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不動産に関する手続き2023.03.16
親名義の家を子が売却するには?2つの方法のポイントと注意点を解説~後編
年齢や健康上の理由で、親が自分名義の不動産を売却できない場合には、子が「親の代理人になる」「成年後見制度を利用する」という2つの方法があります。今回は「成年後見制度を利用する」方法について詳しく解説します。
認知症になった親の不動産を売却する方法
前回の記事では、子が親の代理人となることで親名義の不動産を売却できる方法を紹介しました。では、親が認知症などで売却の意思表示も委任状の作成もできない場合は、どうすれば良いのでしょうか。
この場合、「成年後見制度」を活用すれば認知症の親の不動産売却が可能です。成年後見制度とは、認知症や障がいなどを持つ人の財産を守るための制度。判断能力が不十分な人が悪意を持った人にだまされて不利益をこうむることがないよう、「後見人」などをつけて法的にサポートすることが目的です。成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つの制度があります。それぞれどのような制度か見ていきましょう。
任意後見制度を利用するケースとは
任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ信頼のおける家族や親族に財産管理などを委任しておく制度です。将来的に本人の判断能力が低下した段階で、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行います。
任意後見人に委任する内容を決めておく契約を任意後見契約といい、本人と任意後見人が公正証書によって契約を結びます。財産管理をどのように行うかは本人の意思で自由に決められるので、自分の子どもを任意後見人に選び、家の売却を任せることもできます。
ただし、これは親に判断能力があるうちに使える制度ですので、認知症になった後では利用できません。将来的に親の不動産を子が売却する必要が出てきそうであれば、親が元気なうちに制度の利用を検討してください。
この制度を利用する際は、家庭裁判所に任意後見の申立てを行う必要があります。なお、居住用不動産を売却処分することを代理権目録に記載していれば、家庭裁判所の許可は不要です。ただし、売却によって本人の利益を害さないよう慎重に判断する必要がありますので、任意後見監督人に相談した方が良いでしょう。
法定後見制度を利用するケースとは
一方、法定後見制度は、認知症などによりすでに判断能力が十分でない場合に利用できる制度です。家庭裁判所によって選ばれた成年後見人などが、本人の利益を考えながら代理で契約行為をしたり、またその代理権が与えられたりします。
法定後見制度は、認知症や障がいの程度に応じてさらに以下の3種類に分かれ、不動産取引においてはそれぞれ役目が異なります。
【補助】
判断能力が不十分な人を支援します。補助においては本人の法律行為は制限されていません。本人が不動産取引を行う時には補助人の同意を要するとの審判がなされている場合に限り、補助人の同意が必要です。また特定の法律行為について補助人に代理権を付与するとの審判がなされている場合には、補助人が本人の代理人となり不動産取引を行えます。
【保佐】
判断能力が著しく不十分な人を支援します。本人が不動産取引を行う時には、保佐人の同意が必要です。
【後見】
判断能力が全くない人を支援します。本人が不動産取引をする場合には、法定代理人として後見人が行わなければなりません。
法定後見人を選任するのは家庭裁判所であり、本人にとって最も適任だと思われる人が選ばれます。未成年者、破産者、本人に対して訴訟をした人は後見人の対象から外されるほか、本人の財産が多岐にわたる、親族間での対立があるといった事情がある場合は、弁護士、司法書士、社会福祉士などが後見人に選任されることがあり、子どもだからといって後見人になれるとは限りません。また、後見人になることを希望した子が選ばれなかったとしても、不服申立てはできないという点に注意が必要です。
法定後見人は、本人の利益になることに限り、本人に代わって法律行為を行うことができます。不動産の売却も、生活費や医療費の確保など、本人のために必要と判断されれば売却できますが、居住用の不動産を売却する場合は裁判所の許可が必要になります。許可を得ず売買契約を結んだ場合は契約が無効になりますので注意してください。
この制度を活用する手続きの流れは「成年後見制度を活用! 認知症の親の不動産を売却する方法とは」で解説していますので、併せてお読みください。
まとめ
実の子であっても、親の不動産を勝手に売却することはできません。そのため子が親名義の家を売却する必要がある場合は、親の判断能力があるうちに子が代理人となって売却するか、任意後見制度を利用して任意後見人になっておきましょう。
認知症などにより親の判断能力が不十分な場合は、必然的に法定後見制度を利用することになります。この制度では、必ずしも子が後見人に選任されるとは限りませんが、「介護医療費に充てるため」など不動産の売却が本人のためと判断されれば、後見人による売却が可能です。