土地や空き家のこと2025.04.30

借地を更地にして返す義務はある?返還の流れと注意点

こんにちは。イエステーション北章宅建 小樽店の小林です。

借地契約が終了する際に「借地は更地にして返還しなければならない」と聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に親から相続した借地や、引っ越しを機に借地を返還しようとお考えの方にとって、建物の解体費用の負担は大きな問題です。

実際、更地にして返還する義務があるケースもありますが、状況によっては建物をそのままの状態で返還できる可能性もあります。

今回は、借地を返還する際、更地にする義務があるかどうかの判断ポイントや返還方法をご紹介。
手続きの流れに加えて、建物解体にかかる費用の目安や注意点についてもわかりやすく解説します。

相続で借地を引き継いだ方や、返還を検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

空き家

 

まずは「借地権」についておさらい

借地を返還する際に「建物を解体して更地にして返さなければならないのか?」と、悩まれる方は多いかもしれません。

実はその判断は、契約している借地権の種類によって変わってきます。

そもそも借地権とは、地主から土地を借りて、その上に建物を建てて利用するための権利です。

借地人は建物を所有しながら土地を利用し、地主はその土地の所有者として地代を受け取る関係にあります。

この借地権には、契約した時期によって適用される法律が異なり、3つの種類に分かれます。

1992年(平成4年)7月31日以前に契約されたものは「旧法借地権(旧借地法)」となり、1992年8月1日以降に契約されたものは「新法(借地借家法)」が適用されます。

新法のもとでは、さらに「普通借地権」と「定期借地権」の2つに分かれ、それぞれ返還時の対応が異なります。

以下に、借地権ごとの違いを整理します。

【旧法借地権(1992年7月31日以前に契約)】
法律上は更地返還が原則ですが、契約終了時に「建物買取請求権(借地人が地主に建物の買取を求める権利)」を行使すれば、建物をそのままの状態で地主に買い取ってもらえる可能性があります。

【普通借地権(1992年8月1日以降に契約)】
こちらも更地返還が原則ですが、旧法と同じく建物買取請求権が認められており、条件を満たせば解体せずに返還できることがあります。

【定期借地権(1992年8月1日以降に契約)】
契約で「更地にして返還する」ことが明確に定められており、更新や建物買取請求はできません。
原則として、建物は解体した上で返還する義務があります。

このように、契約の種類によって、返還義務や対応方法の選択肢が異なります。

まずはご自身の契約がどの種類にあたるのかを確認しておくことが、返還方法を正しく判断するための第一歩です。

 

借地は更地にして返還しなければならない?返還方法は?

借地を返還する際、基本的な原則としては、「更地にして返す」のがルールです。

これは、民法第599条に定められている「原状回復義務」に基づくもので、借地人は借りたときの状態(通常は更地)に戻して土地を返還することが求められます。

とはいえ、すべてのケースで建物を解体しなければならないわけではありません。

借地の返還には、次のような方法があります。

 

1. 更地にして返還する

更地にして返還する方法は、多くのケースで採用される基本的な返還方法であり、借地人が建物を解体し、土地を更地の状態に戻して地主へ返します。

なお、解体費用は原則として借地人の自己負担となります。

 

2. 建物買取請求権を行使して返還する

旧法借地権や普通借地権の契約では、下記のような条件を満たすと、借地人は地主に建物の買取を請求できる場合があります。

【建物買取請求権を行使できる主な要件】

  • 借地契約が、地主の更新拒絶や解約申し入れによって終了する場合
  • 借地人が建物の所有者であり、その建物が現存していること
  • 建物がまだ使用できる状態であること(朽廃していない)
  • 契約終了と同時に、遅滞なく買取を請求を行なっていること

これらの条件を満たせば、建物を解体せずに地主へ売却し、返還できる可能性があります。

ただし、建物の評価や交渉状況によってはスムーズに進まないケースもあるため、事前に専門家へ相談するのがおすすめです。

 

3. 借地権を譲渡・売却して返還する

借地権自体に財産的な価値があるため、地主または第三者に譲渡や売却することで、建物を残したまま返還できる可能性があります。

ただし、借地権の譲渡や売却には、原則として地主の承諾が必要です。
借地権の譲渡や売却を検討する際は、あらかじめ地主に相談し、承諾を得ましょう。

借地権付き建物の売却については、「借地権付き建物は売れない?売却する方法やメリット・デメリットも」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

 

借地返還までの流れ

借地を返還する際には、事前に全体の流れを把握しておくことが大切です。

返還方法や手続きの選択によって、準備すべき内容やタイミングが変わってくるため、借地返還までの流れを参考にして計画的に進めましょう。

全体像をつかんでおくことで、無駄な手間やトラブルを防ぎやすくなります。

必要に応じて、不動産会社や司法書士など、各分野の専門家の力を借りるのも安心です。

 

手順1|契約内容の確認

まずは、土地賃貸借契約書を確認し、借地権の種類(旧法・普通・定期)、契約期間、更新の有無、返還方法などをチェックします。

 

手順2|地主との交渉・相談

契約内容を把握したら、地主に更新しない旨を伝え、建物の買取交渉や借地権の売却可否について相談します。

返還条件の合意がスムーズに進むかどうかは、地主との関係性にも影響されるため、丁寧な対応を心がけましょう。

 

手順3|解体または売却の準備

更地で返還する場合は、解体業者の選定と見積もり取得を行います。

建物買取や借地権売却を検討する場合は、不動産会社に査定を依頼し、価格交渉の準備を進めましょう。

建物や借地権の評価を適正に行い、後のトラブルを避けるためにも、事前に信頼できる不動産会社に相談しておくのがおすすめです。

 

手順4|建物滅失登記と返還手続き

建物を解体した場合は、1カ月以内に建物滅失登記を行います。

これは建物の存在を登記上で法的に消す手続きで、法律により義務づけられています(不動産登記法第57条)。

申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があるのでご注意ください。

その後、地主立ち会いのもとで土地の明け渡しを行い、返還を完了させましょう。

借地権を売却した場合は、名義を変更するため、所有権移転登記などの手続きも必要となります。
こうした登記関係は、司法書士に依頼するとスムーズです。

 

借地を更地にして返還する際に知っておきたいこと

ヒット
借地を更地にして返す場合、事前に解体に関する知識や費用感をつかんでおくことが大切です。

後から想定外の出費やトラブルが発生しないよう、以下のようなポイントを押さえておきましょう。

 

解体費用の目安

建物の構造によって解体費用は大きく異なります。
一般的な目安は次のとおりです。

  • 木造:3〜4万円/坪
  • 鉄骨造:4〜6万円/坪
  • 鉄筋コンクリート造:6〜8万円/坪

例えば、30坪の木造住宅であれば、およそ90〜120万円程度の費用が見込まれます。
これは構造や解体の難易度、人員数の違いによって費用が変動するためです。

なお、費用や準備に不安がある場合は、無理に解体に踏み切らず、借地権ごと売却するという方法もあります。

状況に応じて不動産会社に相談することで、ご自身にとって最適な返還方法が見つかるでしょう。

解体費用については「空き家の解体費用はどれくらい?更地にせずに売る方法はある?」でも詳しく解説しています。

 

付帯工事費用が発生する場合もある

基本の解体費用に加えて、以下のような工事が必要になる場合は、追加費用が発生します。

  • アスベスト含有建材の除去(特殊処理が必要)
  • 地中埋設物の撤去(浄化槽・古い基礎など)
  • ブロック塀やカーポートなど外構の撤去

これらは現地の状況次第で変わるため、解体前の事前調査が非常に重要です。
余計なコストを防ぐためにも、見積もりの段階でこれらの可能性について確認しておきましょう。

 

解体業者を選ぶ際のチェックポイント

解体工事を安全かつ円滑に進めるためには、信頼できる業者を選ぶことが欠かせません。

トラブルを避けるためにも、業者選びの際には以下のようなポイントを確認することが大切です。

  • 建設業許可や解体工事業の登録があるか
  • 解体工事保険に加入しているか
  • 近隣対策(騒音・粉塵など)が整っているか
  • 産業廃棄物の処理が適正に行われているか(マニフェスト制度(産業廃棄物管理票)に対応しているか)
  • 見積もりが明確で、追加費用の可能性について説明されているか

 

まとめ

●借地権には3種類あり、返還義務も異なる
借地権には旧法借地権、普通借地権、定期借地権の3種類があり、それぞれ契約更新や返還条件が異なります。
定期借地権では、契約終了時に更地にして返還する義務があります。

●借地返還は、更地にして返す以外の方法ある
借地の返還方法には、①更地にして返還する、②建物買取請求権を行使する、③借地権を売却する、といった方法があります。
契約内容や地主との交渉次第では、建物を解体して更地にする必要がない可能性もあります。

●借地返還の手続きは計画的に行おう
契約内容の確認、地主との交渉、必要に応じた解体工事や建物滅失登記など、借地の返還には複数のステップがあります。
スムーズな手続きのためにも、早めに不動産会社や司法書士など専門家に相談して、計画的に準備を進めましょう。

北章宅建は、不動産に関するご相談を全て無料で対応しています。
空き家に関する相談や無料査定、相続問題など、どんなことでもお気軽にご相談ください。

 

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著者
借地を更地にして返す義務はある?返還の流れと注意点

小樽店 小林 康之不動産業に携わる者として公正で安全な取引を心がけ、お客様の立場に立って最善の方法をご提案いたします。 一緒に住まいの華を咲かせましょう。

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