土地や空き家のこと2021.08.28
市街化調整区域の家や土地は売れない?注意点や売却方法を徹底解説〜その1
売却したくてもなかなか売れない不動産の一つに、「市街化調整区域内の物件」があります。売れないとは言い切れませんが、売れにくいのは事実。「市街化調整区域」とは、都市計画法で市街化を抑制している区域のことで、都市部の農村地帯に多く指定されています。
不動産の価格は利便性の高さが大きく影響するため、市街地から離れた郊外や田舎の物件は、どうしても安くなります。さらに市街化調整区域の場合は開発や建築が制限されているため、買主にとって不都合なことが多いのも難点。活用のしづらさも、不動産価格を下げる要因になっています。
「今の時点で家が建っているなら問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、第三者へ売却するにしても、買主が新築やリフォームを希望する場合でも、全て事前に役所の許可が必要で、認められるかどうかは審査次第なのです。
市街化調整区域の不動産が売れにくい理由や、売るためにはどうすれば良いのかについて、具体的に解説していきましょう。
市街化調整区域が売れにくい理由とは
都市計画法では、無秩序な宅地開発を防止し、計画的な市街化を図る必要がある時には、都市計画に「市街化区域」と「市街化調整区域」の区域区分を定められるとしています。そのうち「市街化を抑制すべき区域」として定義されているのが、市街化調整区域です(都市計画法第7条)。
これらの区域区分は行政が決定し、都市計画の見直しによって変更されることもあります。
建物に対する制限がある
市街化調整区域は、市街化を抑制し、農地や自然環境を守る目的で定められた区域です。そのため、この区域で家を建てるには自治体の許可が必要で、建て替えも同様です。原則として、都市計画法に適合する建築物以外は認められないなど、様々な法律上の制限があり、不動産価格に影響します。
自治体の許可が必要なのは、山林や農地を宅地に転用する開発行為や、すでに建っている家の改築や増築、新築に建て直したりする建築行為です。これらの行為の許可は、誰がどのような用途で土地・建物を使うのか、個別に審査された上で決定します。すでに家が建っているからといって、第三者が誰でも住めるわけではありません。
都市計画法で建築を認められるのは、農業や林業、漁業を営む人々が建てる建物などに限られています(都市計画法の第29条及び法第34条)。
住宅ローンが通りにくい
家や土地を購入する際は、住宅ローンを組むのが一般的。その不動産を担保に借り入れします。
しかし市街化調整区域は建築に様々な制限があるため、必然的に担保価値が低く、住宅ローンが通りにくい傾向があります。理由は、もし滞納が発生して差し押さえても、売りにくいから。金融機関によって判断は異なりますが、市街化調整区域の不動産の住宅ローン融資は、消極的なところが多いといえます。
そのため、不動産の価格は安くても、ある程度自己資金が用意できる買主でなければ審査が通らないこともあります。買い手が限定され、結果として売れにくくなっているのです。
インフラ整備が不十分
市街化を抑制する地域のため、行政は水道・電気・ガスなどのインフラ整備を積極的に行っていません。いずれか整備されていないものがあれば、自分でインフラを引く必要があります。
例えば、上水道はあっても下水道が整備されていなければ、自分で浄化槽を設置しなければなりませんし、電気なども同様です。自己負担でインフラを整える手間や費用、不便さから、敬遠されがちです。
開発や建築の許可を得るのに手間がかかる
先にも触れた通り、市街化調整区域内の土地では、家を建てたり、既存の家のリノベーションなどを勝手に行うことはできません。買主は、自治体に開発許可や建築許可を受けるための申請が必要ですし、申請をしたからといって、必ずしも許可されるとは限りません。
面倒な手続きがあり、しかも許可が得られるかは審査の結果次第。この点も、市街化調整区域の市場価値を下げる要因となっています。需要が少ない不動産だけに売却しづらく、価格が下がりやすい。それが市街化調整区域にある家の現実です。
次回は、市街化調整区域の家や土地を売却するなら、事前に知っておきたい注意点について解説します。