2019.09.20不動産売買についての考察
【不動産売却理由の変化について】『~不動産売却理由の変化は世相、時代が反映されます~』
北章宅建株式会社の坂本です。
という不動産売却に関するコラムを書いてきました。
今回は、不動産売却理由の時代毎の変化について書いてみたいと思います。
目次
1、最近は相続案件のお問い合わせが多い
2、2004年頃は買い替えと住宅ローンの返済が厳しい事による売却理由が多かった
3、不景気の頃は住宅ローン返済の相談が多いが、高齢の方の不動産売却は一貫して増加
4、2010年の創業からの変化 相続による売却が増加 ~石狩市、小樽市を例に~
5、不動産売却に早すぎるはありません。早期のご相談が有利です。
最近は相続案件のお問い合わせが多い
不動産売却と一口に言っても、ご事情や要望は様々ございます。新居への買い替え、お子様、ご両親との同居、転勤、老人施設への転居、相続した物件、ローン返済が厳しい、家族構成の変化等、生活の基盤となる不動産にはそれぞれに物語があります。
不動産売却理由も常に一律で同じ割合というわけではなく、時代や経済環境等により売却理由の割合が変化します。
ここ最近は、当社が人口減少と高齢化が進んでいる地方に主要な店舗を配置している事を割り引いても、相続して使用しない、老人ホームなどへの転居、家族構成の変化によるマンションへの住み替え等が大きく増加してきていると感じます。
人口が増加している札幌にある店舗へのお問い合わせも上記3つを理由とする売却関連のお問い合わせで8割を占めます。
不動産価格の下落や住宅ローン金利の低下、景気の安定等もあり、一時期多かった住宅ローン返済困難による売却は本当に減っています。
これからは相続での売却がより増えてくると予想しています。この事について、私が不動産業界に飛び込んだ2004年からの不動産売却理由の変化を振り返りながら考えてみたいと思います。
2004年頃は買い替えと住宅ローンの返済が厳しい事による売却理由が多かった
私が不動産業界に飛び込んだ2004年頃は分譲マンションの供給や新築住宅の着工が2019年現在より多かったこともあり、自宅を売却して買い替えを行いたいという売却理由が多かったと記憶しています。又、ステップアップローン(別名:ゆとりローン)という5年目を目途に返済額が上がる住宅ローンの負担が厳しく、任意売却を選択されるという方も多かったのも印象に残っています。
任意売却とは:住宅ローン等の借入金が返済できなくなった場合、売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却する方法です。
ステップアップ(ゆとり)ローンとは:1993年から2000年に販売されていた住宅金融支援機構(当時は住宅金融公庫)の住宅ローン商品の一つ。融資後5年間は金利が低く設定されているが、徐々に金利が高くなっていくのが特徴でした。ゆとり返済とも呼ばれています。給与が年齢と共に上昇していく年功序列型の経済を想定して作られた商品のため、増加していく返済負担が重く、住宅ローン滞納や競売、任意売却の大きな原因の一つとなっています。
当時2004年の10年前である1994年はバブルの余韻がまだ残っていた時期でもありました。経済が回復する+年功で収入が上がるという予測から、最初の返済額を抑えた住宅ローンが普及したのだと思います。しかし、予測に反して景気は回復せず、所得も思うように上がらない中で、10年目の返済負担に耐えられないという事でお問い合わせを頂いていました。
不景気の頃は住宅ローン返済の相談が多いが、高齢の方の不動産売却は一貫して増加
その後、2008年のリーマンショックまでは徐々に景気が回復してきた事もあり、多少強気な価格でも不動産が売れていました。そういった時には買い替え等のご相談が多く、そして徐々に高齢になられた所有者の方が施設に移られるという売却相談を頂く事も増えてきていました。
強く印象に残っているのは、リーマンショック前の2008年の4月頃の雰囲気と、同年10月の雰囲気の違いです。リーマンブラザーズの破綻に端を発した「未曽有の危機」と呼ばれたリーマンショックが起き、遠い北海道でも4月に売れていた不動産が、10月には急に売れなくなってきたのです。
最初の「少し売れないな」から「随分売れないな」となり、いち不動産営業マンとしてもリーマンショックの影響を実感しました。
リーマンショックから少し時間を置いてから同時に住宅ローンの返済が厳しくなってきたという様な、返済関連の不動産売却のお問い合わせが増えてきました。この住宅ローン返済による不動産売却のご相談は時代により多い少ないの波があります。
翻って、高齢の方からの不動産売却相談は景気、不景気に関わらず一貫して増えていました。それこそ年を追うごとにという表現がぴったりでした。
2010年の創業からの変化 相続による売却が増加 ~石狩市、小樽市を例に~
その後、リーマンショックから少し回復してきたなと感じ始めた2010年4月に石狩市にて【北章宅建株式会社】を創業しました。【イエステーション石狩店】としてフランチャイズ加盟店としての独立です。広さ12坪、家賃6万円の店舗兼事務所に営業兼社長である私と事務員さんの2名でのスタートです。石狩市に移ってからは高齢の方からのお問い合わせが札幌担当時代よりも多く、買い替えによる売却相談は無くはないのですが、札幌時代と比較して石狩市時代は相対的に数が少なかったと記憶しています。
当時2010年で石狩市の主要市街地の花川地区が土地分譲されて約40年となっており、分譲時期に30代で住宅を購入された方がそのまま居住されていれば、70歳代になっている事を考えると、この事は十分理解できました。
2012年に小樽市に【イエステーション小樽店】を出すと、また違う変化がありました。石狩市では住宅として所有していた自身の不動産の売却相談が多かったのですが、小樽市では親の不動産をお子さんが代理で相談ですとか、親から受け継いだ相続不動産の売却を検討しているという話を多く頂きました。
小樽市は約12万人、石狩市は約6万人という人口の違いもあり、街の規模間は小樽市の方が大きいのですが、単純なる人口の多い少ないではなく、その中の人口構成の違いが不動産売却理由に違いをもたらすという事に気付くまでに時間はかかりませんでした。
小樽市の人口構成
石狩市の人口構成
【人口減少下でも売れる不動産は売れます】でも書きましたが人口減少自体はある一定のライン(一人当たり世帯数が1.5人)に近付くまでは不動産需要を大きくは減らしません。不動産が売れていくのは石狩市も小樽市も同じなのですが、売却される理由は石狩市と小樽市と言う同じ日本海(石狩湾)沿いの隣街でも大きな違いがありました。
7年後の2019年現在の石狩市では、当社が小樽市に出店した2012年の頃と同じような相続による売却相談が増えてきました。人口構成の内、老年人口比率に着目して見てみたいと思います。
石狩市、小樽市のの老年人口比率
2012年 2019年
石狩市老年人口比率 24.6% 33.02%
小樽市老年人口比率 32.05% 39.81%
2012年の小樽市の高齢化率と2019年の石狩市の高齢化率はほぼ一致します。不動産売却の主要となる年齢層に変化が起きると、売却理由も同時に変化していきます。ある一定の年齢までは自身で不動産の売却が可能ですが、一定の年齢を超えると、体力的な問題から売却が先送りになったりして、相続案件が増えていきます。
2019年の小樽市は2012年と比較して相続による売却のお問い合わせがより増えています。この傾向は人口減少と高齢化が変化しない限り、増える事はあっても減る事は無いと思います。そして一世帯当たり人員が減る中においては、不動産売却圧力は年々強まります。
売りに出る不動産が多くなるという事は、売れる不動産も徐々に選別が進みます。
不動産売却に早すぎるはありません。早期のご相談が有利です。
過去ブログの【人口減少下でも売れる不動産は売れます】、【同じ不動産でも売り出し方で売れ行きは大きく変わります】にも書きましたが、人口が減少している点のみ取り上げて不動産売却に極端に悲観的になる必要はありません。どの時代でも売れる不動産は売れますし、売り出し方に工夫の余地もあります。
但し、不動産売却において時間を味方につけるという観点から考えると、間違いなく早めのご相談が、より良い条件での不動産売却をもたらしてくれます。
徐々にではありますが、売りに出る不動産が増え、売れる不動産の選別が進みます。特に相続で売却を検討される方は、他の住み替えや老人ホームへのお引っ越し等の売却理由に比べて売却へのハードルが低く、売りに出る確率が高いです。
一人当たり世帯数の減少による売却不動産増加と、ハードルの低さによる供給が組み合わされ、常に近隣にライバルとなる売却不動産があるという事も普通にあり得ます。
それに対して購入を検討される方は一定もしくは少しずつ減少しますから、不動産売却における環境は少しずつ厳しいものになる事が予想されます。
ここまで不動産売却理由の時代変遷を振り返ってみましたが、基本的な流れは年度ごとに多少のブレはあるにしても一貫しています。相続案件が増え、売却物件が増加するという流れです。
不動産売却を検討される際は、ぜひ時間の観点も含めてご検討される事をお勧めします。
不動産売却の際は、【イエステーション北章宅建株式会社】までお気軽にご相談ください。不動産売却について、地域専門担当者による地域事情を考慮した不動産売却の提案をさせて頂きます。又、売却に関する情報発信にも努めます。
今後ともよろしくお願いします。
過去ブログ
お役立ち情報
【人口減少下でも不動産は売れます ~不動産と人口と世帯数の関係性について~】
【同じ不動産でも売り出し方で売れ行きは大きく変わります ~空き地、空き家が増える時代における不動産売却方法~】
【安心安全な不動産売却、取引とは】『~不動産取引は情報伝達が何よりも大切です~』
【住宅売却時に建物診断(インスペクション)は必要か】『~古い住宅、空き家でも建物診断無しで安心して売却可能です~』
【北海道の不動産査定・売却相場|おすすめ不動産会社ランキング 】に紹介されました。
【最近は分かり易さが不動産売却のトレンド】 『~紙からインターネットへの移行による売却要点の変化について』
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