土地や空き家のこと2021.01.21

旗竿地は売却しづらい?土地の特徴と価値を知りスムーズな売却活動を

旗竿地(はたざおち)とは、細い路地部分だけが道路に面し、奥にまとまった形状の敷地がある土地のことをいいます。道路から奥まった穴場のような土地である一方、不均一な形のため建築に特有の制限があり、所有者の中には売却に不安を感じている人もいるでしょう。

旗竿地の特徴や評価など、売却時に知っておきたい注意点を紹介します。

旗竿地ってどんな土地?

「旗竿地」とは、細い通路状の部分のみが道路に接している敷地で、竿が付いた旗のような形状をしていることが名前の由来です。道路と奥の敷地を結ぶ通路が路地を思わせるため「路地状敷地」とも呼ばれており、各地方の条例でも、この表現を用いています。

旗竿地に課せられている建築条件とは

旗竿地は通路部分の間口が狭く、奥行きがあるため、災害時の避難や救助活動に支障が出るため、法律や条例による建築規制があります。規制の詳細は地方によって異なりますが、例えば「東京都建築安全条例」「京都市建築基準条例」といった条例で定められています。ここでは、主に東京都建築安全条例に基づいて解説していきます。

路地状部分には建築できない

旗竿地は、路地状部分(道路と接する細い通路状の敷地)に建築物を建てることはできません。路地状部分は幅が狭いため、そもそも建築スペースがほぼありませんが、カーポートや家庭用物置くらいの小さなものでも建築は不可。この部分には一切何も建てることはできません。

路地状の長さによって幅員制限がある

土地に建物を建築する場合、道路に2m以上接していなければならないという接道義務があり、それは旗竿地でも同様です。しかも旗竿地の場合は、単に接道部分の幅が2m以上あれば良いということではなく、路地状部分の「最も狭い部分で2m以上の幅」がなければいけません。つまり途中がくびれて2m以下の部分があれば、新たに家を建てることはできないのです。

また、旗竿地は接道幅が2mであっても、路地状部分の長さ(奥行き)によっては建築不可の敷地になることがあります。

例えば、東京都建築安全条例に基づく決まりではこのような制限があります。

建物の延床面積が200平方メートル以下の場合だと、路地状部分の幅員が2mで建築が認められるのは、長さ20m以下の場合だけ。長さ20m以上の場合は、幅員を3m以上確保しなければなりません。

旗竿地での建築の可否は地方によって異なる

旗竿地の建築可否を握る幅員と長さの関係は、地方によって大きく異なります。そのため、旗竿地を購入する場合は、その敷地に適用される地方条例を確認する必要があります。

旗竿地が多い京都市を例にとると、路地状部分の幅員と長さの関係は次のように定められています。

・路地状部分の長さが20m以下……幅員が2m以上あれば建築可

・路地状部分の長さが20m以上35m以下……幅員が次の数式で算出した数値以上あれば建築可 → 2+(L-20)/15  (単位はメートル)

・路地状部分の長さが35m以上……幅員が4m以上あれば建築可

地方条例の多くは、長さが規定より1cmでも長いと、必要幅員が1m単位で広くなるよう設定していますが、京都市建築基準条例では、長さに比例して幅員が決まるように定めています。

このように都市によって条例が異なるため、同じ敷地形状でもその都市の条例によっては建築可だったり不可だったりするのです。

3階建ての建築物は基本的に建てられない

東京都建築安全条例では、路地状部分の幅員が4m未満の場合は3階建て以上が建築不可、耐火・準耐火建築物であれば4階以上が建築不可とされています。とはいえ、耐火・準耐火建築物にすれば、旗竿地に3階建ての建築物が建てられるということではありません。

3階建て以上の建築をする場合は、地方条例以前に建築基準法で非常用進入口の規定が適用されるためです。

非常用進入口の規定とは、3階建て以上の建物には、火災の際にはしご車から直接室内に入れる進入口を設けなければいけないという決まりです。道路または幅4m以上の通路に面して設ける必要があります。

そのため旗竿地は、路地状部分の幅員が4m以上ないと非常用進入口とは認められません。

路地状部分の長さが20m以下の場合は一部緩和規定があるものの、厳しい諸条件をクリアしなければならないため、基本的には幅員が4m以下の路地状敷地で3階建てを建てることは難しいと考えた方が良いでしょう。

 

旗竿地のメリットは?

旗竿地には、整形地とは異なる特徴もあります。売却時の査定でどのように評価されるのか理解するために、まずは旗竿地のメリットからみていきましょう。

メリット1:道路から奥まっているので静かに暮らせる

公道から奥まった場所に敷地があるため、車の往来による騒音が少なく、通行人の視線を気にする必要もありません。プライバシーを保ちながら静かに暮らせるという特徴があります。

メリット2:玄関までのアプローチを工夫できる

細長い路地状敷地は、例えば花を飾ったりエクステリアに凝るなど、活用の仕方次第で暮らしを楽しく演出するスペースになります。路地の奥にある飲食店だと、入口へ続く路地の風情も楽しいように、玄関までのアプローチを工夫することができるのです。

メリット3:路地状部分も敷地面積にカウントできる

路地状部分に建物を建てることはできませんが、敷地面積には算入することができます。これにより建ぺい率や容積率が上がるため、通路奥にある「建築が可能な範囲」の境界線ギリギリに建てても、指定建ぺい率以下に収まる場合があります。

メリット4:固定資産税が安い

旗竿地は整形地に比べて固定資産税が安いのも特徴です。固定資産税の評価において、旗竿地は変形敷地として補正値が適用されるため、同じ面積でも整形地と比較すると税金が安いのです。

旗竿地のデメリットは?

次に、どんな点がデメリットとして挙げられるのか確認していきましょう。

デメリット1:防災時の避難がスムーズではない

自然災害や火災が起こって避難する時、公道に出られる経路は路地状部分のみです。地震による塀の倒壊などが起これば、通路がふさがれて避難経路が無くなる可能性が考えられます。

デメリット2:火災時の消火活動が困難

自宅で火災が発生した場合、消火活動の拠点として使える場所が路地状部分に限られるため、鎮火までに時間を要することがあります。

デメリット3:駐車スペースを確保できない可能性がある

路地状の幅が法律で定められた最低限の2mだと、車種にもよりますが自家用車を駐車するのはかなり大変です。停められたとしても、スペースの余裕がほとんど無いので、乗り降りも厳しいでしょう。場合によっては、別の敷地で駐車場を確保することになります。

デメリット4:引越しや荷物の搬出入が大変

引っ越しでの荷物の搬出や、何か大型のものを運び入れる際は、必ず自宅前の道路にトラックを停車して作業を行います。旗竿地の場合は間口が狭いため、どうしても近隣の家の前に停車して作業することになる上、荷物を運搬する距離も他の戸建てに比べて長くなります。ピアノや大型家具の場合は手作業となり、人手がかさんで費用が割高になることがあります。

デメリット5:人目につきにくいため防犯面で不安

奥まった場所に家があるため、死角が多く、防犯面での不安があります。空き巣などは人目につきにくい場所で発生しやすいため、セキュリティー対策は欠かせません。

デメリット6:土地の分割ができない

ある程度広い土地は全体を売却すると高値になるため、分割して販売するケースがあります。しかし旗竿地はどんなに広くても路地状部分の幅員制限があるため、ほとんどの場合は分割することができません。

デメリット7:建築コストが割高になる

路地状部分が狭い場合、工事の時に大型の重機が奥の敷地まで入れず、手作業が増えてコストが高くなることがあります。またレッカー車が使えないため、工場で製作したユニットを現場で組み立てるユニット工法のプレハブ住宅は、ほとんど建築することができません。建物を解体して更地にする場合も、同様にコストは割高になります。

デメリット8:再建築不可物件もある

昔からある旗竿地の中には、路地状部分の幅員が2m以下の敷地もあります。かつての基準では建築出来ていても、現在の接道義務を満たしていなければ再建築不可物件となり、一度更地にすると二度と新築することができません。

建て直すつもりで古い家屋付きの旗竿地を購入したら、再建築不可だったということがあるので、十分に注意しましょう。

旗竿地の売却はどのように進めればいいのか

旗竿地の特徴をみてきましたが、実際に売却するとなればどのように進めていけば良いのでしょうか。スムーズな売却のためのポイントを解説していきます。

売却時の査定額は低いのか?

旗竿地は、整形地に比べ建物を建てる際に制限が多い点や、実質的に利用できる土地面積が小さいといった理由から、売却しづらい土地です。評価も整形地に比べると低く、旗竿地の取引額は同じ面積の整形地の70〜80%程度になります。

価格が安い点を前面に出す

購入物件を探している人が注目するのは、敷地面積と価格。特に価格は一番重要なポイントです。旗竿地の価格は、周辺の土地相場に比べて安いため目に留まりやすく、かつ安い理由が事故物件などの訳ありではなく旗竿地だからと分かれば、興味を示してくれる可能性が高くなります。旗竿地は、価格の安さをしっかりアピールして売却活動を進めましょう。

隣地所有者に購入を検討してもらう

旗竿地を最も有効に活用できる人は、隣地の所有者です。旗竿地単体で見れば評価の低い土地ですが、だからこそ安く買い取ることができ、自分の土地と合わせて一つの大きな敷地にすれば、活用方法を広げることができるからです。

隣地所有者が購入すれば、土地の拡幅によって自宅の住環境を向上させることができますし、整形地にしてから高値で売却すれば利益を出すこともできるでしょう。

なお、隣家の方に、土地の一部の等価交換をお願いして整形な敷地にするという手も無くはないですが、素人が実現させるのは至難の技です。

買取専門の不動産会社に売却する

仲介による旗竿地の売却は難しいと思ったら、買取専門の不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。

中古住宅の買取を専門にしている不動産会社は、物件を活かすノウハウを豊富に持っています。価値が低いと思える物件でも、意外と高値で買い取ってもらえることがありますよ。

まとめ

旗竿地はその形状ゆえに建築制限が多く、公道に接する部分が少ないため防災・防犯上の不安は否めません。逆に、車や人の往来が気にならないため静かに暮らせるなど、奥まった場所ならではの価値があり、穴場的な魅力もあります。

家・土地を売却するとなると、整形地と比べ価格は下がってしまいますが、売却できない訳ではありません。実績のある買取専門の不動産会社であれば、旗竿地の特徴を上手に活かすノウハウを豊富に持っています。

仲介による売却は難航しそうだと思ったら、業者による買取を検討するのも手。複数社に査定してもらい、価格的に納得できる会社を探してみてください。

当社でも不動産売却のお手伝いをしております。旗竿地の売却でお困りのことやご相談がありましたら、いつでもお気軽にお声がけください。

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著者
旗竿地は売却しづらい?土地の特徴と価値を知りスムーズな売却活動を

札幌手稲店 野口 祥子

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