土地や空き家のこと2021.01.19
土地の実勢価格の特徴や調べ方を徹底解説。公示地価や路線価とは何が違う?
所有する不動産の売却を考えた時、まず最初にいくらで売れるのか、相場を調べるはずです。その時、様々なサイトで「実勢価格」という言葉を目にすると思います。
実勢価格とは、「不動産が実際に取引された価格」のこと。他にも公示地価や基準地価など土地取引の指標となる価格があるので、それぞれの意味を知って不動産相場への理解を深めておきましょう。
今回は土地の実勢価格をテーマに、その特徴や調べ方、他の価格との違いについて紹介していきます。
土地の実勢価格とは
「実勢価格」は、土地売買で重要な指標となる価格です。相場に近い金額なので、土地の売買をする際に把握しておく必要があります。
1.実勢価格とは、実際の取引価格
実勢価格とは、実際に市場で売買される取引価格のことで、過去の取引実績を元に算出されます。
周辺の土地の資産価値を測る参考指標になりますし、不動産会社が土地価格を算出する際にも実勢価格が用いられます。
需給バランスによって変動する時価のようなものなので、土地に需要があれば高騰し、市場の取引価格も高値が期待できます。
ただし、実勢価格はあくまで過去取引の平均的な価格。年数が経つと地価が大きく変わっている可能性があるほか、土地の形状や方角など、条件によって価格に差が出ることも少なくありません。目安にはなりますが、将来の取引価格を約束するものではない、という点に注意してください。
なお、SUUMOやHOME’Sなどの不動産ポータルサイトで確認できるのは、売主が設定した販売価格です。そこから値引きが行われることもあるので、実勢価格とは異なります。
2.国土交通省のデータベースで調べる
土地の実勢価格を調べる最も代表的な方法が、国土交通省が公開している「土地総合情報システム」を使う方法です。地域を指定して過去の取引事例を調べることが可能です。
土地総合情報システムでは、以下のような項目を確認可能です。
・地域 ・最寄駅 ・取引額
・坪単価 ・面積 ・前面道路
・都市計画 ・建ぺい率 ・容積率
・取引時期
土地の実勢価格を調べる方法は、他にもあります。
3.レインズで調べる
「レインズ」は、全国の物件情報が掲載されている宅建業者専用のシステムです。宅建業者しか閲覧できませんが、「レインズマーケットインフォメーション」という一般向けに過去の成約情報を公開しているサイトなら、11万件以上(2020年3月時点)の取引情報を検索できます。
リアルタイムに更新されている訳ではありませんが、調べたい土地周辺の過去の取引情報から、実勢価格を導き出すことは可能です。
4.不動産会社に査定してもらう
不動産会社に依頼して査定を算出してもらうこともできます。
査定額は「売れることを保証する金額」ではありませんが、周辺相場を基に、その土地固有の要素を加味してくれるので、より適正な土地の価格を知ることができます。
一括査定サイトを活用すると複数の不動産会社の査定額を一度に比較できるので、相場価格との妥当性も確認できるので便利です。
紹介した3つの方法は、いずれも無料で利用できます。
国・都道府県が公表している3つの土地価格
実勢価格を調べると、そのサイトの中には他にも「公示地価」「基準地価」「路線価」という言葉が出てくると思います。
これらはいずれも公的機関が公表している土地の値段ですが、実際に取引された価格である実勢価格とは異なります。
この3つの指標の性質と役割をみていきましょう。
①公示地価とは
公示地価とは、国が調べた土地価格の目安です。
調査方法は、全国で選定された2万6,000地点以上の「標準地」を、1月1日時点を基準日として1地点につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定します。その価格を国土交通省土地鑑定委員会が審査し、毎年3月下旬に発表しています。
公共事業のための用地取得の際は、この価格が算定基準になっており、一般的に公示地価のおよそ1.1〜1.2倍が実勢価格になると言われています。
地価を公示する目的は、「一般の土地の取引価格に対して指標を与え、適正な地価の形成に役立てるため」。土地の価格が異常に高騰すると、国民経済へ悪影響を与えたり、公共事業を進める際の妨げにもなりかねないからです。
公示地価は、国土交通省のサイトにある「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」から調べることができます。公示される際には、住宅地、商業地、宅地見込地、準工業地、工業地、市街化調整区域内宅地、市街化調整区域内林地に分類され、毎年同じ地点の価格が公示されるため、地価変動が分かりやすいのが特徴です。
なお、公示地価の調査地点は「都市やその周辺地域」に限定されています。そのため都市周辺以外の地価は、次に説明する「基準地価」で知る必要があります。
②基準地価とは
基準地価は、都道府県が選んだ基準地1㎡あたりの価格のことです。
調査主体は都道府県です。調査時期は毎年7月1日で、全国2万地点以上の基準地を1地点につき1人以上の不動産鑑定士が鑑定を行って評価し、9月下旬に発表されます。
目的は、公示地価と同じく適正な土地価格の形成。ただし公示地価のように「都市やその周辺地域」という縛りがないため、都市周辺以外の地域の地価がわかるのが特徴です。
基準地価も、国土交通省の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で調べることができます。
③路線価とは
路線価は、道路に面する土地1㎡あたりの価格のことです。
調査主体は国税庁で、毎年1月1日時点の評価が7月1日に公表されます。公示地価や実勢価格、不動産鑑定士等による鑑定評価価額などを基にして決められます。
税金の算出基準となるのが路線価の特徴・役割なので、土地の価格を知る指標としてはあまり使われません。
なお、通常「路線価」と言う場合は国税庁が公表している「相続税路線価」を指すのが一般的で、贈与税や相続税の算出基準になります。
一方、市町村(東京都の場合は都)が固定資産税や都市計画税、不動産取得税や登録免許税を算出する際に使用する路線価は「固定資産税路線価」と呼ばれます。
どちらも公示地価と連動しており、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度です。
路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることができます。
実勢価格と国や自治体が公表する地価の違い
公示地価・基準地価・路線価と実勢価格では、価格の持つ役割や算出方法、更新スピードなどが異なります。
それぞれの違いを把握すれば、価格を適切に活用できるようになります。
①国や自治体の出す価格は目安
公示地価や基準地価など、国や自治体が出す価格はあくまでも「目安」。市場の取引価格とは差があります。
所有する土地のおおよその評価額を知る指標にはなりますが、実際の取引価格とは差が出ることを理解しておきましょう。
ただし例外として、取引事例が少ない地方の不動産売買では、基準地価や路線価が査定に用いられるケースもあります。
②実勢価格は実際の取引価格
土地を売買する際、必ず確認しておきたいのが実勢価格です。
実際の取引価格を基に算出した価格なので、市場価格に非常に近く、公的機関が公表している価格よりも売買時の参考になります。
実勢価格の調べ方は、先に紹介した通り3つの方法が代表的なので、やりやすい方法で調べましょう。
③最新の地価を知るなら実勢価格
国や自治体が公表する公示地価や基準地価、路線価は、調査から発表までに数カ月かかります。
調査する時期と発表する時期をおさらいしましょう。
〈公示地価〉
評価時期:毎年1月1日時点/発表時期:毎年3月下旬
〈基準地価〉
評価時期:毎年7月1日時点/発表時期:毎年9月下旬
〈路線価〉
評価時期:毎年1月1日時点/発表時期:毎年7月1日
ここから分かる通り、評価時期と発表時期の間には最低でも2カ月以上のタイムラグが発生しています。
一方、実勢価格は過去の取引価格を基にした平均価格のためすぐに価格更新され、リアルタイムで確認できます。
実勢価格と他の地価では、これだけ更新・確認できるスピードが異なることを覚えておきましょう。
まとめ
今回は土地の実勢価格の特徴や調べ方のほか、国や自治体が公表する地価の指標について紹介しました。
土地の売買には非常に大きなお金が動きます。
適切な価格で土地を売買するためには、公示地価、基準地価、路線価、実勢価格、それぞれの役割の違いをしっかり把握して、知識を頭に入れてから進めるようにしましょう。
北章宅建では、土地売買のお手伝いもしております。査定はもちろん、何かお困りのことがあればいつでもお気軽にご相談ください。