マンションのこと2022.06.03
自主管理マンションは売れない?理由と対策を徹底解説〜前編
「自主管理マンションは売れづらい」という現実があるのは知っていますか?
自主管理マンションとは、マンションの管理を管理会社に委託せず、所有者が自ら管理を行う管理形態のことを言います。なぜ自主管理だと売却が難しいのでしょう。
本記事では、自主管理マンションが売れづらい理由や、売却するために必要な対策について解説します。
管理組合のない自主管理マンションが売れにくい3つの理由
「自主管理マンションは売れにくい」という声はよく聞きます。実際、売却するのはなかなか難しく、売れても高値はつきにくい傾向があります。
売れにくい理由は、マンション管理に必要な3つのものがないため。それは「管理組合」「管理規約」「長期修繕計画」です。それぞれ具体的に見ていきましょう。
①管理組合がない
ほとんどのマンションには管理組合があり、その組合がマンション管理を請け負います。マンション管理の主な業務は次のように多岐にわたります。
・管理費や修繕積立金の徴収、管理
・共用部や設備の清掃やメンテナンス
・大規模修繕工事の計画や手配
管理の形態は、こうした業務を誰が行うかによって3つの方式があります。
・自主管理…区分所有者で構成する管理組合がすべての管理を行う
・一部委託管理…管理業務の一部だけ管理会社に委託する
・全部委託管理…管理業務のすべてを管理会社に委託する
このようにマンションの管理業務を、住人(区分所有者)自らがすべて行う方法を「自主管理」といいます。
自主管理でも、管理組合によって適切に管理が行われているマンションはありますが、中には住民の高齢化などによって管理組合がほとんど機能していないケースや、管理組合自体がないこともあります。
管理組合のないマンションは、単純に一つの建物を他人と共同所有しているような状況です。マンション全体の管理運営を担う存在がないため、清掃や修繕といった管理が適切に行われていない可能性が高いでしょう。このようなマンションは資産価値を保てないため、購入を避けられてしまいがちです。
②管理規約がない
管理組合がないマンションの多くは、管理規約もないでしょう。
管理規約とは、共用部分の範囲や使用方法など、大勢の居住者が快適に暮らし、資産価値を維持管理するために定めた共通ルール。いわば、マンションの憲法です。このルールがあることで、共用部分などでのトラブルを未然に防ぐことができます。
逆に言うと、管理規約がないマンションでは明文化された決まりがありません。守るべきルールがないと適切な管理が行われず、マンション住民は安心して暮らすことはできませんし、資産価値にも大きく影響します。管理規約がないマンションが買い手から敬遠されるのは、そのためです。
③長期修繕計画がない
適切な長期修繕計画は、マンションの資産価値を保つために欠かせません。その計画を主導する役割を果たすのが管理組合です。
一般的には、10〜15年を目安に大規模な修繕工事を計画しますが、自主管理マンションの中には「そもそも長期修繕計画が立てられていない」という物件も存在します。「修繕の計画がない」のは「劣化を放置する」ということであり、マンションの維持は難しいでしょう。
自主管理マンションは築年数の古い物件が多く、住民も高齢化している傾向があります。そのため長期修繕計画だけでなく、日常的な設備の維持や修繕など、お金のかかることには消極的。結果的に劣化による不具合が進行し、入居者が不便を感じるだけでなく、資産価値の低下というリスクにも直面してしまうのです。
修繕積立金は、マンション全体の修繕工事のため、住人が積み立てている貯金のようなものです。徴収がない・徴収はあるが少なすぎるという場合は、適切な工事ができない可能性が高いため、十分な注意が必要です。
「管理組合がない」自主管理マンションとは?
マンションの購入者(区分所有者)は、自動的に管理組合の組合員となり、全員がマンションを管理運営していく当事者になります。
区分所有者が管理組合に加入することは、マンションに関する区分所有法で定められた義務です。「面倒だから加入しない」などの選択肢はありません。
しかし、実際には管理組合が存在していない、あっても機能していないというケースがあります。
築年数の古いマンションに多い
今はほとんどの方が、マンションに管理組合があるのは当たり前だと認識しているでしょう。それは昭和58年に大改正された区分所有法で、「区分所有者全員でマンション管理を行うための団体を構成する」と定められているからです。
ところがそれ以前は、管理組合について明確な規定がなかったため、古い分譲マンションなどでは、管理組合がない、組合はあっても実際には機能していないというケースがあります。
「総会が開かれたことがない」「築年数が古い」「修繕積立金などの徴収がない」「戸数が少ない」というマンションは、管理組合がない可能性があります。
一番問題なのは実際の管理状況よりも「管理組合がない」こと
買い手側から見れば、一番の問題は「管理組合の有無」です。
自主管理でも管理に問題がないマンションはありますが、それは住人だからわかること。日常的な管理状況がどうなっているのか、買い手は把握できません。マンション全体を維持管理する管理組合がないということは、「管理に不安がある」と捉えられてしまうのです。
部屋がきれいでも、立地が良くても、長期的に資産価値を保てるという裏付けにはなりません。そのため管理組合がないマンションは、なかなか買い手がつかないのです。
自主管理マンションは住宅ローンが組めない可能性大
マンション購入者のほとんどは、住宅ローンを組みます。しかし管理組合のない自主管理マンションの場合、住宅ローンが組めない可能性が高いです。
なぜなら、こうしたマンションは法令遵守や管理運営に問題がある物件とみなされ、金融機関のローン審査で著しく低く評価されてしまうから。マンションとして見た場合、「担保としての価値がない」「将来的に資産価値が維持できない」と判断されてしまうのです。
住宅ローンが組めないと、買い手は現金一括で購入できる人に限られるため、非常に売却しづらくなります。仲介に難色を示す不動産会社も多く、結果として売れない状態になってしまうのです。
では、こうした自主管理マンションは売却できないのでしょうか? 次回は、管理組合のない自主管理マンションを売れるマンションにするための対策について解説します。