不動産売却のコツ2021.08.02

送電線下の家は売れる?売却に影響するポイントとは〜その2

近くに送電線がある家は売却に不利、という話を聞くことがあります。価格に影響があるのであれば、手放したくても二の足を踏んでしまう人は少なくないでしょう。

しかし送電線・高圧線にはいくつか種類があり、家の近くにあったとしても、その種類や場所によって売却価格への影響は異なります。今回は、何が価格を下げる要因となるのかを探っていきます。

送電線下の土地には建築制限がある

送電線の下にある家が、そうではない家と比べて売却価格が低くなりがちなのは、建物の建築制限による影響です。送電線下の建築制限は、送電されている電力の電圧によって違います。

電気設備に関する技術基準を定める省令第48条では、
『電圧が17万ボルト以上の場合は、鉄塔下の敷地だけではなく、一番外側の電線の真下から水平距離3m(垂線下水平距離3m)、かつ定められた離隔距離(電線が最も下がった位置からの距離)を保った位置でなければ、住宅など建物を建てることができない』とされています。

電圧が17万ボルト未満の場合でも、高圧線の下は危険です。安全を確保するために、やはり建物は一定の距離を保つよう決められています。このことを「離隔距離」と言います。

離隔距離は、電圧の強さによって、以下のように定められています。

ただし、電力会社によっては、推奨安全距離は異なるケースがあります。上空の送電線が電圧が17万ボルト未満であっても、電力会社と土地の所有者の契約に基づいて、建築そのものが制限されているケースもあります。

こうした制限のため、本来なら3階建てにできるのに、送電線があるために2階建てしか建てられない、といったことが起こり得るのです。すでに送電線下に家が建っている状況を考えると、建築自体は制限されていないということでしょう。しかし、何らかの建築制限がかかっている可能性はあります。

このような条件下にある家の売却を検討している人は、所有地にどのような建築制限があるか、その内容も含めてしっかり確認しておくことが重要です。

買主によっては嫌悪される

調べた結果、建築制限がかかっていなかったとしても、送電線・高圧線、鉄塔の周辺は避ける人の方が多いものです。このように、存在そのものが周囲の人から嫌われる施設のことを「嫌悪施設」と言います。

送電線・高圧線、鉄塔が嫌悪施設とみなされることが多いのは、家のそばにがあると、眺望を阻害する、威圧感がある、地震や台風時に危険を感じるなど、不快感や不安を覚えることが多いためでしょう。また中には、電波障害や電磁波による健康被害への影響を心配する人もいます。

不安要素のある物件に対し、「できれば買いたくない」「値下げしてほしい」と考えるのは、自然なことです。しかし人によって、考え方は異なります。拒否反応を示す人がいる一方で、送電線の存在を気にしない人や、安く買えるなら住みたいと思う人もいますので、最初から諦める必要はありません。

売却前に確認すべきこととは

送電線・高圧線のそばにある不動産を売却する場合は、建築制限のほかに、必ず確認すべきものがあります。それが、「地役権設定登記」と「送電線架設保持に関する契約」です。

地役権設定登記を確認する

地役権とは、「自分の土地の利便性を高めるために、他人の土地を利用することができる権利」のことです(民法第280条)。例えば、通行の利便性のために他人の土地を利用したり、他人の土地に高い建物を建てさせないようにするなど、一方の土地の便宜を図る目的で、もう片方の土地に設定されます。

電力会社としては、送電線の下の土地所有者に、離隔距離を超える高い建物を建てられると困るため、その土地に対して「◯m以上の建物は建ててはいけない」という地役権(送電線路敷設地役権)を設定しようとします。電力会社はその権利を得る代わりに、土地の所有者に一括でお金を支払うのが一般的です。

地役権が設定されている土地かどうかは、登記簿謄本で確認できます。しかしここで注意してほしいのは、山間部などでは、地役権が登記されていないケースもあるという点。送電線の下に家が建っているのに地役権が登記されていない場合は、契約内容も含めて電力会社に確認するようにしましょう。

送電線架設保持に関する契約を確認する

送電線下の土地使用を制限するには地役権設定が一般的ですが、地役権を設定する代わりに、電力会社と土地所有者との間で、送電線架設保持に関する契約(債権契約)のみを交わしているケースもあります。

債権契約の場合は、補償料として年払いで継続的に土地所有者にお金が支払われることがほとんどです。地役権が設定されていない場合は、送電線架設保持に関する契約が結ばれていないかどうかを、電力会社に確認してください。

まとめ

送電線の近くにある、というだけで売却できないわけではありません。どのような建築制限がかけられているかは場所によって異なりますし、送電線の近くを嫌う人もいれば、気にしない人もいるからです。

肝心なことは、送電線・高圧線があることで、不動産にどのような影響があるかをきちんと把握し、売却の前に必要な情報を確認しておくこと。その上で、信頼できる不動産会社に相談してみましょう。

北章宅建では、不動産の様々なご相談に無料で応じています。送電線下の不動産売却でお困りの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

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著者
送電線下の家は売れる?売却に影響するポイントとは〜その2

札幌手稲店 野口 祥子

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