不動産管理コラム
不動産管理のこと2025.06.11
アパート経営はペット可が有利?需要とメリット・デメリットを解説
こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。
近年、空室対策や収益性向上を目的に、ペット可物件への転換を検討するアパートオーナー様が増えています。
「ペット可にすれば本当に入居率が上がるのだろうか」
「トラブルが心配だが実際のところどうなのか」
そんな疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
実際、ペット可物件は適切に運営することで、空室対策として大きな効果を発揮する可能性がありますが、一方でリスクも。
そこで今回は、ペット可物件の需要と供給の現状から、経営上のメリット・デメリット、そして具体的な対策方法まで詳しく解説していきます。
アパート経営で考えたいペット可物件の需要と供給
ペット可物件を検討するにあたり、まず押さえておきたいのは「本当に需要があるのか」「供給は足りているのか」という点です。
ペット可物件の入居ニーズは想像以上
一般社団法人ペットフード協会の「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」によると、2024年時点で、日本国内の犬の飼育世帯数は約514.8万世帯、猫の飼育世帯数は約505.8万世帯にのぼります。
全世帯に対する世帯飼育率は、犬で8.76%、猫で8.61%です。
単純合算では、最大で約1,023万世帯(全世帯の約17.4%)がペット(犬または猫)を飼育している可能性があります。
つまり、日本の約5〜6世帯に1世帯がペット(犬または猫)と暮らしている計算になり、犬・猫以外のペットの種類も考慮すると、アパート経営において「ペット可」の需要は無視できません。
ペット可の物件数はまだまだ少ない
一方で、ペット可物件はまだまだ少数です。
LIFULL HOME’Sが2025年5月に発表した「ペットとの住まい探しの実態調査」によると、住まい探しでペットがいることを理由に不便や困難を感じた人は9割以上にのぼりました。
その背景には、ペット可物件が全体の2割未満にとどまっているという供給不足があります。
このように、高まる入居ニーズと、対応しきれていない供給にギャップがある状況です。
アパート経営において、こうした需給のミスマッチを把握し、「ペット可」を打ち出すことは、空室対策として有効で、差別化にもつながるといえるでしょう。
ペット可の物件の種類とは?
一口に「ペット可」といっても、その内容や対象は物件によってさまざまです。
例えば、以下のような分類が考えられます。
- 小型犬や猫のみ可(中型犬・大型犬は不可)
- 犬はOKだが猫は不可、またはその逆
- 1匹までなど、頭数制限あり
- ペットの種類(爬虫類・鳥類など)に制限あり
- 共有部や移動時にケージ使用必須など、細かい運用ルールあり
このように、ペット可の範囲や条件は物件ごとに異なり、明確な基準づけやルール設定が重要になります。
後のトラブル防止のためには、導入を検討する際、単に「ペット可」にするだけでなく、どのような条件で認めるかを明らかにする必要があるでしょう。
ペット可アパート経営のメリット
ペット可物件への転換は、単なる空室対策にとどまらず、アパート経営にさまざまなメリットをもたらします。
長期入居が期待できる
ペット可物件は依然として少なく、飼育者にとって「今の環境を手放しにくい」という事情があります。
他物件への引越しが難しいため、長期入居につながりやすい点も魅力です。
長く住んでもらえることで、退去時の原状回復や再募集にかかるコストを削減でき、経営の安定化につながります。
専用物件化で入居者間トラブルを未然に防げる
一部の部屋だけをペット可にするのではなく、「全戸ペット可」や「棟ごとの専用化」を行うことで、非飼育者とのトラブルを避けやすくなります。
例えば、ペットの鳴き声や共用部の衛生面をめぐるクレームは、非飼育者との間で起きやすいもの。
最初からペット飼育者のみを入居対象とすることで、価値観の近い入居者同士の安定した環境がつくりやすくなります。
家賃や敷金の設定で収益性を高めやすい
ペット可物件はまだまだ少なく、家賃を1〜2割上乗せしても入居者が見つかるケースが少なくありません。
また、退去時の原状回復に備え、敷金を高めに設定することも可能です。
こうした設定により、通常の賃貸よりも収益性を確保しやすいのが特徴です。
オーナーが有利に交渉を進めやすい
ペット飼育者にとって選択肢は限られているため、「多少高くてもこの物件に住みたい」という心理が働きやすいです。
入居希望者との交渉で家賃の値引き要求が起こりにくく、条件面で譲歩しなくても済むケースが増えるのも、ペット可物件の経営上の強みです。
ペット可アパート経営のデメリットと対策
ペット可物件には多くのメリットがある一方、デメリットや運営上のリスクもあります。
とはいえ、事前に備えておくことで、ほとんどのトラブルは未然に防ぐことが可能です。
デメリット①原状回復費用の増加
ペットによる傷や臭い、毛の付着などで、退去時の清掃や修繕費用が増える可能性があります。
【対策の例】
- 敷金を1〜2カ月分多めに設定
- 退去時の清掃費用を事前に明記(契約書で固定額に)
- ペットによる損耗・汚損は入居者負担とする特約の明文化
これにより、費用面でのリスクをコントロールしやすくなります。
デメリット②近隣住民・入居者間のトラブル
特に「一部の部屋のみペット可」とした場合、鳴き声や共用部の汚れ・臭いがクレームになるリスクがあります。
【対策の例】
- ペット飼育ルールの明文化(頭数・サイズ制限、共用部マナーなど)
- 飼育者限定の住戸設計(棟ごと・階層ごとなどでゾーニング)
- 既存入居者への事前告知と説明
トラブルを未然に防ぐためにも、「誰がどのように飼って良いか」を明確にしておくことが重要です。
また、ペット不可の物件をペット可に変更する場合は、「ペット不可だから入居した」「動物にアレルギーがある」など、既存入居者から反対の声が上がる可能性もあります。
事前に入居者にアンケートを取るなど、ペット可への変更を決める前に対策を行いましょう。
また、中には契約で禁止しているにもかかわらず、入居者が無断でペットを飼育するケースも見られます。
こうした無断飼育への対応方法やリスクについては、「入居者がペットを無断飼育していたら?対応方法や放置するリスク」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
デメリット③クレーム対応や管理の負担増
ペットが絡むクレームは繊細なものも多く、管理体制が整っていないとオーナー自身の負担が増えてしまいます。
【対策の例】
- ペット可物件の管理経験のある不動産会社に管理を委託
- 定期的な巡回やマナー啓発の実施
- 24時間対応の相談窓口の設置(管理会社連携)
こうした仕組みを整えることで、オーナーが全てを抱え込まずに済む体制がつくれます。
デメリット④一度ペット可にすると、戻しにくい
一度ペット化対応にすると、「試してみたけれど、やっぱりやめたい」となっても、契約変更や既存入居者対応のハードルが高くなります。
【対策の例】
- まずは1部屋〜1棟単位で「試験導入」する
- 募集段階で「○○号室のみ可」「条件付きで可」などと明記
- 市場調査・収支シミュレーションを事前に実施
小規模・段階的な導入で様子を見ながら判断することが、安全な運営につながります。
まとめ
●ペット可物件の需要は高い
現状、日本の全世帯のうち、およそ5〜6世帯に1世帯がペットと暮らしている計算となりますが、ペット可物件は全賃貸物件の2割未満にとどまり、供給が追いついていない状況です。
●ペット可アパート経営のメリット
ペット飼育可能という条件は、入居希望者層の拡大や長期入居の促進になり、経営の安定化につながるでしょう。
また、希少性の高さから家賃や敷金の上乗せがしやすく、交渉の場面でもオーナー側が優位に立ちやすくなります。
●ペット可アパート経営のデメリットと対策
原状回復費用の増加や近隣トラブルなどのリスクはあるものの、事前の契約内容の明確化や管理ルールの整備によって多くは予防・対処が可能です。
無断飼育への備えも含めて、慎重な対応が求められます。
北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
著者

小樽駅前店 小幡 将大大学時代は建築学科で住宅について学び、不動産業界に入ってからは住宅の売買はもちろんリフォーム工事に関しても多数携わり、自分自身も数年前中古住宅を購入しました。北海道ならではの住宅の傷みや、気を付けなくてはいけない点など自分の経験を活かしてお客様と一緒に住宅探しを出来れば幸いです。至らない点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
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