マンションのこと2021.04.20

管理費・修繕積立金を滞納していてもマンションは売買できる?〜その1

マンションを購入した人は、住宅ローンの他に管理費と修繕積立金を毎月支払う義務があります。共有部分の管理や大規模修繕に充てる費用のため、区分所有者は公平に負担しなければなりません。

予期せぬ事情で収入が減っても、義務である以上、支払いを免除・減免されることはありません。では、管理費・修繕積立金が払えない状況になってしまったら、どう対応すれば良いのでしょうか。すでに滞納している場合は、その状態のまま売却することができるのかについても見ていきましょう。

マンションの管理費・修繕積立金とは?

では、管理費と修繕積立金は何のために支払う費用なのでしょうか。

管理費は、照明や消防・防犯設備の点検や修繕、清掃など、マンションの共用部分を快適に使えるよう維持管理するために必要な費用。管理人の人件費もその一つです。

修繕積立金は、数年に一度の大規模修繕工事に備えて積み立てるお金です。外壁や配管の補修、エレベーターの改修などにかかる高額な費用を、長期修繕計画に基づいて蓄えています。経年変化や不具合に対する修繕だけでなく、耐震工事やバリアフリー化、宅配ボックスの設置のように、資産価値の維持や向上を図るために必要な原資でもあります。

どちらもマンションを適切に維持管理するために不可欠な費用なため、長期に渡って滞納する人が出ると、日常の管理はもちろん、マンションの価値を維持することも困難になります。

そのため最悪の場合、滞納者は管理組合から法的措置を取られる場合もあるのです。

意外と多い管理費・修繕積立金の滞納

管理費・修繕積立金の滞納と聞くと、特別な事情の有る特定少数の人だと考えがちですが、実際には意外と多く発生している問題です。

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果1」によると、過去1年間のトラブルの発生状況において、「費用負担に係るもの」が25.5%を占めており、そのうち「管理費等の滞納」が 23.9%。

これを全体の比率でみると、管理組合100件あたり6件が、管理費滞納の問題を抱えていることになります。

管理費・修繕積立金を滞納する背景

実際に、管理費・修繕積立金の滞納者を抱えている管理組合は、決して少なくありません。

背景にあるのは、昨今の景気後退。マンション購入時には返済できると思って住宅ローンを組んだものの、思うように収入が上がらなかったり、逆に減ってしまって家計が厳しくなる、というケースです。管理費や修繕積立金を考慮せずに資金計画を立ててしまい、支払えなくなる人もいます。いずれも見通しの甘さによるものです。

家計が苦しくなると、管理費等の滞納者の多くは住宅ローンも滞りがち。この状況が、問題の解決を一層難しくしています。

住宅ローンの場合は、一度でも滞納すると金融機関から督促の連絡が入ります。しかし、管理費等の滞納は、ただちに管理組合から厳しい督促状が届くことがありません。そのため、滞納していることに気がつかなかったり、あまり罪悪感を抱かずに支払いを後回しにしてしまうことがあるのです。

一方で、管理費の滞納はマンション運営に支障をきたす問題として深刻化しており、管理組合が管理費の滞納者に対して 競売の申し立てをするケースが増えています。

管理費・修繕積立金を滞納したらどうなる?

実際に管理費や修繕積立金を滞納すると、大きく次のような流れで進みます。

1.管理組合から滞納者へ、電話や書面で督促がある
2.滞納が続く場合は、内容証明等で支払いの請求が届く
3.それでも支払われない場合、口座の差し押さえや競売などの法的措置により滞納分を回収することがある

滞納後に取られる措置

管理費等の滞納が発生すると、管理組合では次のような順序で手続きを進めていきます。

①理事会での報告
滞納の事実を管理組合が理事会で報告し、対応を協議します。

最初は電話や書面で督促を行います。そこで支払えば問題ありませんが、なお滞納を続けて悪質と判断されると、法的措置が検討されます。

理事会のメンバーは、同じマンション居住している人がほとんどです。そのため日常生活で顔を合わせる機会もあり、滞納者の家族が気まずい思いすることになります。

②総会での報告
年に1度行われる総会で、管理費等の滞納の件が報告事項として取り上げられ、法的手続きを進めるかどうか、出席している区分所有者に意見を求めることがあります。

③管理組合の法的な対応
滞納期間が長く、金額が大きい場合や悪質だと判断された場合は、管理組合は代理人弁護士を選任して訴訟を起こします。

この訴訟により、管理組合は債務名義(債権の存在と範囲を証明する文書)を取り、競売を申し立てます。

請求額は滞納管理費等のほか、遅延損害金、訴訟や競売に要した費用も含まれるため、支払い額はさらに膨れ上がります。

管理費等の滞納による競売は認められている

マンションの区分所有物件は、そのマンションを住宅ローンの担保としているケースがほとんどのため、競売の後は金融機関が優先的に債務を回収します。

つまり管理組合は、競売を申し立てても、滞納額を回収できる見込みはほとんど無いということ。通常、このように回収の見込みがない場合は、競売自体が認められません。

とはいえ、そのままではマンションの維持管理に重大な支障が出てきます。そこでこのような事態に対応できる最終手段が、区分所有法第59条の規定による競売です。

同条では以下のように定められています。
『区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる』

つまり、管理費等の回収が極めて困難な場合には、管理組合は強制的に区分所有建物の競売の手続きを進めて、滞納額の回収に動くことができます。たとえ当該マンションに時価を超える抵当権が設定されていても、競売を実施することができます。

管理費等を滞納したまま売買はできるのか?

管理費・修繕積立金を滞納している区分所有者が、滞納したままでマンションを売却することはできるのでしょうか。論点を絞るため、住宅ローン完済済の物件として考えていきましょう。

区分所有法第8条では、前所有者が滞納した管理費等の支払い義務を、新たな旧所有者が承継することが定められています。つまり新たな買主は、滞納額の支払い義務も引き継ぐのです。

このため、売却の際には管理費等の滞納の事実を、重要事項説明の中で提示しなければなりません。この事実を隠したまま売却した場合、契約不適合として損害賠償などの法的措置がとられることになります。

また買主に管理費等の負担を強いる以上、負担分を差し引いた額で売り出しを進める必要があります。しかし滞納額があまりにも大きいと、購入希望者が見つからない場合もあり得ますし、前所有者の滞納に絡んだ風評を敬遠して購入を見合わせる人もいます。

滞納があっても売却することは可能ですが、買主の気持ちを考えれば、売却価額を大幅に引き下げざるを得ない可能性も視野に入れておくべきです。

また買主側も、中古マンションには管理費滞納物件の可能性があることを念頭におき、引き継ぐ債務の有無について事前にしっかりと確認するようにしましょう。

まとめ

住宅ローンの滞納に比べ、管理費・修繕積立金は滞納してもただちに督促状が届くことがないため、罪悪感をあまり感じないままに支払いを先延ばしにする人もいます。

しかし管理費・修繕積立金はマンションの資産価値を維持するために欠かせない費用であり、その負担は区分所有者全員の義務。ローン返済同様に、毎月の固定支出となるため、最初から購入予算にしっかり組み込んでおくことは言うまでもありません。

今回は管理費等を滞納せざるを得ない状況になったら、その後どうなるのかについて解説しました。次回は、滞納してしまった時にどのように対処すれば良いのか、具体的な方法をお伝えします。

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