不動産売却のコツ2023.06.06

自宅の買い替え時における「引渡し猶予」とは? 売主・買主のリスクも理解しよう~前編

自宅を買い替え(住み替え)する場合、現在住んでいる家を売却し、新しい家を購入することになります。一般的に、売買代金と物件の引渡しは同時に行うことが原則ですが、売却が決まってから新居を購入する売却先行や、売却と新居の購入を同時に行って住み替えする場合は、すぐに引っ越しすることができないため、現在の自宅を買ってくれる人に引渡しを待ってもらう必要があります。

この事態に対処するための特約が「引渡し猶予」です。売買代金の決済が終わった後も、売主が一定期間、現在の住まいに住み続けることができる仕組みで、売主と買主の合意によって取り決めた条件を売買契約に盛り込みます。

今回は「引渡し猶予」について、2回に分けて分かりやすく説明します。

「引渡し猶予」とは?

住み替え先を手持ちの資金で購入する場合は、自宅の売却前に新居に入居すれば良いので問題はありません。しかし、現在住んでいる家の売却代金で新たな家を購入する場合、まずは売却代金を受け取らないと新たな物件を購入できません。

このような事情から売却と引渡しを同日に行えない場合、売主が売却した家にしばらく住めるよう、引渡しをしばらく猶予してもらうのが「引渡し猶予」です。どれくらいの期間にするかは買主との交渉次第ですが、双方が合意した期間中は、売却した家に住み続けることが可能です。

引渡し猶予は、売主の「買い替え(住み替え)」での利用が前提となります。まずは買い替えの手順について見ていきましょう。

「引渡し猶予」特約を付けた場合の買い替え手順

引渡し猶予を付けて買い替えする場合、流れは以下のようになります。

①「引渡し猶予特約」をつけて売却活動を行う
②売買契約を結び、売却物件の残代金決済をする
③売却代金で購入物件の残代金決済をする
④新しく購入した物件に引っ越す
⑤売却物件の引き渡しを完了する

それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。

①「引渡し猶予特約」をつけて売却活動を行う

引渡し猶予は、売主の都合で引き渡しの延長をお願いする特約です。代金を支払ってもすぐに物件の引渡しが受けられないため、買主にとっては不利な契約条件となります。そのため、売却活動を始める際には、最初から不動産会社に「引渡し猶予特約付き」の売却であることを明示してもらう必要があります。

②売買契約を結び、売却物件の残代金決済をする

引渡し猶予特約付き物件の売買契約が成立したら、残代金決済を行います。売主はこの時に全額を受け取り物件の所有権が買主へ移転するため、通常は残代金決済の前日までに引っ越しを済ませておく必要があります。
しかし、決済後の所有権は買主に移りますが、「引渡し猶予特約」が付いている場合は、事前に取り決めた期間中に限り売主はそのまま家に住み続けることができます。

③売却代金で購入物件の残代金決済をする

売却物件の残代金決済と同じ日か数日以内に、新たに購入した新居(引っ越し先)の残代金を支払います。決済が終了した時点で購入した物件が引き渡され、所有権を得ることができます。

④新居に引っ越しをする

売却物件から、新しく購入した物件へ引っ越しします。

⑤売却物件の引渡しを完了する

新居への引っ越しが完了したら、売却物件を買主に引き渡して「引渡し猶予」を付けた買い替えが完了します。

次回は、引渡し猶予を利用する際の注意点について、詳しく解説します。

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自宅の買い替え時における「引渡し猶予」とは? 売主・買主のリスクも理解しよう~前編

札幌手稲店 野口 祥子

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