不動産売却のコツ2026.08.04

遠方在住の兄弟で実家売却の意見が割れたら?代表者を立てる「委任状売却」の手順

ご両親が亡くなり、実家を兄弟で相続したものの「離れた場所に住んでいて現地に行けない」「売却したいけれど、兄弟で意見が噛み合わない」とお困りではありませんか。

特に兄弟それぞれが北海道外や離れた地域に暮らしている場合、全員が集まって売却手続きを進めるのは容易ではありません。さらに、売却に対する温度差や意見の食い違いがあると、手続き自体が中断してしまうこともあります。

このような場面で役立つのが、兄弟の中から代表者1人を決め、権限をまとめて手続きを進める「委任状売却(代理人による売却)」です。

本記事では、遠方在住の兄弟で意見が割れたときの対処法をはじめ、代表者を立てて売却を進める「委任状売却」の具体的な手順や注意点、トラブルを防ぐためのポイントを分かりやすく解説します。

 

遠方在住の兄弟で実家売却の意見が割れる理由と対処法

兄弟それぞれが遠方に住んでいると、実家の売却をめぐって意見が対立しやすくなります。まずは、なぜ意見が割れてしまうのか、その原因と解決に向けた対処法を整理してみましょう。

意見が割れる3つの主な原因

  • 実家に対する思い入れの違い

「思い出が詰まった実家を残したい」と考える兄弟と、「誰も住まないなら早く売却したい」と考える兄弟で、感情的な対立が生じることがあります。

  • 将来的な維持管理コストへの意識差

実家を所有し続けると、固定資産税や都市計画税、庭木の剪定や建物の修繕費などの維持費がかかり続けます。また、放置された空き家は老朽化による崩落や不審者の侵入といったリスクも高まります。現地近くに住んでいないからこそ、維持管理の負担を実感しにくいケースもあります。

  • 売却手続きの手間や時間的ゆとりの差

仕事や子育てで忙しく「手続きに関わっている時間がない」という人と、「早く現金化して分け合いたい」という人で熱量に差が出ることがあります。

意見をまとめるための対話のコツ

意見が割れたときは、感情論ではなく「現実的な数値」をもとに話し合うことが大切です。

年間に発生する固定資産税や維持管理費用を算出し、「所有し続けた場合に年間いくらの赤字になるか」を共有しましょう。また、不動産会社に依頼して査定価格を出してもらい、「現状で売却したらいくらになるか」を把握することで、具体的な検討が進みやすくなります。

共有名義になっている実家を売却するには、共有名義人全員の同意が必要です。誰か1人でも反対している状態では売却手続きを進めることができないため、粘り強い話し合いで全員の納得を得ることが前提となります。

 

代理人を立てて売却を進める「委任状売却」とは?

全員の同意が得られた後、次に課題となるのが「遠方に住む兄弟全員が契約や手続きに立ち会えるか」という点です。そこで活用されるのが「委任状売却」です。

委任状売却の仕組み

不動産取引は原則として所有者本人が立ち会って契約を行います。しかし、全員が毎回現地に集まるのは金銭的・時間的な負担が大きいのが実情です。

委任状売却とは、ほかの共有名義人(委任者)が代表者(代理人)に対して「不動産の売却手続きを行う権限」を委任状によって与え、代表者1人が窓口となって売却手続きを進める方法です。

代理人が行う契約行為は、委任した本人たちが契約を行ったのと同じ法的効力を持ちます。そのため、信頼できる兄弟の1人を代表者に選び、委任状を交付して手続きを一任することで、全員が何度も現地へ足を運ぶ手間を省くことができます。

 

代表者を立てて進める「委任状売却」の5ステップ

代表者を選んで委任状売却を進める際の手順を5つのステップで解説します。

ステップ1:不動産の名義を「相続登記」する

売却をはじめる前に、亡くなったご両親の名義になっている実家を、相続人の名義へ変更する「相続登記」を行います。遺産分割協議を行い、兄弟全員の共有名義にして売却を進めることを決定します。

なお、相続登記の手続きは義務化されており、不動産を取得したと知った日から3年以内に申請を行わないと過料の対象となる可能性があるため注意が必要です。

ステップ2:代表者(代理人)の選定と売却条件の共有

兄弟の中から売却手続きの窓口となる代表者を1人選定します。実家の近くに住んでいる兄弟や、連絡がスムーズに取りやすい人物を選ぶのが一般的です。

この段階で、「いくら以上なら売却を承諾するか(最低売却価格)」「手付金の額」「いつ頃までに引き渡したいか」といった具体的な売却条件について、兄弟間で事前にしっかり合意形成を行っておくことが重要です。

ステップ3:不動産会社へ査定依頼・媒介契約の締結

代表者が中心となって現地周辺の不動産会社へ査定を依頼します。査定結果や提案内容を兄弟全員に報告・共有した上で依頼する不動産会社を選び、媒介契約(売却を依頼する契約)を結びます。

媒介契約手続き自体も、遠方の兄弟へ契約書を郵送して署名捺印をもらう形で進めることができます。

ステップ4:委任状の作成と必要書類の準備

売買契約の前に、代表者以外の兄弟(委任者)が委任状を作成します。委任状には決まった様式はありませんが、トラブルを防ぐために記載すべき必須項目が存在します。

【委任状に記載する主な項目】

  • 代理人の住所・氏名
  • 委任する不動産の表示(所在、地番、構造など)
  • 委任する権限の範囲(売買契約の締結、手付金受領など)
  • 売却条件(売却価格、引き渡し時期など)
  • 委任状の有効期限
  • 日付および委任者(兄弟)の住所・氏名・実印の押印

委任状に加えて、委任者本人の「印鑑証明書」や「住民票」などの提出が必要となります。

ステップ5:売買契約・決済・引き渡し・代金の分配

買主が決まったら、代表者が買主および不動産会社と売買契約を結びます。その後、決済・引き渡しの手続きを行い、売買代金を受領します。

売却にかかった諸費用(不動産会社の仲介手数料や登記費用など)を差し引いた後の手残り金を、あらかじめ決めた相続割合(持分割合)に応じて兄弟全員に分配して完了です。

 

委任状売却でトラブルを防ぐための重要チェックポイント

代理人を立てる売却は非常に便利な反面、大きな金額が動くため、兄弟間の信頼関係が崩れてしまうリスクもはらんでいます。以下の点に注意して進めましょう。

1.白紙委任状は絶対に避ける

売却価格や委任範囲が空欄になった「白紙委任状」を渡すことは、絶対に避けてください。任された代理人が意図しない低価格で勝手に売買契約を結んでしまうなど、トラブルのもとになります。条件面は必ず明確に記載し、文末には改ざん防止の記載を行いましょう。

2.進捗状況をこまめに共有する

代表者に手続きを任せきりにするのではなく、内覧の状況や買主からの希望価格などをメッセージアプリや電話でこまめに連絡し合える環境を作りましょう。契約当日に委任状に書いていない条件変更が発生した場合に備え、すぐに連絡がつく状態にしておくことも必須です。

3.判断能力に問題がないか確認する

委任状を作成する時点で、委任者(兄弟)に認知症などによる判断能力の低下がある場合、作成された委任状は法的に無効となります。その場合は「成年後見制度」を利用して法定代理人を立てる手続きが必要となるため注意してください。

 

不動産売却における2つの売却手法「仲介販売」と「買取」

不動産会社を通じて実家を売却する場合、「仲介販売」と「買取」という2つの手法があります。それぞれの特徴を整理しておきましょう。

「仲介販売」は不動産会社が買主を探す手法で、市場相場に近い価格で売却できる可能性があります。ただし、不動産会社の査定額はあくまで売却予想価格であり、査定額の通りに売れるとは限りません。売却完了までに数か月以上の時間がかかる場合もあります。

一方、「買取」は不動産会社が直接物件を買い取る手法です。買主を探す期間が不要なため迅速に現金化でき、残置物の処分を任せられるメリットがありますが、売却価格は仲介販売より低くなる傾向があります。

 

知っておきたい実家売却時の費用と税金の知識

実家を売却した後は、売買代金がそのまま手元に残るわけではありません。かかった費用や税金を計算し、正しく確定申告を行う必要があります。

売却手続きにかかる費用

  • 仲介手数料:仲介販売で成約した場合に不動産会社へ支払う成功報酬(上限額が法律で規定されています)。
  • 印紙税:売買契約書に貼り付ける収入印紙代。
  • 登記費用:相続登記や既存の抵当権抹消などを司法書士へ依頼する費用。

売却益(譲渡所得)にかかる税金と控除の特例

実家を売却して購入時の金額や費用を上回る利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税および住民税が課税されます。

ただし、相続した空き家を売却した場合には、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が利用できる可能性があります。特例を活用できれば、大幅な節税につながります。

※なお、税制の適用要件や具体的な税額計算、名義変更に伴う登記手続きなどの詳細については、個別の状況によって異なります。手続きを進める際は、あらかじめ税理士や司法書士などの専門家へご相談ください。

 

まとめ

兄弟間での合意形成と数値に基づく話し合いが第一歩

実家の維持管理にかかる将来の費用や不動産会社の査定額など、具体的なデータや数値をもとに話し合いを行い、全員が納得した上で売却を進めることが重要です。

委任状売却で代表者を立てれば現地へ行かずに手続き可能

信頼できる兄弟を代表者に選んで委任状売却を行えば、遠方に住む兄弟全員が現地へ集まることなく、スムーズに売買契約や引き渡しを完結できます。

実家の状況に合わせて仲介販売と買取を使い分ける

高値での売却を目指すなら仲介販売、遠方で管理の手間を抑えて早期の手放しを優先するなら買取など、物件の状態や目的に合わせて適切な手法を選びましょう。

 

北海道にある実家の売却や管理でお困りなら、まずは地元の不動産会社へ相談してみませんか。北章宅建では、遠方にお住まいの方からのご相談や無料査定を随時承っております。

 

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遠方在住の兄弟で実家売却の意見が割れたら?代表者を立てる「委任状売却」の手順

北章宅建本社 福岡 忍

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