近年では、ファミリー層だけでなく独身でも住宅ローンを組む人が増えています。背景には、独身者の割合が増えていることや、将来のため資産として住宅を購入する人が増えたことなどが考えられます。

とはいえ、「独身者は住宅ローンの審査が厳しそう」と不安や疑問を持っている人も少なくありません。実際はどうなのか、独身で住宅ローンを組む場合に知っておきたい審査のポイント、さらに結婚した場合の注意点を2回に分けて徹底解説します。

住宅ローンの審査ポイントとは

独身者が住宅ローンを組む時も借入審査は既婚者同様に行われ、独身というだけで審査が厳しくなったり落ちたりすることはありません。では、実際に住宅ローン審査で重視されるのは、どのような項目なのでしょうか。

金融機関が重視する審査項目

国土交通省の令和3年度「民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、9割以上の機関が、融資を行う際に考慮するのは以下の審査項目であると回答しています（回答機関数1,095）。
・完済時年齢……98.9％
・健康状態……98.5％
・担保評価……97.6％
・借入時年齢……97.1％
・年収……95.0％
・勤続年数……94.5％
・連帯保証……94.5％

なお、審査項目に「家族構成」を挙げた機関は21.9％、「性別」は16.4％にとどまっており、重視されるのは年齢や返済能力であることが分かります。それぞれの具体的なポイントを見てみましょう。

【完済時年齢】
約99％の金融機関が審査項目として重視しているのが、完済時年齢です。その多くは「80歳未満の完済」を基準にしており、借入時の年齢が高いと、返済期間や融資額が縮小されるなど審査で不利になる可能性があります。

【年収】
年収は、住宅ローン審査の重要な項目の一つ。ただ単純に年収がいくらなのかというよりも、年収に占める1年間の返済額の割合、つまり「返済負担率」の割合で判断されます。返済負担率は次の計算式で求められます。

『年間返済額÷年収×100＝返済負担率（％）』

無理のない返済負担率の目安は、一般的に「25％以下」と言われています。例えば年収400万円の場合、無理なく返済できる額は「400万円×25％＝100万円」で年間100万円という計算です。

これは無理のない返済比率の一例であり、30％以上でも認めている金融機関は多数あります。金融機関によって返済負担率の基準は異なりますので、「○％なら審査に通る」とは言えません。

ここで特に注意したいのは、「年間返済額」には住宅ローン以外のローン返済額も含まれるという点です。例えば自動車のローンや教育ローン、クレジットカードのリボ払いやキャッシングなど、他の借入も合算しなければなりません。年間返済額100万円の人が、マイカーローンで年30万返済している場合は、住宅ローンは年70万円が上限となります。

中にはこうしたローンの存在によって審査に落ちてしまうケースもあります。比較的若い方の中には、返済中の奨学金があるという人もいるでしょう。これも年間返済額に含まれますので気をつけましょう。

【勤続年数】
住宅ローン審査では、安定した返済能力があるかどうかが見られます。その判断基準の一つとなるのが勤続年数です。勤続年数が短いとすぐに辞めてしまう可能性があると考えられるためです。

この調査結果では、審査に必要な勤続年数を「1年以上」と回答した金融機関は全体の59％を占め、次いで「3年以上」が18％、「2年以上」が5％と続きます。住宅ローン融資を受けるためには、少なくとも勤務して1年以上経ってから申し込むようにしましょう。

【健康状態】
健康状態が重視されるのは、長期間安定した収入を維持できるかを見極めるためです。また、住宅ローンを利用する際は、ほとんどの金融機関で団体信用生命保険（団信※）への加入を義務付けており、健康状態が理由で加入できないと住宅ローンも利用できません。ただし、フラット35については、団信の加入を条件としていません。

※団信…住宅ローンの返済中に万が一のことがあった場合、保険会社が代わりに残債を金融機関へ返済する保険

【担保評価】
担保評価とは、購入する住宅の金銭的な価値のことです。住宅ローンの返済期間中に、もし途中で払えなくなってしまったら、住まいを担保に債務を解消することになります。そのため、住宅自体の価値が審査で重視されるのです。

担保評価が低すぎると、住宅ローンの審査に通らないこともあります。特に再建築不可物件や違法建築の場合は、審査に通ることはほぼありません。中古物件を購入する際は、適法性をしっかりチェックしておきましょう。

次回は、独身で住宅ローンを組む時の注意点について、具体的に解説します。