不動産管理コラム

不動産管理のこと2025.05.07

賃貸物件の害虫駆除はどうすれば?責任の所在と効果的な対策

こんにちは。イエステーション北章宅建 不動産管理部の小幡です。

賃貸物件を経営されているオーナー様の中には、「害虫が出た」と入居者から連絡があり、どう対応すべきか悩まれたご経験がある方も多いのではないでしょうか。

特に暖かくなる季節は、アリやハチ、クモなどが発生しやすく、対応次第では入居者満足度や物件価値にも影響します。

今回は、害虫が発生する原因や、駆除費用の負担区分、具体的な駆除方法、そして日常的な予防策まで、賃貸オーナー様が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

アリ

 

賃貸物件に害虫が。害虫が発生する原因とは

賃貸物件に害虫が発生したと連絡があった場合、まずは原因の特定をすることが大切です。
考えられる原因と原因を特定する方法についてご紹介します。

 

賃貸物件に害虫が発生する原因

賃貸物件に害虫が発生する原因は、大きく分けて次の3つです。

  • 環境要因
  • 構造的要因
  • 人為的要因

それぞれの要因について、具体的に見ていきましょう。

 

1. 環境要因|立地や周辺環境が影響する

物件の立地や周辺の環境は、害虫の発生リスクに大きく関わります。

例えば、自然が多い地域ではさまざまな虫が生息しており、アリやハチなどが室内に侵入してくることがあります。
また、1階に飲食店やコンビニが入っている建物では、生ゴミなどの影響でハエなどが集まりやすくなります。

外部環境が原因で害虫が入り込む可能性がある点を把握しておくことが重要です。

 

2. 構造的要因|老朽化や設備の隙間が侵入口になる

建物自体の構造や設備不良が害虫の侵入経路となることもあります。

例えば、築年数の古い物件では外壁や基礎に隙間ができやすく、配管周りや排水トラップに不具合があれば、そこから虫が侵入してくるおそれがあります。
通気性の悪さや湿気も、シロアリやクモなどの発生を招く要因です。

「築浅だから大丈夫」と油断してしまうのは危険で、換気口や窓の隙間、排水口などわずかな開口部からも虫は侵入可能です。

 

3. 人為的要因|入居者の生活・衛生状況が引き金になる

害虫の発生は、入居者の生活習慣によって引き起こされることもあります。

室内やベランダにゴミを放置していたり、生ゴミの処理が不適切だったりすると、虫を引き寄せる原因になります。
排水口の掃除を怠って、チョウバエなどの小さな害虫が繁殖するケースもあります。

こうした日常の衛生管理が原因となる場合は、発生後に駆除を行なっても再発のリスクが高いため、根本的な生活改善が必要です。

 

発生原因を探るには

害虫の発生原因を特定するためには、複数の要因を視野に入れながら調査を進めることが大切です。

まずは入居者からの情報をしっかりヒアリングしましょう。
どこで、いつ、どんな虫を見かけたのかを確認することで、原因の絞り込みがしやすくなります。

また、物件に実際に訪れて「発生箇所」「侵入経路」「清掃状況」などをチェックすることも重要です。
配管や排水まわり、ベランダの隅、換気口などは、重点的に確認したいポイントです。

 

賃貸物件の害虫駆除費用の負担は誰に?

害虫駆除にかかる費用の負担は、発生原因と発生箇所によって異なります。
トラブル回避のためにも、法的な原則と実務上の判断基準を理解しておきましょう。

 

貸主が負担するケース

民法第601条・第606条では「賃借人に使用収益させる義務」が貸主に課されており、以下のようなケースでは貸主の負担とされるのが一般的です。

  • 入居から間もなく害虫が発生し、入居前から原因があったとみられる場合
  • 配管や建物設備の不具合により、虫の侵入が起こっている場合
  • 建物の構造的な欠陥が原因で、害虫が発生している場合
  • 隣室のゴミ放置などによる被害で、入居者に過失がない場合
  • 共用部分(廊下、ゴミ置き場など)で害虫が発生している場合

これらは、借主側の生活に起因しない、構造上や第三者による問題とされるため、貸主の対応が求められます。

 

借主が負担するケース

一方、借主にも「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」があり、物件を通常の注意をもって使用・管理する責任があります(民法第400条)。

この義務には、日常的な清掃や衛生管理も含まれており、以下のような場合には借主が害虫駆除費用を負担することになります。

  • 室内やベランダにゴミを放置していた場合
  • 排水口の清掃を怠っていた場合
  • 生ゴミの処理が不適切だった場合

こうした不衛生な生活環境が原因で害虫が発生したと判断される場合には、借主側の責任となるのが一般的です。

原因の特定が難しい場合もありますが、責任の所在を曖昧にしないためには、賃貸借契約書に「害虫駆除に関する特約」を設けることも有効です。

例えば、借主の善管注意義務の明記や、貸主の免責条件を盛り込んでおくことで、借主とのトラブルを未然に防げるでしょう。

 

賃貸物件の害虫駆除の方法

実際に賃貸物件に害虫が発生した場合、種類に応じた対処が必要です。
代表的な害虫の駆除方法を簡単にご紹介します。

 

ハチの駆除

軒下などにスズメバチやアシナガバチが巣を作るケースは、北海道でも見られます。
ハチは攻撃性が高く、刺されると重篤な症状を引き起こすこともあるため、絶対にオーナー様自身で駆除しようとしないでください。

このような場合は、専門の害虫駆除業者に速やかに依頼するのが基本です。

自治体によっては、無料または一部負担で駆除に対応してくれる場合もあるため、まずは管轄の市町村役場に相談することをおすすめします。

 

アリの駆除

アリは北海道の賃貸物件でもよく見られる害虫の一つです。
特に屋内に行列をなして出現する場合は、外部から建物内への侵入経路がある可能性が高いと考えられます。

オーナーとしては、まずは侵入経路を特定し、適切に遮断することが重要です。

市販の殺虫剤や毒餌などで一時的に対処することも可能ですが、侵入源が複数ある場合や発生が頻繁な場合は、専門業者に点検・駆除を依頼するほうが確実です。

 

シロアリの駆除

シロアリは建物の構造材(特に木部)を食害するため、住宅に深刻な害をもたらします。
北海道でも近年は暖かい時期に増加が見られ、戸建ての賃貸物件では特に注意が必要です。

床のきしみ、基礎周辺の湿気、壁や柱の変色などがある場合、すでに建物内部に被害が及んでいる可能性もあります。
シロアリの駆除や調査には専門知識と薬剤処理が不可欠なため、オーナー様自身で対応せず、必ず専門業者に依頼してください。

 

クモの駆除

クモは一般に「益虫」として扱われることもありますが、巣を張る・壁に多数出現するなどの状況では、入居者が不快に感じるケースが多く、クレーム対象にもなります。

比較的無害であり危険もないので、市販の殺虫スプレーや掃除機で一時的に対応することも可能です。

ただし、大量発生する場合や通気口・換気ダクトから侵入している場合は、建物側の構造点検や侵入経路の封鎖が必要です。

 

賃貸物件の害虫トラブルに悩まされないために

害虫トラブルを未然に防ぐには、オーナー様による事前の対策が欠かせません。

ここでは、主に以下の3つの観点から、害虫を寄せ付けないためのポイントをご紹介します。

  • 入居者がいないタイミングでの室内の対策
  • 定期的な建物構造や外部設備のチェック
  • 継続的な共用部の管理

それぞれの場面で、オーナー様が取るべき具体的な行動を見ていきましょう。

 

空室時に室内の防虫対策をする

まず、入居者がいないうちに、室内で実施できる以下の対策を確認・実行しておきましょう。

  • 室内で燻煙・燻蒸タイプの殺虫剤を使用し、潜在的な害虫を駆除する
  • 網戸や窓まわりを点検し、破れや歪みがあれば修繕する
  • 壁や床、配管まわりなどに隙間がないか確認し、必要に応じてシーリング処理を行う
  • シンク下や浴室などの水まわりに、防虫剤を配置しておく

建物の外は定期的にチェックしておく

下記のような建物の構造や外部設備は、定期的にチェックすることが重要です。

  • 排水管や配管の貫通部を確認し、シーリング処理を施す
  • 床下や基礎の湿気を抑えるための通風・断熱対策を行う
  • 換気口や通気口の防虫網に破れや緩みがないかを確認する

 

共用部の管理にも注意する

建物全体の清潔感を保つ上では、共用部の管理も大切です。
特にゴミ置き場は害虫が集まりやすく、悪臭や見た目の悪化にもつながるため、日頃の清掃やルールの徹底が重要です。

また、共用部の照明が暗すぎると虫が寄ってきやすくなるため、適度な明るさを保つなど、環境面の見直しも対策の一つとなります。

「日常的な管理や専門業者の手配までを全て自力で行うのは難しい…」というオーナー様は、管理会社に依頼することも検討してみましょう。

アパートや戸建ての管理会社の選び方についてはこちらもご覧ください。
戸建て賃貸を管理会社に委託するメリットとおすすめの選び方
不動産の管理会社の失敗しない選び方を解説

 

まとめ

  • 賃貸物件に害虫が発生する原因を把握しよう

自然環境、建物の構造、入居者の生活習慣など、さまざまな要因が関係しています。
完全に防ぐのは難しいため、幅広い視点からの対策が必要です。

●害虫駆除費用の負担はケースによる
建物設備の不具合や共用部分の問題などが原因の場合は貸主負担、入居者の管理不備による場合は借主負担となります。
責任の所在を曖昧にしないためには、事前の取り決めが重要です。

●害虫の種類ごとに適切に対応を
害虫ごとの特性に応じて対応する必要があり、場合によっては専門業者への依頼が適切です。

●害虫予防策と管理の徹底が大切
害虫発生の防止には、空室時の燻煙・補修・防虫対策、定期点検、共用部の清掃がカギ。
管理会社のサポートも視野に入れた予防が安心です。

北章宅建では、都市部以外の賃貸アパート・戸建てを中心に不動産管理を行なっております。
不動産管理のことでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

 

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著者
賃貸物件の害虫駆除はどうすれば?責任の所在と効果的な対策

小樽駅前店 小幡 将大大学時代は建築学科で住宅について学び、不動産業界に入ってからは住宅の売買はもちろんリフォーム工事に関しても多数携わり、自分自身も数年前中古住宅を購入しました。北海道ならではの住宅の傷みや、気を付けなくてはいけない点など自分の経験を活かしてお客様と一緒に住宅探しを出来れば幸いです。至らない点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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