相続2021.04.09

不動産相続でよくあるトラブルとは?事例と解決策を徹底解説〜その3

親が住んでいる実家の不動産が原因で、相続トラブルが発生するケースは意外に多いものです。相続人の数が多く、遺産分割協議がまとまらない、平等な分割を目指したばかりに揉め事に発展する、親と同居して面倒を長年みてきた子が不動産相続を主張するなど、実に様々なケースがあります。

本記事では引き続き、不動産相続に関わる代表的なトラブル事例を取り上げます。問題が発生するケースとその解決策を、一つ一つみていきましょう。

事例5:相続した不動産の名義変更がされていなかったケース

親が亡くなり、いざ実家を相続しようと不動産の登記を確認してみると、名義人がかなり前に亡くなった祖父のままだったというケースがあります。相続登記に法的な義務はなく、期限もないために、放置されたままになっているということは珍しくありません。

この場合、祖父の代から遡って名義変更が必要なため、膨大な時間と労力がかかります。特に親の兄弟姉妹の人数が多いと、相続人の整理や書類の作成、事務手続きは個人の手に負えません。弁護士や司法書士などの専門家に依頼することになり、その費用負担も発生します。

【解決策】
将来の相続に向けて、土地の登記は事前にしっかり把握しておくことが肝心です。不動産の名義人が誰になっているか不安な場合は、親が健在なうちに不動産登記を確認しておくようにしましょう。

不動産登記簿は、有料ですが自宅からインターネットでも確認できるので活用してください。祖父の代の相続は、当事者である親が進めることで早い解決が望めます。

事例6:遺言書が問題でトラブルに発展するケース

相続で揉めないために最も有効な対策法は、被相続人が遺言書を作成しておくことです。遺言によってどの財産を誰に遺すかを定めておけば、遺産相続を巡る相続人同士のトラブルを防止することにつながります。

ところが一歩間違えると、遺言書自体がトラブルを招く原因になることがあります。争いのポイントとなるのは、遺言書の「有効性」。例えば次のようなケースが挙げられます。

・遺言書の形式が無効
・遺言の内容が遺留分を無視している
・特定の相続人のみに相続させる内容になっている
・第三者に遺産を全部遺贈する内容になっている

遺言書に書かれた財産分割があまりにも偏った内容だと、法定相続分以下になった相続人が納得できず、トラブルに発展することがあります。

【解決策①遺言書の適法性を確認する】
相続財産の配分について、被相続人の遺志を尊重するために作成するのが遺言書です。遺言書は書き方にルールがあり、これに則っていなければ法的に無効となるため注意が必要です。

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

このうち公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方法で作成するので、トラブルになることはほぼありません。また、秘密証書遺言は、一般的にはあまり採用されません。そのため、法的に有効かどうか問題が起こるのは、自筆証書遺言のケースがほとんどです。

自筆証書遺言が無効になる8つの注意点

・パソコンで作成している(ただし財産目録はパソコン可)
・遺言者の押印がない
・遺言者の署名がない
・作成した明確な日付がない
・明らかに遺言者以外の人間が書いた遺言書である
・相続する財産が不明確
・作成した日付が明らかに虚偽である
・動画や録音による遺言

せっかく遺言書を作成しても、このような状態では無効となる可能性が高く、無効になれば相続人同士で遺産分割協議を行う必要があります。

現在、自筆証書遺言は法務局で保管してもらえる制度がありますが、もし自宅にあったからといって勝手に開封してはいけません。開封せずそのまま家庭裁判所に提出し、検認の請求をして、相続人の立会いの下で開封します。

この手順を踏まずに開封した者は、5万円以下の過料の対象になります。開封したことで遺言書が無効になるわけではありませんが、十分注意すべきでしょう。

遺言書により相続財産をスムーズに分割するためには、正しい知識に基づいて遺言書を作成し、適法性を相続人全員で確認することが重要です。

【解決策②遺留分侵害額請求をする】
遺言書で、遺産の分配が明らかに特定の相続人に偏っていた場合は、遺留分侵害額請求を請求することができます。遺留分とは、相続人に保証されている、最低限の相続分のことです。

相続では、被相続人の遺志を尊重し、遺言書に基づいて遺産の分配が行われます。例えば、親が長年身の回りの世話をしてくれた人に感謝して、法定相続人以外の人に全ての遺産を渡す、ということも可能です。

しかし、そのため法定相続人への遺産がゼロになってしまうと、あまりにも不公平です。そのため民法では、被相続人の配偶者や子、直系尊属は相続財産について最低限の取り分である遺留分が認められています。相続が発生して遺留分の侵害が分かれば、侵害した相手に対して遺留分侵害額請求をすることができます。

相手が請求に応じてくれれば解決しますが、応じない場合は家庭裁判所に申し立てを行います。調停手続きでは、当事者双方から事情を聞き取り、遺産の精査をした上で、双方の意向に沿った解決案を提示してくれます。

それでも解決できなかった場合は、地方裁判所(請求金額が140万円以下の場合には簡易裁判所)で民事訴訟をし、判決に従うという流れになります。

事例7:相続した実家を「空き家」にするケース

生前に親が住んでいた実家を相続し、誰も住まない場合は空き家になってしまいます。家族の思い出が詰まった家を処分したくない、という気持ちは理解できますが、空き家のまま放置することは様々なリスクが伴います。

空き家を放置するリスクとは、どのようなものでしょうか。

●固定資産税が増加するリスク

住んでいなくても、所有する物件には固定資産税を払う義務があります。これだけでも負担ですが、納税していれば良いというものでもありません。

空き家は、長期間放置していると建物の劣化が進み、知らぬ間に倒壊寸前になっていたということもあります。崩壊の危険があるような周囲に悪影響がある家屋は、地方自治体から「特定空家」に指定される可能性があります。

特定空家に指定されると、固定資産税の軽減措置適用外となり、固定資産税が一気に6倍になるため注意が必要です。

●犯罪リスク

空き家に犯罪者が不法侵入する、不法投棄や放火による火災が起こるなど、犯罪に利用される可能性があります。

●近隣住民のリスク

雑草が生い茂り、樹木が隣家の敷地に伸びて迷惑をかけたり、野生動物が棲みついてしまうことがあります。

また、害虫や悪臭が発生して、近隣住民に迷惑をかけることもあります。

●メンテナンスや維持費の発生

こうしたリスクを回避するためには、家の劣化が進まないよう定期的にメンテナンスを行わなければなりません。

家は換気不足によって湿気がたまると腐食が進みやすくなるため、誰かが定期的に足を運んで管理する必要があります。遠方であれば頻繁には行けないため、代理業者などに依頼する費用が発生します。

屋根や外壁の劣化、投石によりガラスが割られていないかなどを定期的に点検するだけでなく、劣化が進んだ場合は改修工事も必要です。

【解決策】
実家を相続する可能性が高い相続人は、空き家リスクを防ぐために予め対応策を考えておくことが肝心です。

対応策には、以下のような方法があります。
・売却する
・貸し出す
・管理会社に管理を依頼する
・家族で定期的に管理する
・家族で住む

実家が人口の少ない地方都市にある場合は、売却しようにも思うように買い手が見つからない可能性があります。仲介による売却が難しいと思ったら、買取専門の不動産会社に買い取ってもらうという選択もあります。

他人に貸し出す方法は、家賃収入が得られるほか、建物を日常的に使うことでメンテナンス効果も期待できます。地方の家であれば、自治体やNPOなどによる空き家バンク制度の活用がおすすめです。

遠く離れた空き家の維持・管理は、頭で考えるほど簡単ではありません。家族で管理するにも、他人に依頼するにも、精神的または金銭的に大きな負担を感じるでしょう。実家に移り住んでも生活に支障がなければ、今住んでいる自宅を売却して実家に転居する方法も考えられます。

まとめ

相続財産を巡るトラブルは、一般的な家庭にこそ発生しがちです。実際に、遺産分割事件のうち約7割が遺産総額5,000万円以下の案件。円満な家族にも、トラブルの芽は潜んでいるのです。

スムーズに相続手続きを進めるには平等な分割が理想ですが、相続財産の中に不動産が含まれていると、思うようにいかないケースが多々あります。それは、不動産が簡単、かつ平等に分割することが難しい資産だからです。

不動産を平等に分割する3つの方法のうち、換価分割は不動産を売却して得た現金を分配する方法のため、最も平等に分割できる方法といえます。

しかし相続する家に同居家族がいて、居住を継続したいと考えていれば売却することはできません。この場合は相続人の一人が現物で取得し、その価額に応じて他の相続人に現金を支払う代償分割という方法が適していますが、現金を支払う経済的余裕があることが前提です。

こうしたトラブルを回避する最善策は、法的に有効な遺言書による相続です。親が元気なうちに相続について話し合い、家族が納得できるような遺言書を作成してもらうことが一番です。

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不動産相続でよくあるトラブルとは?事例と解決策を徹底解説〜その3

札幌手稲店 野口 祥子

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