不動産売却のコツ2021.12.20

地震や台風など自然災害による損害は、家の所有者に責任はある?

古い家を適切にメンテナンスしないと、台風などの強風や地震によって建物やブロック塀が損壊しやすくなり、他人にケガをさせたり隣家を破損させてしまう恐れがあります。

その場合、家の所有者として責任を問われる可能性があることは知っていますか? 所有物件が空き家でも、責任を負うケースがあるため注意が必要です。

今回は、自然災害が起こった場合の、家の所有者責任について解説します。

 

地震や台風で損害を与えた時の損害賠償責任について

地震や台風、竜巻といった天災が原因で、建物の倒壊などが起こることがあります。

ニュースでよく目にするのは、台風で屋根瓦が飛ばされたり、地震で落下したというケース。このコラムは北海道の不動産会社が配信しており、道内では瓦屋根の家が少ないのですが、地域によっては被害が発生しないか心配ですよね。

もし所有している家が原因で歩行者や隣家に損害を与えてしまったら、所有者に損害賠償責任は発生するのでしょうか。実は、賠償責任は発生する場合と発生しない場合があります。それぞれのケースを見ていきましょう。

所有者に責任が発生するケースとは

民法では、建物などの「工作物」の所有者は、「工作物責任」を負うと規定しています。

工作物責任とは、所有物件が他人に損害を与えた場合に、原則として所有者が負う損害賠償責任です。所有者に過失がなくても、物件を所有しているだけでその責任があります。

工作物責任が問われるのは、建物の「瑕疵(かし)」によって人に損害を与えた時です。瑕疵とは、何らかの欠点や欠陥があることを言います。つまり、家に何らかの問題があるのにその問題を放置したまま所有し、結果的に家が損壊して他人に損害を与えたら、所有者が賠償しなければならない、ということです。

古い建物であれば、腐食して弱った部分がある、瓦や外壁が剥がれてきている、ブロック塀が今にも倒れそうになっているなど、経年劣化によってあちらこちらが傷んでいるもの。補強工事をするなど、日頃からメンテナンスを行っていないと建物に瑕疵があると認められ、自然災害の際に工作物責任を問われる可能性があります。

所有者に責任が発生しないケースとは

建物に瑕疵がない場合は、自然災害による建物の損壊で他人に損害を与えても、工作物責任は発生しません。家に何も問題がない状態だったなら、損害の発生は地震や台風などの天災による不可抗力ですので、賠償金を払う必要がないのです。

とはいえ、建物に瑕疵があったかどうかを証明するのは、現実的には非常に難しいもの。そのため自然災害の場合、責任を負うケースはほとんどありません。

耐震工事は行うべき?

建築基準法の改正前に建てられた古い家は、現在の耐震基準を満たしていないことが多々あります。

旧耐震基準では「震度5強程度の地震で大きな損傷を受けないこと」が基準とされてきました。その後、昭和56(1981)年の建築基準法改正で耐震基準が引き上げられ、新耐震基準ではさらに「震度6強〜7程度でも倒壊しない耐震性」を持つ建物が条件となりました。そのため建築確認を受けた日が昭和56年5月31日以前ならば旧耐震基準の建物、昭和56年6月1日以降は新耐震基準の建物となります。

所有物件が旧耐震基準の建物の場合、耐震補修工事をしないと「瑕疵」があるとされ、工作物責任が発生するのでしょうか。

耐震工事の法的な義務はない

旧耐震基準に基づいた建物に、耐震補強工事を行わなければいけないという法的な義務はありません。現在も旧耐震基準の建物は多数存在しており、何も対策をしていなくてもペナルティは課されないので、耐震化未対応が「建物の瑕疵」とみなされる可能性は低いです。

建築基準法改正後に建築された建物について

ただし、新耐震基準が導入された昭和56(1981)年6月1日以降の建物となると話は別。改正後の建築基準法が適用されますので、新耐震基準を満たさなければ違法建築となり、台風や地震で建物が崩れて被害を出したら、工作物責任が発生します。

法的な賠償義務はなくても道義的な責任はある

先に解説した通り、自然災害により古い家が崩れて他人に迷惑をかけたとしても、基本的には建物に「瑕疵」がない限り責任は発生しません。

しかしたとえ法的な責任がなくても、他人に損害を与えたという事実に変わりはありません。法的な賠償義務はなくても、被害者やその家族から恨まれることは避けられないでしょう。地震でブロック塀が倒壊し、人が亡くなったニュースを覚えている人も多いのではないでしょうか。

旧耐震基準の建物が損壊して迷惑をかけたら、「古い家なのに耐震補強工事もしていないなんて非常識」と責められる可能性があります。万が一亡くなってしまったら、その重荷は一生背負って生きて行かねばなりません。道義的な責任から逃れることはできないのです。

 

古い家を所有している場合どうすればいいのか

地震や台風が頻発する日本では、所有物件がいつ災害に遭っても不思議ではありません。自然災害のリスクに備えるには、法的義務の有無にかかわらず耐震補強工事を行って、現行の耐震基準を満たしておく方が良いでしょう。

ただ、耐震工事には数百万円単位の費用がかかります。家の劣化の度合いによっては、耐震化工事をするより建て直した方が安いケースもあります。また、空き家など住む予定のない家に工事費をかけるのも現実的ではありません。

古い家が空き家の状態であれば、一番良いのは売却すること。空き家でなくても、家が古くて心配なら、やはり売却を考えた方が良いでしょう。工作物責任は、物件を所有している限りついて回ります。いつか問題が起こるかも…と不安を抱え続けるくらいなら、思い切って手放すことをお勧めします。

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著者
地震や台風など自然災害による損害は、家の所有者に責任はある?

札幌手稲店 野口 祥子

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