税金のこと2024.09.18
年金受給者が不動産売却したら支給額に影響する?税金や注意点も解説
こんにちは。イエステーション北章宅建 札幌北店の蛸星です。
「年金受給者が不動産売却すると支給額が減額されると聞いたが、本当だろうか」とご心配ではありませんか?
売却益を得ると年金の受取額が変わるのではと、不動産売却をためらう方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回のコラムでは、年金受給者が不動産売却をしたら支給額に影響するのか、という点に焦点を当てて、解説していきます。
売却時にかかる税金や注意点もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
年金受給者が不動産売却する際に支給額は減額される?
結論から言いますと、年金を受給されている方が不動産を売却しても、基本的に年金支給額が減額されることはありません。
理由としては、国民年金、厚生年金といった老齢年金の支給額は、現役で働いていた時代に支払った保険料に基づいて決定される仕組みだからです。
例えば、長年高い給与で働き、多くの保険料を納めた人は、より多くの年金を受け取れますし、低賃金で働いていたり、保険料の納付期間が短かったりした場合は、年金額が少なくなる傾向があります。
「現役で働いていた時代」という条件ゆえ、60歳以上の方が年金を受給しながら会社などで働き続ける場合に適用される「在職老齢年金」の場合はどうなのだろう、とご心配の方もいらっしゃるかもしれませんね。
在職老齢年金についても同様で、給与やボーナスによって減額される可能性はあっても、不動産の売却益で減額判定されることはないのです。
年金受給者の不動産売却時にかかる税金
支給額の減額は基本的にないものの「収入が減る可能性」としては、不動産売却によって、税金の支払いが発生するケースがあります。
具体的には、次の4つの税金の負担が想定されます。
- 不動産売買契約書の作成 → 印紙税
- 仲介手数料の支払い → 消費税
- 抵当権抹消登記の手続き → 登録免許税
- 売却の利益「譲渡所得」の発生 → 譲渡所得税(所得税・住民税)
ここでは、譲渡所得税について、概要や計算方法をご紹介していきます。
その他の税金については、「不動産売却の税金はいつ払う?種類や支払いのタイミングを解説」で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご参考にしてください。
譲渡所得税とは
先に触れた通り、譲渡所得税とは、譲渡所得が発生した場合にかかる税金です。
譲渡所得とは、「売却代金」から「不動産の取得・売却にかかった費用」を差し引いた後、残った金額を指します。
譲渡所得に税率を乗じ、算出したものが譲渡所得税額となります。
内訳としては所得税と住民税から成り、所得税には平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までの間、復興特別所得税(所得税の2.1%相当額)が含まれます。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得に乗じる税率は、物件の所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」と、5年以下の「短期譲渡所得」の2パターンがあります。
<長期譲渡所得(5年超)>
- 所得税:15%
- 復興特別所得税(※):0.315%(15%×2.1%)
- 住民税:5%
<短期譲渡所得(5年以下)>
- 所得税:30%
- 復興特別所得税(※):0.63%(30%×2.1%)
- 住民税:9%
所有期間が6年で、譲渡所得金額が500万円の場合は、下記の通り計算できます。
- 所得税(復興特別所得税含む):500万円 × 15.315% = 76万5,750円
- 住民税:500万円 × 5% = 25万円
- 合計譲渡所得税額:76万5,750円 + 25万円 = 101万5,750円
支払うべき譲渡所得税の総額は、101万5,750円となります。
控除の利用で税負担を軽減可能
不動産を売却した際、譲渡所得税を軽減するために利用できる特例がいくつかあり、代表的なものとして「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」が挙げられます。
所有期間の長短にかかわらず、一定条件を満たすことで、最高3,000万円を譲渡所得から控除できる特例です。
そのほか、税負担軽減に効果的な特例もあります。
不動産会社に相談すれば具体的なアドバイスをもらえるでしょう。
年金受給者が不動産売却をする際の注意点
最後に、年金を受給されている方が不動産売却を行い、売却益が発生する場合についてご注意いただきたいポイントを3つご紹介します。
注意点①障害年金は減額・支給停止になる場合がある
基本的に売却益が支給額に影響することはないとお伝えしましたが、なかには例外があります。
障害年金受給者のうち、20歳になる前に障害の原因となる病気・ケガをして初めて医師の診療を受けた方や、生まれつきの障害がある方などは注意が必要です。
受給要件から年金の加入を免除されているため、不動産売却益を得たことで、収入が障害基礎年金の所得制限を超えたとき、年金の減額や支給停止が起こる可能性があります。
売却前に、年金事務所に確認・相談しておくことをおすすめします。
注意点②翌年の住民税・健康保険料が上がる
譲渡所得が生じた場合、下記の税金・健康保険料が上がる可能性があります。
- 翌年の住民税
- 介護保険料
- 国民健康保険料(75歳未満の場合)
- 後期高齢者医療保険料(75歳以上、一定の障害がある場合は65歳以上)
上記の計算は、前年の収入に基づいて行われるからです。
支給額が下がるわけではありませんが、保険料の負担が上がることで、実質的な手取り額が減少する可能性がある点にご注意ください。
住民税や保険料への影響については、下記のコラムで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご参照ください。
不動産売却で住民税が上がる?支払い時期や金額、控除を解説
不動産売却で介護保険料は上がらない場合がほとんど!その理由を解説
注意点③確定申告が必要である
譲渡所得が発生した場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に確定申告を行う必要があります。
申告を怠った場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティを受ける可能性があるため、忘れず行いましょう。
また、先にお伝えした「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」など、特例を利用する際はかならず、確定申告が必要になる点もご留意くださいね。
まとめ
●不動産売却をしても年金支給額は基本的に変わらない
老齢年金の支給額は払込した保険料に基づいて決まるため、不動産の売却益「譲渡所得」を得ても支給額は減額されません。
●年金受給者の不動産売却時にかかる税金
不動産売却時には、印紙税や消費税、登録免許税のほか、譲渡所得発生時に譲渡所得税が課税されます。
控除制度を利用することで、税負担を軽減可能です。
●年金受給者が不動産売却をする際の注意点
障害年金受給者のなかには、収入が増えることで支給額の減額、支給停止される場合があります。
また、住民税や健康保険料は、前年の収入に基づいて計算されるため、翌年の手取り額の減少につながる可能性も。
譲渡所得が発生した場合は、必ず確定申告が必要な点もご留意ください。
北章宅建は、不動産に関するご相談を全て無料で対応しています。
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著者
札幌北店 蛸星 香奈実日々、お客様とのふれあいを通じて、新たな発見ができることを楽しみながら仕事をしています。 ご売却、ご購入に限らず、お住まいでお悩みのことがありましたら何でもご相談ください。 過去の経験や知識を活かし、お客様の希望をかなえられるよう、より良い提案をさせていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。
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