相続や名義のこと2021.04.01

不動産を共有名義・共有持分にするメリットとデメリットとは

※コラム内容は掲載当時の最新情報となり、現在改正されている場合があります

新居の購入資金を夫婦2人で負担したり、二世帯住宅購入の際に親子双方がお金を出し合うなど、一つの不動産に複数の人がお金を出した場合、出した金額によって不動産の所有権の割合(共有持分)が決まります。

共有名義には何か注意すべきポイントはあるのでしょうか?

今回は不動産を共有名義にする場合のメリット・デメリットについて解説します。

共有名義・共有持分とは

不動産の購入には多額の資金が必要で、多くの人は住宅ローンを借入れします。しかし自分の年収では希望額の融資がおりないなど、一人で購入するのが難しい場合に、夫婦や両親と一緒にお金を出し合って購入することがあります。

共有名義はその出資した人の名義で登記することを指し、持分割合はそれぞれの出資割合に応じて決まります。

例えば4,000万円の物件を、夫が3,000万円、妻が1,000万円出し合って購入した場合、夫の持分は3/4、妻の持分は1/4ということになります。この不動産は夫婦の共有名義(きょうゆうめいぎ)であり、夫が3/4、妻が1/4、それぞれ共有持分(きょうゆうもちぶん)を持っているということになります。

共有名義・共有持分のデメリット

共有名義にする理由の多くは、不動産という大きな買い物をするには自分一人の収入や資金だけではなかなか難しいからだといえるでしょう。

では、共有名義にすると何かデメリットがあるのでしょうか?

自分の判断だけで売却できない

共有名義の不動産を売却する場合は、共有者全員の承諾が必要です。共有持分の大小は関係ないため、たとえ共有持分の9割が自分にあるとしても、独断で進めることはできません。不動産売買契約書に共有名義全員分の署名・捺印をもらって初めて売却が可能になります。

共有者が亡くなると相続の対象となる

共有者が亡くなった場合、共有者の持分は相続の対象となります。例えば親子2人の共有名義となっている不動産で、子である自分だけが唯一の相続人であれば、全ての持分が自分のものになり何の問題ありません。しかし、もし相続人が複数いると、その不動産は遺産分割の対象となり、共有者は3人、4人とさらに増えていく可能性があります。

離婚すると、売却せざるを得ない可能性が高い

厄介なのが、離婚した場合の財産分与です。どちらかが家を出るでしょうから、家に残る方が片方の共有持分をお金で購入すれば良さそうですが、そう簡単にはいかないでしょう。住宅ローンを利用して購入している場合は、そもそもお金がないからローンを組んでいる訳で、ほとんどのケースで共有者は購入できません。そのため売却してその代金を持分の割合で分けるケースが一般的です。築年数の浅い物件が売却される理由には、実は離婚が多いのです。

費用が余計にかかる

共有者それぞれが住宅ローンを利用する場合は、登記費用(抵当権)がその人数に応じてかかります。

贈与税が発生する可能性がある

もし不動産の共有名義人が夫婦で、妻が仕事を辞めて収入が無くなれば、夫は妻の分も含め1人で住宅ローンを返済しなければなりません。このように夫が妻の返済を代わりに支払った場合は、夫から妻への贈与とみなされ、妻に贈与税が課税される可能性があるので注意が必要です。

共有名義・共有持分のメリット

上記のデメリットを踏まえてでも共有名義にするメリットは「自分の出したお金の分はきっちりと持分をもらいたい」という理由を横に置くと、税制上の優遇をダブルに受けられるという点になります。

住宅ローン控除を二重に受けられる

住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の1%を、その年の所得税から控除できる制度です。夫婦で住宅ローンを利用している人は、それぞれが控除を受けられるためメリットは倍になります。親との共有名義で、親が働いている場合もそれぞれ控除が受けられます。

ただし、デメリットの項目でお伝えしたように、共有者が仕事を辞めて無収入になったり、妻が出産や育児に伴い働き方を変えると、住宅ローン控除が使えなくなる可能性があります。メリットだけに注目して安易に共有名義にせず、将来も考慮して十分に検討してから決めましょう。

売却時の特別控除を二重に受けられる

不動産を売却する時には「3,000万円特別控除」、いわゆる「居住用財産の買換えの特例」が使えます。これは、不動産売却時に譲渡益(売却益)に3,000万円までの特別控除が受けられるというもので、2人の共有であれば倍の6,000万円まで特別控除が使えます。高額な物件の場合はかなり大きなメリットです。

単独名義であれば、売却益から3,000万円を引いた額に税金がかかりますが、例えば夫婦の共有名義だと6,000万円までは課税されないということです。とはいえ、一般的な居住用の家でこれほどの利益を上げることはほとんど無いでしょう。メリットが享受できるのは、共有名義で3,000万円以上の売却益が出た時だけですので、これを目的に共有名義にする人はほとんどいないはずです。

まとめ

不動産を共有名義・共有持分にすると、住宅ローン控除など税制上の恩恵はありますが、例えば夫婦など、共有者それぞれがこの先も安定した収入があるという前提があってこそのメリットです。

様々なデメリットもありますので、注意すべきポイントをしっかり踏まえた上で、単独名義か共有名義にすべきかをよく検討するようにしましょう。

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著者
不動産を共有名義・共有持分にするメリットとデメリットとは

札幌手稲店 野口 祥子

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