好な関係を築けている場合
  • 空室が長期化しており、再募集にコストがかかる場合

家賃を下げることで、退去リスクを防ぎ、空室による損失や募集コストを回避できる可能性があります。

特に長期入居者は安定収益に貢献してくれるため、少額の減額で関係を維持できるなら、トータルでの収支はプラスになることも多いです。

とはいえ、入居者の要望にそのまま応じるのではなく、下記の対応が必要です。

  1. 相場を確認し、妥当な減額幅を決める
  2. 交換条件を設ける
  3. 合意内容を書面で残す

まず、近隣の相場を参考に、どこまで下げても採算が取れるかを明確にしておきましょう。

そして、減額の交換条件として、解約違約金の設定や定期借家契約への切り替えなどで将来の収支リスクを抑えることも重要です。

【減額の条件の例】

  • 短期解約違約金(6カ月以内の退去の場合、家賃1カ月分を支払う など)
  • 定期借家契約への切り替え(期間満了後に再契約時は家賃見直し可能にする など)

具体的な減額条件が決まれば、合意日・新家賃・開始日を明記した覚書を交わしましょう。
トラブル防止に有効です。

 

値下げ交渉時にやってはいけない対応

なお、いずれのケースでも、次のような対応は避けましょう。

  • 相手の話を十分に聞かず「減額は無理」と即答する
  • 感情的に対応する
  • 返答を先延ばしにす
  • 法的に誤った説明をする
  • 相場を確認せずに拒否する

これらは入居者に「誠実に対応してもらえない」「説明が不当だ」と不信感を与え、関係の悪化やクレーム、最悪の場合は退去やトラブルに発展するおそれがあります。

「値下げに応じなくて良い」とその場で判断できたとしても、すぐに結論を出さずいったん持ち帰って検討する姿勢を示しましょう。
冷静かつ誠実に、根拠の提示も含めた客観的な対応を徹底することが大切です。

 

家賃の値下げをするメリット・デメリット

メリット・デメリット
入居者から家賃の減額交渉に応じるかどうかの判断材料として、値下げのメリット・デメリットも知っておきましょう。

 

家賃を値下げするメリット

家賃を値下げするメリットは下記の通りです。

  • 入居者の退去を防ぎ、空室リスクを軽減できる
  • 空室期間中の収入ゼロを回避し、安定した賃料収入を維持できる
  • 再募集にかかる広告費や仲介手数料、原状回復費などのコストを節約できる
  • 入居者の満足度が上がり、長期入居につながりやすくなる

これらのメリットは、入居者の退去を防ぐことによる安定経営に直結します。
家賃収入が一時的に減っても、退去による収入ゼロや再募集費用の発生を避けられれば、結果的にプラスになるケースも多いでしょう。

特に、次のような場合は、値下げのメリットが大きいと考えられます。

  • 現在、周辺エリアで空室が目立ち、再募集しても入居が決まりにくい場合
  • 入居者が長期にわたって住んでおり、家賃滞納やトラブルがない場合
  • 再募集時のコスト(広告費・原状回復費など)が高額になりやすい物件の場合

 

家賃を値下げするデメリット

一方、家賃を値下げするデメリットとして、次の4つが挙げられます。

  • 月々の賃料収入が減少し、長期的な収益性が下がる
  • 一度下げた家賃は、法的にも再び引き上げるのが難しい
  • 特定の入居者だけ減額すると、ほかの入居者が不公平感を抱く可能性がある
  • 家賃収入が減ることで、修繕や設備更新に回せる予算が減る

経営全体の収益バランスや資金計画に影響を与えるおそれがあるため、特に次のような場合は、安易な値下げに注意が必要です。

  • 現状、空室が少なく、再募集してもすぐに入居者が見込める場合
  • 収支がギリギリで、家賃収入の減少が経営を圧迫する場合
  • 複数の入居者から同様の要望が出る可能性がある物件

経営状況や物件の特性に応じて慎重に判断する必要があります。

 

まとめ

●家賃の値下げ交渉はいつでも起こり得る
家賃の減額交渉は、契約更新時や新規募集時に起こりやすいものです。
借地借家法では、経済事情の変化など正当な理由があれば入居者に減額請求の権利があります。

●家賃の値下げ交渉には冷静かつ誠実な対応を
家賃の減額交渉を受けたら、まず内容と理由を確認し、相場や物件状況を基に判断することが大切です。
感情的な拒否や即答は避け、冷静で誠実な対応を心がけましょう。

●家賃値下げのメリット・デメリットを踏まえて交渉に応じるか判断を
家賃の減額には、退去防止や空室回避、募集費用の節約など経営安定のメリットと、収入減・再値上げの困難・他入居者への影響といったデメリットがあります。
経営の現状と照らし合わせ、適切な対応を判断しましょう。

北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

家を売るなら不動産売却相談 家を売るなら不動産売却相談
著者
家賃の値下げ交渉への対処法!大家が知るべき基礎知識とは

小樽駅前店 小幡 将大賃貸物件に関するお悩みや不安、ご相談ごとは、どんなに小さなことでも私たちにお任せください。入居者様にとっては毎日の暮らしを支える住まいであり、オーナー様にとっては大切な資産です。だからこそ、お一人おひとりに寄り添い、誠実で丁寧な対応を心がけています。「ここに相談して良かった」と思っていただけるサービスを、これからも提供してまいります。

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