不動産管理コラム
不動産管理のこと2026.07.15
アパート経営で個人事業主になるメリット・デメリットは?ポイントも紹介
こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。
「アパート経営を始めるなら、個人事業主として開業すべきなのだろうか」
「個人事業主として開業すると、どんなメリットやデメリットがあるのだろう」
そのような疑問をお持ちではありませんか。
結論からお伝えすると、アパート経営を始めたからといって、必ず個人事業主として開業届を提出しなければならないわけではありません。
不動産貸付けの規模や実態によって、開業届の提出が必要かどうかや、青色申告を選択するかどうかが異なります。
今回は、個人事業主として開業してアパート経営を行うケース、個人事業主として経営する場合のメリット・デメリット、必要な手続きやポイントについて解説します。
※本コラムでは、説明の便宜上、税務署に開業届を提出してアパート経営を始める・行うケースを「個人事業主として開業する」「個人事業主としてアパート経営をする」と表現しています
※2026年7月時点の情報です

アパート経営は個人事業主として開業すべき?条件やメリット・デメリットを解説
個人事業主として税務署へ開業届を提出していなくても、賃貸借契約に基づいてアパートを貸し出し、家賃収入を得ることはできます。
ただし、不動産の貸付けが所得税上の事業的規模に該当する場合は、開業届の提出が必要です。
事業的規模に該当するかどうかは、貸付規模や実態を踏まえて判断されるため、個別の判断については所轄税務署または税理士へご確認ください。
また、会社員として働きながら副業としてアパート経営を行える場合もありますが、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。
公務員の場合は、国家公務員・地方公務員の区分、貸付規模、収入、所属先の規定などによって承認や許可が必要になる場合があるため、事前に所属先へご確認ください。
個人事業主としてアパート経営を行うケース
アパート経営を始める際は、貸付規模に応じて開業届の要否を確認するとともに、青色申告の利用や収支管理の方法を検討します。
例えば、次のような希望や状況がある場合は、青色申告の利用や記帳体制の整備を検討すると良いでしょう。
- 青色申告特別控除を利用したい
- 損益通算後も残った純損失を翌年以後に繰り越したい
- 家族にアパートの管理業務などを手伝ってもらい、給与を支払いたい
- 所有物件や貸室が増え、収支を継続的に管理したい
- 将来的な物件の追加取得を検討している
所得税では、独立家屋をおおむね5棟以上、またはアパートやマンションなどの貸与できる独立した室数がおおむね10室以上貸している場合は、原則として「事業的規模」に該当するとされます。
これが、いわゆる「5棟10室基準」です。
なお、実際の判定は個々の貸付状況によって異なる場合があるため、迷う場合は所轄税務署または税理士へ相談しましょう。
事業的規模に該当しない場合でも、青色申告承認申請書を期限内に提出して承認を受ければ、青色申告を行うことは可能です。
利用できる制度や控除額は、事業的規模に該当するかどうかによって異なります。
個人事業主としてアパート経営をするメリット
個人事業主としてアパート経営を行うメリットは、税制上の優遇措置を活用できる点にあります。
青色申告の承認を受け、制度ごとの要件を満たすと、次のような制度を利用できる場合があります。
- 所得から一定額を差し引ける青色申告特別控除
- 家族に支払った給与を必要経費に算入できる青色事業専従者給与
- 損益通算後も控除しきれない純損失を、原則として翌年以後3年間繰り越せる制度
青色事業専従者給与を必要経費に算入するには、不動産貸付けが事業的規模であることに加え、専従者の要件、事前の届出、給与額の相当性などを満たす必要があります。
青色申告特別控除は、事業的規模ではない不動産貸付けの場合、原則として最高10万円です。
事業的規模に該当し、複式簿記による記帳や期限内申告などの要件を満たすと、最高55万円の控除を受けられます。
さらに、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存の要件を満たすと、控除額は最高65万円となります。
※税制や手続きに関する内容は、2026年7月時点の情報です。
また、アパート経営の収支を継続的に正しく記帳することで、物件ごとの収支や費用の傾向を把握しやすくなり、修繕計画や、今後の物件取得を検討する際の判断材料としても役立ちます。
ただし、開業届を提出しただけで、青色申告の各種制度を利用できるわけではありません。
開業届とは別に青色申告承認申請書を提出し、制度ごとの要件を満たす必要があります。
さらに、法人を設立する場合と比べると、個人事業主としてアパート経営を始める場合は法人設立登記が不要なため、設立時の手続きや費用を抑えやすい点もメリットです。
ただし、物件の取得や融資、賃貸管理、税務上の届出など、アパート経営に必要な手続きがなくなるわけではありません。
経営規模や所得によっては法人化が適している場合もあるため、将来の経営計画も踏まえて検討しましょう。
※税制や手続きに関する内容は、2026年7月時点の情報です。
個人事業主としてアパート経営をする場合のデメリット・注意点
個人事業主としてアパート経営を行う場合は、家賃収入や必要経費、減価償却費などを継続的に記帳し、帳簿や関係書類を保存する必要があります。
特に、青色申告で最高55万円または65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳や決算書の作成、期限内の確定申告など、所定の要件を満たさなければなりません。
記帳や申告に不備があると、控除を受けられない可能性があります。
また、所得が増えると所得税率が上がるほか、所得や貸付規模などによっては、所得税・住民税とは別に個人事業税がかかる場合があることも知っておきましょう。
個人事業税における不動産貸付業の認定基準や管轄は、所得税上の事業的規模の判断基準と同一とは限りません。
詳しくは、各都道府県の公式情報を確認し、管轄する都道府県税事務所へご確認ください。
さらに、個人名義で借入れや契約を行う場合、事業上の債務や責任は原則として本人が負います。
借入条件や保険の補償内容なども事前に確認しておくことが大切です。
※税制や手続きに関する内容は、2026年7月時点の情報です。
法人化との違い
アパート経営の規模や所得によっては、個人で経営を続けるより、法人として経営するほうが適している場合もあります。
個人にかかる所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。
一方、法人税の税率は、法人の区分や所得金額などによって異なります。
法人化によって税負担が軽くなるかどうかは、法人税だけでは判断できません。
法人住民税や法人事業税、役員報酬にかかる所得税、社会保険料、設立・維持費用なども含めて検討する必要があります。
法人化すると、設立や会計に関する手続きが増え、加入要件に該当する場合は社会保険料の負担も生じます。
所得、物件数、今後の経営計画などを踏まえ、税理士や社会保険労務士などの専門家に確認した上で判断することが大切です。
アパート経営で個人事業主として開業する際に必要な手続きは?
個人事業主として開業してアパート経営を行う場合は、税務署へ必要な届出を行い、日々の取引を記帳します。
確定申告が必要かどうかは、所得の状況によって異なります。
開業後に確定申告を行う場合の基本的な流れは、次の通りです。
- アパート経営を開始する
- 税務署へ「開業届」を提出する
- 青色申告を希望する場合は、「青色申告承認申請書」を提出する
- 家賃収入や経費を帳簿に記録する
- 1年間の収支をまとめ、翌年に確定申告を行う
開業届は、個人で事業を始めたことを税務署へ届け出る書類です。
2026年1月1日以後に不動産貸付けを開始し、事業的規模に該当して開業届の提出対象となる場合は、開始した年分の所得税の確定申告期限までに、納税地を所轄する税務署へ提出します。
また、青色申告特別控除などを利用したい場合は、開業届とは別に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
提出期限は、原則として青色申告を行いたい年の3月15日までです。
その年の1月16日以後にアパートの貸付けを始めた場合は、貸付けを始めた日から2カ月以内に提出します。
必要な届出や申請は状況によって異なる場合があるため、不明な点は所轄税務署または税理士へご確認ください。
なお、アパート経営を続ける上では、税務だけでなく、管理や契約に関する知識も役立ちます。
アパート経営に生かせる資格については、「アパート経営に必要な資格はある?業務に生かせる資格を8つご紹介」で解説しています。
個人事業主としてアパート経営をする際に押さえておきたいポイント

個人事業主としてアパート経営を続ける上では、経費や税金の仕組みを理解し、利用できる制度を正しく活用することが大切です。
適切な申告と経営管理のために、押さえておきたいポイントを確認しましょう。
①必要経費を適切に計上する
アパート経営に関連する支出のうち、税務上、必要経費に該当するものを適切に計上することで、不動産所得を正しく計算できます。
必要経費の計上漏れがあると、不動産所得や税額が本来より高く計算される可能性があります。
アパート経営で必要経費として計上できる主な支出には、次のようなものがあります。
- 建物や設備の修繕費
- 管理会社へ支払う管理委託費
- アパートローンの利息
- 火災保険料などの損害保険料
- 建物や設備の減価償却費
- 物件確認や打ち合わせにかかった交通費
ただし、ローンの元本部分は経費にできません。
また、建物の価値を高める工事などは、修繕費として全額を一度に計上できない場合があります。
領収書や支払いの記録を保管し、支出の目的や業務との関連性、対象となる期間などを確認した上で、必要経費を適切に計上しましょう。
個別の支出を必要経費にできるか判断が難しい場合は、所轄税務署または税理士へご確認ください。
②損益通算を正しく活用する
アパート経営による不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得などの黒字から差し引けることがあります。
これを「損益通算」といいます。
損益通算を利用すると、税金を計算するもとになる所得が少なくなり、所得税や住民税の負担を抑えられる場合があります。
ただし、不動産所得の赤字を全て差し引けるわけではありません。
例えば、不動産所得の赤字のうち、土地などを取得するための借入金の利子に相当する部分は、損益通算の対象になりません。
制度の適用要件や損益通算の対象範囲を確認し、不明な点がある場合は、所轄税務署または税理士へ相談しましょう。
③経営状況に応じて法人化を検討する
アパート経営による所得や保有する物件が増えてきた場合は、個人事業主のまま経営を続けるよりも、法人化したほうが有利になることがあります。
法人化すると、個人の場合とは異なる税率や税務上の取り扱いが適用され、資金管理の方法も変わるためです。
ただし、法人化すると、設立費用や維持費用に加え、役員報酬や従業員の雇用状況などによっては、社会保険への加入や保険料負担が生じます。
そのため、所得が増えたからといって、必ず法人化したほうが良いとは限りません。
所得や物件数、今後の経営計画を踏まえて検討することが大切です。
④個人事業主として開業するか迷った場合は専門家へ相談する
開業届の要否や青色申告、法人化など、税務に関する判断で迷った場合は、所轄税務署または税理士へ相談しましょう。
一方、物件の管理方法や収支の見通し、今後の経営方針については、管理会社や不動産会社に相談することをおすすめします。
税務と経営の両面から検討することで、ご自身の経営規模や状況に合った方法を判断しやすくなります。
まとめ
●アパート経営では規模や実態に応じて、個人事業主として開業届を提出する必要があるか確認する
事業的規模に該当しない不動産貸付けであれば、開業届を提出せずに行うケースもあります。
一方、事業的規模に該当する場合は、開業届の提出が必要です。
会社員は勤務先の就業規則を確認し、公務員は国家公務員・地方公務員の区分や貸付規模、所属先の規定に応じて、必要な承認・許可について所属先へご確認ください。
●個人事業主としてアパート経営をするメリット・注意点を理解する
青色申告の承認を受け所定の要件を満たすと、青色申告特別控除や純損失の繰越しなどを利用できる場合があります。
一方で、継続的な記帳や帳簿書類の保存、期限内の確定申告が必要です。
所得や貸付規模などによっては、個人事業税がかかる場合もあります。
●アパート経営では経営状況に応じて法人化も検討する
アパート経営による所得や物件数が増えた場合は、法人化が適していることもあります。
ただし、税金だけでなく、社会保険料や設立・維持費用なども踏まえて検討することが大切です。
税務上の判断は所轄税務署や税理士へ、物件の管理方法や収支計画は管理会社や不動産会社へ相談することをおすすめします。
北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
※2026年7月時点の情報です
著者
小樽駅前店 小幡 将大賃貸物件に関するお悩みや不安、ご相談ごとは、どんなに小さなことでも私たちにお任せください。入居者様にとっては毎日の暮らしを支える住まいであり、オーナー様にとっては大切な資産です。だからこそ、お一人おひとりに寄り添い、誠実で丁寧な対応を心がけています。「ここに相談して良かった」と思っていただけるサービスを、これからも提供してまいります。
この担当者がいる店舗のページ
