相続や名義のこと2021.04.09
不動産相続でよくあるトラブルとは?事例と解決策を徹底解説〜その1
不動産は現金と違って分割しにくいため、相続トラブルの原因になりがちです。仲の良い兄弟であっても、実家の不動産を巡って揉めることは決して珍しいことではありません。
トラブルが発生すると解決には長い時間がかかりますが、事前に知っておけば防げるものも多くあります。本記事では不動産を相続する場合に起こりやすいトラブルの事例と、その解決策を紹介していきます。
不動産相続によるトラブルは身近な問題
相続時にトラブルが起こりやすいのは、遺産の中に土地などの不動産が含まれている場合です。「相続トラブル」というと、広大な土地や都心に邸宅を所有する資産家の話に聞こえますが、実際には親が住んでいた実家など、身近な不動産が火種となるケースが多いのです。
不動産相続のトラブル件数は毎年増加
実際に、不動産相続を巡るトラブルの件数は年々増加傾向にあります。最高裁判所が取りまとめた「平成24年度司法統計1」によると、家事調停や審判に至った遺産分割事件の件数は、平成14年の約11,000件から、平成24年には約15,000件に増加。相続に関わるトラブルは増える一方です。
なお、相続における家事調停とは、遺産分割について相続人同士で話し合いがまとまらない場合に、裁判官と民間から選ばれた調停員が間に入り解決を目指すものです。
調停が成立しなかった場合には、遺産分割審判という、裁判官による判断で解決する手続きに移行することになります。
不動産相続のトラブルの原因とは
相続トラブルは、資産家の家族に限って発生する問題ではありません。むしろ、遺産総額が1億円を超えるような資産家で、遺産分割事件にまで至るケースは少数派です。
実は、遺産分割事件の約7割が遺産総額5,000万円以下の案件で、1,000万円以下の案件だけでも全体の約3割を占めています。いかに“普通の家族”が遺産分割で揉めるケースが多いかイメージできるのではないでしょうか。
「うちは相続トラブルとは無縁だ」と思っている人の多くは、「遺言書がなくても法定相続分で分割すればいい」と考えています。
しかし、相続財産は現金のようにきれいに分割できるものとは限りません。自宅の土地や建物、田畑などの不動産が含まれる場合は、その資産価値をどう評価するかによって、それぞれの相続額が大きく異なります。
不動産を売却して現金化すれば財産を分割できますが、例えば親の自宅に、長男など相続人の一人が同居していた場合は売却が難しいでしょう。そのため、不動産価額から割り出した現金を他の相続人に渡すことになり、金額によってはトラブルに発展することがあります。
あるいは、長年一人で親の介護をしてきた立場であれば、他の兄弟姉妹と同じ相続額では、なかなか納得できないでしょう。
多くの場合は、親が自宅という不動産を所有しており、また年をとれば要介護者になることも考えられます。相続トラブルが発生する可能性はどの家族にもあり、非常に身近な問題だといえるのです。
まとめ
遺産相続では、財産に不動産が含まれている場合は相続人同士でトラブルが起こりやすくなります。これは何も資産家に限った話ではなく、ごく普通の家族にこそ発生しやすいトラブルです。
また、長年親の面倒を看ている、親との同居が長い、疎遠になっている兄弟がいるなど家族の事情は様々あり、いざ相続という時になると、それぞれ主張も出てきます。決して他人事ではないのです。
次回からは、よくある相続トラブルの事例と解決策を詳しく紹介していきます。家族円満で相続を終えられるよう、本記事を参考にして少しずつでも準備していってほしいものです。