税金のこと2022.01.11
相続した空き家を売却。3000万円控除が受けられる空き家特例とは?~その1
実家を相続したけれど、誰も住まないので売却を検討しているという方は少なくないでしょう。空き家の実家を売却した際、利益が出たら譲渡所得税を払わなければなりませんが、一定の条件を満たしていれば譲渡所得から3,000万円を控除することができ、税金が安くなります。
これは「相続空き家の3,000万円特別控除」、通称「空き家特例」と呼ばれています。特例が適用されればかなりの節税効果がありますが、適用には厳しい要件があり、全てを満たしていなければなりません。
本記事では、この「相続空き家の3,000万円特別控除」の適用要件について、順を追ってわかりやすく解説していきましょう。
空き家特例(相続空き家の3000万円特別控除)とは?
「相続空き家の3,000万円特別控除」は、2016年度の税制改正により導入された特例です。正式名称は、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
相続で得た空き家が要件を満たしていれば、譲渡所得から3,000万円が控除でき、非常に大きな節税効果があります。
〈譲渡所得(売却益)の計算方法〉
売却益 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
売却によって得た収入から、購入当時の金額(取得費)と、仲介手数料や印紙税など売却時にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた額が売却益です。
なお、取得費は次の①②の金額の内、大きい方の金額を使います。
①実額法(じつがくほう):土地・建物の購入代金と取得に要した費用を合計した金額から、建物の減価償却費を差し引いた金額
②概算法(がいさんほう):譲渡収入金額(売却金額)×5%
もう何十年も前のことで取得費が分からないという場合は、②の概算法(概算取得費→通称「5%ルール」)を使います。
取得費不明の場合は悪魔の5%ルールに注意
買った時の金額よりも売った金額の方が高い場合は、売却益に譲渡所得税が発生します。しかし取得費は、購入時の売買契約書や領収書などがなければ証明できません。取得費が不明な場合は、上記②のように、売却金額の5%を購入金額とする「5%ルール」を適用しなければなりません。これが悪魔の5%ルールです。
なぜ悪魔なのかというと、5%ルールを適用すると、実際にはかなり税金がかかってしまうからです。具体的な数字を例に考えてみましょう。
〈例〉売却金額3,000万円、取得費が証明できない場合
取得費は 5%ルールにより150万円
売却益は 3,000万円 − 150万円 = 2,850万円
つまり、2,850万円に対して譲渡所得税がかかることになります。
10年以上住んでいた物件だとすると、譲渡所得税は14.21%。
2,850万円 × 14.21% = 404万9,850円もの譲渡所得税を支払うことになります。
相続の場合、家を購入した時期はかなり昔のことでしょう。契約書や領収書が見当たらない、ということは珍しくありません。しかし、この5%ルールでの譲渡所得税はなんとか回避したい…。そんな時に「空き家特例」を適用できれば、3,000万円分まで譲渡所得税はかかりません。
とはいえ、この特例の適用には非常に厳しい要件があります。相続した空き家に関する適用要件は、どのようなものでしょうか。次回は3,000万円控除を受けられる要件について、具体的に確認していきましょう。