ローンやお金のこと2025.06.05
不動産売却の税金は短期・長期で変わる?譲渡所得の違いや仕組みを解説
こんにちは。イエステーション北章宅建 滝川店の上家です。
不動産売却を検討されている方の中には、「所有期間によって税額が変わると聞いたけれど、どう違うの?」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、不動産売却によって発生する所得(譲渡所得)は、所有期間の長さに応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられ、課税される税率が大きく異なります。
そこで今回は、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の違いや仕組み、計算方法、節税につながる可能性のある特例などについて、わかりやすく解説いたします。
適切な知識を身につけることで、不動産売却時の税負担を軽減できる可能性がありますので、ぜひ最後までご覧ください。
不動産売却時の譲渡所得には短期と長期がある
「不動産を売却すると、利益に対して税金がかかる」と聞いて、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
このときに課されるのが「譲渡所得税」と呼ばれる税金です。
以下の3つの税金で構成されています。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
なお、復興特別所得税(所得税額の2.1%相当額)は、東日本大震災からの復興を目的とした時限的な税金です。
平成25年(2013年)1月1日から令和19年(2037年)12月31日までの間、課税が予定されています。
この譲渡所得税のもととなる「譲渡所得」とは、不動産を売却して得た利益のことです。
具体的には、売却価格から「取得費」や「譲渡費用(売却にかかった諸経費)」を差し引いた金額が譲渡所得となり、課税対象になります。
さらに、譲渡所得は、不動産の所有期間に応じて「短期」と「長期」の2種類に分類され、それぞれに異なる税率が適用されます。
また、不動産の譲渡所得税は「分離課税」方式が採用されており、給与所得や事業所得などの他の所得とは別に計算・課税される仕組みになっている点も特徴の一つです。
分離課税の仕組みや申告の流れについては、「不動産売却の分離課税とは?計算方法と申告方法も確認」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
不動産売却の「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」は何が違う?
不動産の譲渡所得には、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類があります。
ここでは、その違いを理解する上で重要な「所有期間」と「税率」の2点にしぼって、わかりやすく整理していきましょう。
所有期間の違い
不動産の所有期間が「5年以下」か「5年超」かによって、譲渡所得の区分が決まります。
- 短期譲渡所得:所有期間が5年以下の不動産を売却して得た所得
- 長期譲渡所得:所有期間が5年を超える不動産を売却して得た所得
注意すべきは、「売却した日」ではなく「その年の1月1日時点」での所有期間で判断される点です。
例えば、2019年8月に取得した不動産を2025年12月に売却する場合、2025年1月1日時点では5年未満のため、「短期譲渡所得」として扱われます。
適用される税率の違い
不動産売却で発生する譲渡所得には、所有期間の長短に応じて、以下のように異なる税率が適用されます。
【短期譲渡所得(所有期間5年以下)】
- 所得税:30%
- 住民税:9%
- 復興特別所得税:0.63%(30%×2.1%)
- 合計:39.63%
【長期譲渡所得(所有期間5年超)】
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(15%×2.1%)
- 合計:20.315%
このように、短期譲渡所得と長期譲渡所得では、およそ2倍の税率差があります。
不動産売却のタイミング次第では、納税額が大きく変わる可能性があるのです。
売却を検討する際には、事前に「所有期間の起算点」 を確認しておくことが大切です。
不動産売却時に発生する「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」の求め方
不動産売却によって得た利益が「譲渡所得」として課税されることは理解していても、「実際にどうやって計算するのだろうか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
ここでは、譲渡所得の基本的な計算式や、項目ごとの具体的な内容をわかりやすく解説します。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は、以下のように算出されます。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 譲渡価額:土地や建物の売却価格
- 取得費:購入代金や取得時の諸費用
- 譲渡費用:売却のためにかかった費用
この式は、短期譲渡所得・長期譲渡所得どちらにも共通します。
取得費とは?
取得費とは、物件を取得するためにかかった費用の合計です。
主に以下のような項目が該当します。
- 購入代金(建物・土地)
- 仲介手数料や登記費用などの購入時の諸経費
- 改良工事にかかった費用(増築・リフォームなど)
なお、建物を含む場合は、購入代金から「減価償却費」を差し引く必要がある点に注意が必要です。
減価償却の計算は、建物の構造や築年数によって異なるため、詳しくは国税庁の公式サイトをご参照ください。
国税庁:「No.3261 建物の取得費の計算」
また、取得費が不明な場合は、概算取得費として「譲渡価格の5%」を取得費として用いることも認められています。
ただし、概算取得費を使うと実際の取得費より少なくなるケースも多く、結果として税負担が大きくなる可能性もあるため、事前に内容を把握しておくことが大切です。
概算取得費については、下記のコラムで解説しています。
不動産の取得費が不明な場合はどうする? 算出方法と注意点を紹介
譲渡費用とは?
譲渡費用とは、売却のために直接かかった費用のことです。
以下が代表例です。
- 不動産会社への仲介手数料
- 契約書に貼付する印紙税
- 所有権移転登記にかかる費用
- 測量費用
- 建物の解体費用(更地にして売却した場合) など
「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」の計算例
では、例を挙げて短期と長期それぞれの譲渡所得を計算してみましょう。
【前提条件】
- 売却価格:4,000万円
- 取得費:2,800万円(減価償却後)
- 譲渡費用:150万円
譲渡所得 = 4,000万円 −(2,800万円 + 150万円)= 1,050万円
【短期譲渡所得の場合(税率:約39.63%)】
- 所得税(30%):1,050万円 × 30% = 315万円
- 住民税(9%):1,050万円 × 9% = 94万5,000円
- 復興特別所得税(0.63%):1,050万円 × 0.63% = 6万6,150円
- 合計税額:約416万1,150円
【長期譲渡所得の場合(税率:約20.315%)】
- 所得税(15%):1,050万円 × 15% = 157万5,000円
- 住民税(5%):1,050万円 × 5% = 52万5,000円
- 復興特別所得税(0.315%):1,050万円 × 0.315% = 3万3,075円
- 合計税額:約213万3,075円
同じ譲渡所得でも、短期か長期かによって税額が約200万円も違ってくることがわかります。
売却タイミングを検討する際、所有期間の確認は大きな判断材料になります。
なお、譲渡所得税については、「不動産売却時の譲渡所得税とは?仕組みや計算方法など詳しく解説」でも詳しく紹介していますので、あわせてお役立てください。
不動産売却時の譲渡所得は節税できる?
譲渡所得は、一定の条件を満たすことで適用できる特例制度があり、これらを活用することで
税負担を軽減することが可能です。
ここでは、不動産売却時によく活用される代表的な特例を簡単にご紹介します。
①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
この特例は、短期譲渡所得・長期譲渡所得を問わず適用可能で、マイホーム売却時に多くの方が利用できる節税策として、最も利用頻度の高い制度の一つです。
出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
②マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合は、3,000万円の特別控除を適用した上で、さらに軽減税率の特例を使える可能性があります。
この制度では、通常の長期譲渡所得の税率(20.315%)よりも、さらに低い税率が適用されるため、大幅な節税が期待できます。
出典:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
③マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
新たなマイホームに買い換えた際に、売却によって譲渡損失が発生した場合は、その損失を他の所得(給与所得や事業所得など)と相殺(損益通算)できる特例があります。
また、控除しきれなかった損失分は、翌年以降3年間まで繰り越して控除することが可能です。
出典:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」
特例の利用には確定申告が必要
なお、特例制度を利用するには、確定申告が必要です。
いずれの特例にも適用要件があるため、「自分のケースが対象になるのか」「複数の特例は併用できるのか」などについては、事前に不動産会社や税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。
不動産売却時の税金の種類や納税タイミングについては、「不動産売却の税金はいつ払う?種類や支払いのタイミングを解説」でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
●不動産売却時の譲渡所得には短期と長期の区分がある
不動産売却で得た利益は譲渡所得として課税対象となり、所有期間によって短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分されます。
●不動産売却時の譲渡所得は短期と長期で税率が大きく異なる
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の税率は約39.6%、長期譲渡所得(所有期間5年超)は約20.3%と、2倍近い差があります。
所有期間の判定は売却年の1月1日時点で行われるため、売却タイミングの見極めが重要です。
●不動産売却時の譲渡所得の計算方法を理解しておこう
譲渡所得は「譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)」で計算されます。
建物が含まれる場合の減価償却費や、取得費が不明な場合の概算取得費の扱いなど、実務上の注意点も押さえておくことが大切です。
正確な計算には、専門家の助言を受けるのが安心です。
●不動産売却時には、特例制度を活用して節税対策を行うのがおすすめ
3,000万円特別控除や軽減税率の特例など、さまざまな節税制度があります。
これらの制度を利用する際には、確定申告が必要です。
適用要件を満たしているかを事前に確認し、不安がある場合は不動産会社や税理士といった専門家に相談することをおすすめします。
北章宅建は、不動産に関するご相談を全て無料で対応しています。
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著者

滝川店 上家 郁也スポーツ全般が大好きで、サッカー、バスケット他いろいろな競技を行ってきました。体力とチームワークには自信があります。お客様満足を目指して、精一杯対応致します。又、以前は別会社で賃貸仲介業務に携わっていました。 売却、購入ともに、ご提案の際には実際の賃貸との比較など、経験を生かしたご提案をさせていただきますので、どうぞ宜しくお願いします。
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