不動産売却の基礎知識2021.02.02

親子・親族間の不動産売買で注意点すべき点は?贈与や税金の知識も解説

子や孫の経済的な負担を軽減したり、相続時のトラブルを回避するため、親子や親族間で不動産を売買することは珍しくありません。しかも相続や生前贈与にはない、売買ならではのメリットがあります。
そこで今回は、贈与や税金に関する知識に触れながら、親子・親族間で不動産を売買するときの注意点について解説します。

家の売買の再現をする人形

そもそも親子間で不動産売買はできる?

親子間で不動産の所有権を移転する場合、一般的な方法は生前贈与や相続です。あまり知られていませんが、この他に、親子間で不動産を売買する方法があります。親子間売買と聞くと、違和感を持つ方もいるかもしれませんが、一般的な方法で売買することは法律上何も問題ありません。

親子・親族間売買には、どんなメリットとデメリットがあるのか、手法別に比較してみましょう。

①親子間(親族間)売買

・メリット……いつでも実施できる
・デメリット……相続よりも費用がかかる。そもそも買主側に購入できる資金がないと実行できない

②生前贈与

・メリット……いつでも実施できる
・デメリット……名義変更にかかる流通税(登録免許税等)と贈与税が他の方法と比べて高額になる

③相続

・メリット……親から子供へ名義変更をする登録免許税等が一番安く収まる
・ デメリット……親が亡くなるまで名義変更ができない

こうした特徴から、親子間売買を選択する人には、次のような動機が多くみられます。

●親(売主)の動機

・相続で揉めたくない
・愛着のある我が家を家族に譲りたい
・住宅ローンの返済が困難になった

●子(買主)の動機

・親から購入を頼まれた
・親が認知症になる恐れがある
・実家に住みたい

親子間で不動産売買できないケースはある?

親子間売買は基本的に可能ですが、中には認められないケースもあります。

不動産売買は法律行為のため、本人に意思能力があることが前提です。そのため名義人が認知症の場合は、いくら本人が希望しても取引は認められません。親子間売買も同様で、親が認知症になってしまうと判断能力がないとみなされ、不動産が売買できない可能性があります。

発言や行動に予兆が出るようになったら要注意。認知症の診断が出されるまでに売買を済ませておかないと、不動産の所有権移転は進められなくなってしまいます。

親子間・親族間の不動産売買は簡単にできる?

一般的に、不動産の売買を不動産会社が仲介するのは、個人間で直接取引をした場合に、詐欺行為や事実誤認など重大なトラブルが発生する恐れがあるからです。

親子間の取引で相手を欺くことは考えにくいため、必ずしも不動産会社を介す通す必要はありません。直接取引を行えば、仲介手数料を節約できるメリットがあります。

しかし、専門知識が不要というわけではありません。脱税行為と見なされないよう、適法に手続きを行う必要があるため、不動産や税金に対する知識の習得は必須です。

親子間・親族間で不動産売買するメリット

親子間・親族間で不動産売買を行うメリットは、以下の5つが挙げられます。

①不動産相続で揉めずに済む

不動産の継承は、所有者が亡くなった後の相続でも可能ですが、現金のように簡単に分割できない点が問題です。物理的に分割したり共有持分にしてしまうと、まったく使い物にならない不動産となって、大きく価値を下げる場合もあります。

つまり、相続資産に不動産があると、遺産の分割協議でトラブルの元になる可能性が高いのです。親が存命中に不動産を売買することで、資産を現金化でき、相続トラブルのリスクを大幅に下げることができます。

ただし、不動産を現金化すると相続税が増える可能性もあります。事前に税理士などの専門家に相談しておくと良いでしょう。

②「贈与」より「不動産売買」の方が税率が低い

生前贈与をした場合、不動産の評価額に応じて税率の高い贈与税が課せられます。一方、買主側が対象になる不動産取得税や売主側が対象になる譲渡所得税は、贈与税に比べて税率が低いため、大幅に税負担を減らすことができます。

③愛着のある家を家族に受け継ぐことができる

相続による所有権移転は、遺言を残さない限り、必ずしも意中の人物が相続するとは限りません。また生前贈与も、兄弟姉妹から異論が出て、実行できないことがあります。

遺産分割協議で揉めてしまうと、不動産を売却して現金を配分せざるを得なくなる場合があります。しかし、長年大切にしてきた我が家を完全に手放すことは、本来望んでいないはず。

その点、売買により子どもに所有権移転した場合は不動産を現金変換しただけなので、実質的には親の資産も減らず、他の法定相続人が不公平感を抱くことも避けられます。結果的に、愛着のある我が家を家族に引き継ぐことができるのです。

④売主は売却後も自宅に住み続けることができる

親子間の売買であれば、売却後も売主である親が住み続けられる点が大きなメリットです。

もし、住宅ローンの滞納で任意売却を余儀なくされている実家を、親子間売買で任意売却すれば、その売買代金で住宅ローンが完済できます。しかも、子どもが所有者となり親が借家人として賃貸することで、引越しすることなくそのまま住み続けることができます。

⑤外部に経済状況を知られずに済む

住宅ローンの滞納が原因で売却を余儀なくされると、任意売却や抵当権の実行による競売手続をすることになります。

任意売却の場合は、広告活動によって自宅が売り出し中であることが公になり、競売にかけられるとインターネットで競売の事実が公表されてしまい、いずれの場合も近所や知人に任意売却や競売の事実を知られてしまうでしょう。

親子間売買であれば、広告活動を必要とせず競売手続も経ずに済むため、任意売却や競売となってしまっても、知られることなく住み続けることができます。

親子間・親族間で不動産売買するデメリット

逆に、親子間売買には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

①売買の手続きが曖昧になりやすい

親子間取引の場合、どうしても手続きや手順がおざなりになりがちです。例えば次のようなことが想定できます。

・親子だからと契約書を作成しない
・実際の金銭のやり取りが面倒だから価格設定をしない(あるいは相場よりも大幅に安い価格設定をする)
・登記の名義人を確認せず、名義変更もしない

生前贈与と売買の違いは、金銭のやりとりの有無にあります。売買契約書や金銭を授受した書面が存在しない場合は、売買の実態がないと判断され、税務署から生前贈与とみなされます。この場合、高額の贈与税や申告漏れとして加算税が課せられるペナルティが待っています。

また実際に契約を締結して金銭の授受があったとしても、親子(親族)だからと、相場よりも極端に安い価格で不動産を売却すると、その差額が贈与とみなされることがあります。

また、売買に先立って名義を確認しておくことも重要です。親の名義だと思っていたら、実際には祖父の名義であったり、まったく知らない人物との共有名義だったというケースもあります。必ず事前に確認しましょう。

また売買後の名義変更も必須です。これを怠ると、親に支払った金額が、親への贈与とみなされることがあります。さらに親名義のまま放置しておくと、売買をしたこと自体を他の法定相続人から認めてもらえない場合もあります。

②税金の特例「3,000万円の特別控除」が使えない

マイホームを売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から3,000万円を控除できる特別控除が適用されます。通常の売却ではほとんどの人は譲渡所得税がゼロ円もしくは低額で収まるはずです。

ところがこの特例は、売却相手が親子、夫婦、同一生計の親族などの場合は適用外。状況によっては、高額の譲渡所得税がかかるため注意が必要です。

親子間・親族間で不動産売買をする際の手順

親子間でも基本的には通常の不動産売買と手順は同じですが、一番重要なポイントは「不動産価格の相場調査」と「売買契約書の作成」です。慎重に進めていかないと、贈与税の対象になってしまうことがあるため、細心の注意を払う必要があります。
親子間売買の流れは次の通りです。

①登記簿謄本の取得

登記事項から、不動産の現在の所有者が誰であるかを調べます。また抵当権などの他の権利が設定されていないことを確認します。

②不動産の価格を調べる

不動産会社に査定を依頼する、不動産鑑定を行うなどの方法で不動産価格を調べる必要があります。親子間売買では、親が子どもの負担を軽減するために市場価格と乖離した価格に設定するケースがあり、そのせいで贈与税の対象になることがあります。そうならないためにも、市場価格の調査は欠かせません。

③条件を固めて売買契約書を作成

親族間であっても、契約書の作成は非常に重要です。一般の売買と同じ様式の売買契約書を作成し、実印により調印を行います。売却金の受け渡しと登記は同時に行うことが望ましいでしょう。

④引き渡しと名義変更手続きをする

法務局で名義変更(所有権移転登記)を行います。手続きには手間と時間がかかるため、通常の取引では司法書士などの専門家へ依頼するケースがほとんどです。登記申請後は、書類に不備がなければ1カ月ほどで登記が完了します。

親子間売買の流れを集約すると、以下の3点に集約されます。
・通常の不動産売買と同じ手順で進む
・通常の不動産売買と同じ価格設定をして、正規の売買契約書によって締結する
・スムーズに行っても全ての登記手続きが完了するまでに2カ月ほどかかる

トラブルを避けるための親子間売買での注意点

親子間の不動産売買では、不良物件をつかまされるなどのリスクは考えにくいですが、一方で、信頼関係があるからこそ注意すべき点もあります。

①不動産売買価格の設定が重要

前述の通り、親子間取引だからとあまりにも安い売却価額を設定すると、「みなし贈与」と判断され、市場価格と取引価格の差額に対して贈与税がかかる可能性があります。

「みなし贈与」に該当するのは、次のような取引のケースです。
・格安で不動産を売買した
・不動産を引渡す代わりに借金を無くしてもらう(または肩代わりしてもらう)
・購入代金と所有権登記の持分の割合が大きく異なる

設定した価格が市場価格と大きく乖離しないようにするためには、例えば、国税庁の路線価や市町村の固定資産税評価額に基づいて売買価格を決める方法があります。こうした工夫があれば、一定の信ぴょう性が得られます。

もっと慎重に進めたい方は、不動産会社に査定を依頼したり、不動産鑑定士に鑑定を依頼するといいでしょう。

【ポイント】生前贈与と比較することも大切

売買にこだわらず、税負担を軽減した生前贈与の可能性について、税理士などの専門家に相談してみることも選択肢の一つです。

例えば、生前贈与の手法のひとつに「相続時精算課税制度」があります。これは、原則として60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。贈与時には軽減された贈与税を納め、その後相続時に、その贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を精算します。

②親族間で同意を得て売買契約を締結する

不動産取引の正当性を主張するためには、売買契約書の存在はとても重要です。親子間であっても、後に税務署から疑いを持たれないよう売買契約を締結し、売買契約書を作成する必要があります。

また他の法定相続人に黙って売買を進めるのは、後のトラブルの元。将来の相続時に揉め事が起きないよう、事前に他の相続人に説明した上で、了解を得ておいた方がいいでしょう。

親族間の売買では、「子が認知症の親を騙して無理に契約させたのでは?」とか「他の相続人に相続させたくないから売買に持ち込んだのでは?」といった疑念が生じ、トラブルになることがあります。このため、親が自分の口から事情を説明できるうちに売買を行った方が、無用なトラブルを回避できます。

契約書は手書きレベルのものではなく、一般取引と同じ正式なものを作成しましょう。個人で作成が難しいと思ったら、無理せず行政書士や司法書士などの専門家に依頼しましょう。

③名義変更を忘れずに行う

売買契約が締結したら、速やかに不動産の名義変更を行ってください。これを怠ると、相続の際に不要なトラブルを招くことになり兼ねません。また税務署に対して、真の取引であったことを証明する証拠にもなります。

このため、売買契約の締結前には、登記簿謄本や戸籍謄本や住民票などの書類を取得して、必ず現状の不動産の名義人が誰であるか確認してください。

もし親以外の人物が所有者となっていた場合は、経緯を確認し、必要に応じた調整を行なってから、親の名義に変更しなければなりません。また親の住所が現在と異なっているのであれば、先に住所変更の手続きを進めてください。

④住宅ローンの審査が通りにくい

一般的な住宅の購入と異なり、親子間売買では住宅ローンの審査が厳しくなります。これは、税金逃れのための売買を疑われたり、保証会社の信用を得にくいことが考えられ、高い確率で融資が断られます。

土壇場になってから融資が不可となっては、先々の予定も大きく狂ってしまいますので、まずは金融機関に相談することが先決です。

また、買主である子自身が住むのではなく、当面親が住み続けるような場合は、そもそも自己居住を目的とした住宅ローンの融資条件に当てはまらないため、融資を受けることはできません。

融資を受けられない場合は、手持ちの現金で購入する方法が考えられますが、実際にまとまった現金が用意できる人は少数派のはず。この場合は、比較的簡単な「生前贈与」や「通常の相続」に切り替えることを検討しましょう。

生前贈与は、不動産を受け取る側に贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を活用すれば贈与税を軽減することができます。また、相続税も不動産の価額によっては、大きな負担が発生しないケースもあります。

必ずしも、売買が最善の方法というわけではありません。他の選択肢も念頭に置いて、無理のない判断をしてください。

⑤課税の可能性があることを認識しておく

親子間の不動産取引においても、売却額に応じて譲渡所得税や不動産取得税が課税される可能性があることを理解しておきましょう。

まとめ

親子間でも不動産を売買することは可能です。しかし、親子だからといって曖昧な手続きをすると、贈与税の対象になることがあります。

市場の相場と乖離しないよう売却価格を設定し、一般の取引と同じレベルの売買契約書を作成して契約を締結することが重要です。

親が住宅ローンの返済で苦しんでいる場合、親子で不動産の売買をすることで、親は引き続き自宅に住み続けることができます。ただし、住宅ローンの融資は期待できないため、資金調達が最大の課題となります。

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著者
親子・親族間の不動産売買で注意点すべき点は?贈与や税金の知識も解説

札幌手稲店 野口 祥子

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