不動産売却のコツ2021.06.12

第一種・第二種低層住居専用地域の特徴を知り、上手な不動産購入・売却を〜その2

土地にどのような建築物が建てられるかは、都市計画法に基づいて定められており、土地の利用目的によって13種類の用途地域に分類されています。

用途地域のうち第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域は、低層住宅を建築する地域に指定されるエリアで、閑静な住環境が保たれているという特徴があります。

この地域は建築物に対する厳しい規制があるため、土地を売買する際に知っておくべき点も多々あります。購入時、売却時、それぞれの注意点を解説していきましょう。

第一種・第二種低層住居専用地域の土地購入に関する注意点

良好な住環境に魅力を感じて、第一種・第二種低層住居専用地域で土地を購入したいと考える人は多いでしょう。しかしこのエリアならではの注意点もあります。購入前に知っておくべき注意点とは何でしょうか。

近くに店舗がない可能性がある

第一種・第二種低層住居専用地域では、店舗の用途が主に下記に限定されています。

・日用品や食材の販売
・食堂、喫茶店
・理髪店、美容院
・クリーニング取次
・洋服店
・自転車店
・家庭電器具店

用途だけでなく店舗面積も限定されており、席数や商品の選択肢は極めて限られたものになるため、対象となる客も周辺地域に限定されるでしょう。

売上が上げにくい条件下で店を営む人は、そう多くないでしょう。そのため、徒歩圏内にまったく店舗がないということもあります。

近くに病院がない可能性がある

第一種・第二種低層住居専用地域に建てられる医療施設は、入院機能がない診療所に限られます。大きな総合病院は建築できないため、必要な診察が近所で受けられないことがあります。

希望する建物が建てられない可能性がある

第一種・第二種低層住居専用地域は、建ぺい率や容積率に厳しい制限があり、思い通りの規模の建物を建てられるとは限りません。

容積率制限が緩い他の用途地域であれば、敷地が狭くても、3階建てにして希望の延床面積を確保することができます。しかし、第一種・第二種低層住居専用地域で指定されている容積率は、50%から200%の範囲内。3階建てを建てたとしても、容積率の制限によって希望の延べ床面積を確保することができず、建物空間のスケールが限られてしまいます。

そもそもこの地域では、「建ぺい率60%-容積率100%」「建ぺい率50%-容積率80%」というように、容積率を建ぺい率の2倍以下の数値の指定していることが大半です。3階建ての住宅を建築できるとしても形が相当制限され、事実上は2階建ての住宅がほとんど。もし第一種・第二種低層住居専用地域で大きな住宅を建てようとすれば、それだけ広大な敷地が必要になります。

隣家が突然民泊になる可能性がある

2018年6月から施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、本来宿泊施設が建築できない第一種・第二種低層住居専用地域でも、一定条件をクリアすれば民泊の営業が認められるようになりました。

このため、静かな住宅街に旅行者など外からたくさんの人が頻繁に出入りして、環境が変化する可能性が生じてきました。

ただし一部の地方自治体では、条例によって民泊開業を独自規制しているところもあります。

用途地域の境界近くは静かな住環境ではないケースがある

都市計画では、様々な種類の用途地域の組み合わせでまちづくりが行われています。そのため第一種・第二種低層住居専用地域でも、その指定範囲は別の用途地域と隣接しています。

隣接地が商業系の用途地域となっているケースもあり、たとえ第一種・第二種低層住居専用地域でも、その境界ではすぐそばに賑やかな店舗が並んでいるなど、良好な住環境が確保出来ない場合もあります。用途地域同士の境界線近くの物件は注意が必要です。

公共交通機関が使えるエリアを選ぶ必要がある

第一種・第二種低層住居専用地域は、周辺に商業施設がないために、買い物に行くだけでも遠方まで足を運ぶ必要があります。

もしそこがマイカーでしか行動できないような場所であれば、高齢者や子どもなど、自分で移動手段を持たない家族は不便な思いをします。バスや電車など、誰でも利用できる公共交通機関が近くにある土地を選ぶようにしましょう。

自営業ができないことがある

将来、自宅で店を始めたいと考えている人は注意が必要です。

先に挙げたように、第一種低層住居専用地域では営業できる店舗の用途が限定され、かつ面積は50㎡以下まで。さらに居住部分の方が大きくないと認められません。

そのため商売がうまくいっても、店舗を拡大することはほぼできません。また、空き家を事務所専用として使用することも認められていません。

第一種・第二種低層住居専用地域で土地売却に関する注意点

住宅系用途地域の中でも、第一種・第二種低層住居専用地域の物件は、比較的高値で売却されるという特徴があります。一方で売却に伴う注意点もありますので把握しておきましょう。

環境瑕疵を明白にしておくこと

第一種・第二種低層住居専用地域が購入される最大の理由は、良好な住環境にあります。そのため、もし迷惑な隣人がいたり、近くに「ゴミ屋敷」が存在していたら、ほとんどの人は購入の選択肢から外してしまうでしょう。万が一、こうした事実を隠したまま売却すると、後日、契約不適合として契約解除になる可能性が十分にあります。

明らかな環境瑕疵がある場合は、必ず売却の際に明白にすること。買主が納得した上で購入してもらわなければなりません。

更地にしない方が税負担が少ない

中古住宅があると売れにくいのでは?と、更地にすることを検討する人がいますが、決めつけるのは早計です。

たとえ空き家であっても、建物が建っている200㎡までの土地であれば、固定資産税は「住宅用地の軽減特例」によって、本来の税額の6分の1。200㎡を超える部分でも、3分の1に軽減されています。

もし更地にしてしまうと、この特例は適用されなくなり、固定資産税は一気に6倍に跳ね上がってしまうのです。

第一種・第二種低層住居専用地域の固定資産税額は、高値で設定されているケースが大半です。更地にしてわざわざ6倍の税額を負担するのは、良い選択とは言えません。

この用途地域の物件であれば、たとえ古い家でも、建物を残したまま売却活動を行った方が安心です。

まとめ

第一種・第二種低層住居専用地域は、良好な住環境を守ることが目的の用途地域です。建築物に対する様々な規制があるため、周囲に総合病院や大型店舗などがなく、不便な部分もあります。

そのため、この地域で住宅を購入する場合は、公共交通機関が利用しやすいエリアかどうかを確認しておくのがポイント。生活に必要な施設や勤務先へのアクセスしやすさは、かなり重要です。

静かな環境で過ごせることが、この地域を選ぶ最大のメリット。注意点を参考にして、思い描いた暮らしが叶う土地を探してみてください。

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