不動産管理コラム
不動産管理のこと2025.09.18
アパート経営をやめたいときの判断基準と手順を解説
こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。
「アパート経営をやめたい」と感じながらも、「本当にやめてよいのか」「どのタイミングが適切なのか」と迷っていませんか。
経営の判断を誤れば、損失や機会損失につながる一方で、状況によっては改善や工夫で続けられる場合もあります。
大切なのは、自分の経営状況と将来を冷静に見極めることです。
今回は、アパート経営をやめるべきタイミングの判断基準、やめる前に見直すべきポイント、実際にやめる際の流れを整理し、迷いを解消するための視点をお伝えします。
アパート経営をやめるタイミングとは?
アパート経営をやめる判断は、次のような状況に直面したときが目安となります。
- 赤字経営が続く
- 目標を達成した
- 相続で引き継いだが経営する意思がない
- 減価償却期間を過ぎた
- 市場が好転している
上記のタイミングでは、アパート経営を続けるよりも、売却など撤退を検討したほうが合理的かもしれません。
なぜそれぞれのタイミングで、アパート経営の撤退について冷静な判断が必要なのか、解説します。
赤字経営が続く場合
入居率の低下や修繕費の増加によって赤字が続くと、修繕や維持に十分な資金を回せなくなります。
その結果、建物の状態が悪化し、さらなる入居希望者の減少や資産価値の下落にもつながるでしょう。
経営を続ければ損失が拡大する可能性があるため、赤字が慢性化した状態は撤退を検討するきっかけになります。
空室対策の具体例については「アパートの空室が埋まらない原因とは?空室対策と注意点を解説」で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
当初の目標収益を達成した場合
アパート経営の目的は利益を得ることです。
初期に設定した収益目標を達成した時点は、「これ以上リスクを背負う必要があるか」を見直す分岐点となります。
築年数の経過とともに資産価値は下がり、修繕費の負担が増すからです。
目標を果たした段階で撤退を検討することは、利益を確定させて将来のリスクを回避するためにも賢明な判断といえるでしょう。
相続で引き継いだが経営の意思がない場合
アパートを相続したものの経営に前向きな意思がなければ、入居者対応や修繕判断を後回しにしがちになり、空室や建物の劣化を招きやすくなります。
特に遠方の物件では管理が行き届かず、資産価値が下がるリスクも。
経営のほか、居住の予定がないのであれば、早めの売却を検討すべきでしょう。
減価償却期間を過ぎた場合
減価償却が終わると、建物を経費として計上できなくなるため、以前のように税負担を抑える効果はなくなります。
手元に残る収益が減る一方で、経年による老朽化で修繕費がかさむ可能性が高いでしょう。
減価償却期間の終了は、やめ時を意識する一つの目安となるのです。
市場が好転している場合
周辺の地価上昇や賃貸需要の増加によって、市場が好転している時期は売却条件が有利になりやすいです。
満室稼働の実績を示せれば評価は高まりやすいですが、好況が長く続く保証はなく、景気や金利の動向で一気に状況が変わる可能性があります。
市場が良い方向に動いているタイミングで経営撤退を検討すれば、資産を高値で手放せる可能性が高まります。
経営を続けるか、それとも売却するかの判断に迷う方は少なくありません。
古いアパートの場合の選択肢については、「古いアパート経営のお悩み解決。継続か売却かの選択肢」で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
アパート経営をやめたいときに見直すべきこと5つ
「アパート経営をやめたい」と感じたときでも、問題の原因を見直せば経営撤退を急がずに済むかもしれません。
アパート経営をやめる前に、次の5つのポイントを確認しましょう。
1. 管理会社に委託して現状を改善できないか
入居者対応や修繕の手配に追われ、オーナーの負担が大きくなっていないでしょうか?
自分で全て対応していると、時間も労力も奪われ、経営そのものが重荷になりやすいものです。
こうした管理業務を専門の会社に委託すれば、日常の対応を任せられ、経営を続ける余裕を取り戻せる可能性があります。
2. 信頼できる管理会社に変更できないか
すでに管理会社に任せている場合でも、対応が遅かったり入居者募集に消極的だったりなど、管理会社に問題があることもあります。
管理会社の力不足は、空室率やトラブルの増加につながり、結果として収益を圧迫します。
別の会社に切り替えることで、入居者募集が活発になり、安定経営に近づけるケースも少なくありません。
3. 相場に合わせて家賃を調整できないか
周辺相場より高めの家賃を設定していると、入居希望者に敬遠されることがあります。
逆に、相場より安すぎれば「この物件は何か問題があるのでは」と疑念を抱かれたり、収益性が損なわれたりします。
地域の相場や設備水準に合わせて家賃を見直すことで、空室の改善や安定収益につながる可能性があります。
4. 必要最低限の改善で魅力を高められないか
築年数が古いアパートでは、老朽化した設備や劣化した内装が入居を妨げている場合もあります。
もしくは、エアコンやネット環境が整っていないなど、他物件と比べて見劣りする箇所があるかもしれません。
入居者ニーズの高い部分を重点的に整えるだけでも、印象が大きく変わり、経営を立て直せる可能性があります。
5. 今やめるのが本当に適切か
「今すぐ撤退するのが本当に適切か」と、タイミングを見直すことも大切です。
なぜなら、不動産の売却益にかかる税率は、所有期間によって次のように変わるからです。
<長期譲渡所得(5年超)>
- 所得税:15%
- 復興特別所得税(※):0.315%(15%×2.1%)
- 住民税:5%
<短期譲渡所得(5年以下)>
- 所得税:30%
- 復興特別所得税(※):0.63%(30%×2.1%)
- 住民税:9%
このように、所有期間によって手元に残る利益は大きく変わります。
焦って撤退を決めると税負担が重くなり、利益を減らしてしまうおそれがあります。
やめたい気持ちが強いときこそ、撤退のタイミングを慎重に見直すことが重要です。
※平成25年(2013年)1月1日から令和19年(2037年)12月31日までは復興特別所得税(所得税の2.1%相当額)をあわせて申告・納付します。
なお、下記のコラムでは、アパート経営にありがちな失敗について解説しています。
経営改善にも役立つポイントを紹介していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
アパート経営でのよくある失敗例。対策と成功を目指すためのポイントも
アパート経営をやめたいときにやること
アパート経営をやめると決めた場合、まず「どのように処分するか」を整理し、その上で必要な手続きを順に進めることが大切です。
アパートの処分方法
アパートを手放す方法には、主に次の3つがあります。
①建物と土地をまとめて売却(オーナーチェンジ)
入居者がいる状態のまま投資家に売却する方法です。
解体や立ち退きが不要でスムーズに進められる反面、購入希望者は投資目的の限られた層に絞られます。
②建物を解体して更地で売却
建物を取り壊し、更地にしてから売却する方法です。
老朽化が進んだ物件では、建物よりも土地の自由な利用に価値を感じる買い手が多いため、需要を見込めます。
ただし解体費や入居者への立ち退き料の負担、更地にすると固定資産税が上がる点には注意が必要です。
③居住用以外の用途へ転用
駐車場やトランクルーム、太陽光発電用地などに切り替える方法です。
立地によってはアパート経営より安定した収益につながる場合もあるでしょう。
なお、処分を検討する前に管理会社を見直すことで、アパート経営を立て直せる可能性も十分あります。
経営に関して改善の余地がないか、再確認してから決断するのがおすすめです。
アパート経営をやめる際の主な流れ
処分方法を決めたら、次のような手続きを順に進めましょう。
- ローン残債の確認
- 不動産会社への査定依頼
- 入居者への対応
- 売却活動の開始
- 各種契約の解約
- 廃業届の提出
ローン残債の有無や処分方法によって対応が異なるなど、状況に応じてやることが異なります。
信頼できる不動産会社に相談しながら、損をしてしまわないように進めましょう。
まとめ
●アパート経営をやめるタイミングの判断基準
空室率の高さや赤字経営、目標収益の達成、相続による取得、減価償却期間の終了、市場の好転などは、撤退を検討する大きな目安になります。現在の経営状況と将来の見通しを照らし合わせ、冷静に判断することが欠かせません。
●やめる前に見直すべき5つのポイント
管理の仕組みや任せる管理会社、家賃設定、設備改善を振り返れば、経営を立て直せる可能性があります。
また、今やめるのが適切かと所有期間を見直すことも、利益を確保するために大切です。
●アパート経営をやめる際の手順
処分方法を決めたら、ローン残債の確認、不動産会社への査定依頼、入居者への対応、売却活動、契約解約、廃業届の提出と順に進めていきます。
北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
著者

小樽駅前店 小幡 将大賃貸物件に関するお悩みや不安、ご相談ごとは、どんなに小さなことでも私たちにお任せください。入居者様にとっては毎日の暮らしを支える住まいであり、オーナー様にとっては大切な資産です。だからこそ、お一人おひとりに寄り添い、誠実で丁寧な対応を心がけています。「ここに相談して良かった」と思っていただけるサービスを、これからも提供してまいります。
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