不動産売却の基礎知識2020.10.27

管理費や修繕積立金を滞納してもマンションは売却できる?

マンション購入者には、管理費や修繕積立金を、毎月支払う義務があります。これらは日々の管理や大規模修繕のために使われる大事な資金なので、マンションの所有者全員が平等に負担しなければなりません。

 

もし収入源などの事情で管理費などが支払えなくなってしまったら、どうなってしまうのでしょうか。また、滞納してしまったマンションを売却することはできるのでしょうか。

 

 

マンションの管理費・修繕積立金とは

 

管理費は、分譲マンションの住民が日々の生活を安全で快適に過ごせるよう、建物や敷地など共有部分の管理に使われる費用です。

例えば廊下やゴミ置き場などの清掃、エレベーター・自動ドア・給排水設備の保守点検、共用部の電気代といったものに充てられます。

 

修繕積立金は、マンションの経年劣化に備え、外壁塗装や屋上防水といった修繕のために必要な費用を、あらかじめ一定額積み立てていくものです。

大規模修繕には高額の費用がかかるため、長期間に渡って計画的に積み立てておかなければなりません。

 

管理費も修繕積立金も、資産価値を維持するために欠かせない費用。そのため、長期に渡って滞納する人がたとえ一部でも出てくると、マンションの維持管理・修繕が適切に行えなくなる可能性があるのです。

 

このような事態を防ぐため、管理組合は滞納者に督促を行いますが、それでも支払われない場合は、最終的に法的手段も含めた厳しい措置を実行されることになります。

 

 

意外と多い管理費・修繕積立金の滞納問題

 

滞納はレアケースと思われがちですが、実は珍しい話ではありません。現実には滞納者を抱えている管理組合は意外に多いのです。

 

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、過去1年間のトラブルの発生状況において「費用負担に係るもの」は25.5%、そのうち「管理費等の滞納」が 23.9%を占めています。

 

全体の比率でみると、管理費滞納の問題を抱えている管理組合は、100件あたり6件あることになります。

 

 

管理費等の滞納が増えている背景

 

管理費・修繕積立金の滞納者が出る背景には、経済不況や雇用状況の悪化が大きく影響していると考えられます。

 

無理なく払える住宅ローンを組んで購入したはずが、その後収入が減少したり職を失うなど、思わぬ事態に陥ることもあります。資金繰りの悪化から管理費・修繕積立金を滞納している場合、その多くは住宅ローンの返済も滞りがちです。

 

住宅ローンの場合、1度でも滞納すると金融機関の担当者から督促の連絡が入りますが、管理費などを滞納しても、すぐに管理組合から厳しい督促状が届くということはありません。

 

そのため、滞納していることにあまり罪悪感を抱かなかったり、支払いを後回しにしてしまうケースがあるのです。

 

一方で管理費の滞納は、マンション運営に支障をきたす深刻な問題となっており、近年では滞納者に競売を申立てる管理組合が増えてきています。

 

 

マンションの管理費・修繕積立金は、滞納したらどうなる?

 

では、実際にマンションの管理費・修繕積立金を滞納した場合、どうなるのでしょう。

主に次のような段階を踏んで進みます。

 

1.管理組合から滞納者へ電話や書面で督促が来る

2.滞納が続く場合は、内容証明等で支払いを請求が届く

3.それでも対応しない場合は、口座の差し押さえや競売により滞納分を回収する法的措置がとられることもある

 

  • 滞納後に取られる措置

 

滞納が発生すると、管理組合では次のような流れで手続きを進めます。

 

①理事会での報告

管理組合は理事会で滞納の事実を報告して、対応を協議します。

 

最初のうちは電話や書面で督促を行いますが、金額が膨らんだ場合や悪質な滞納者には、法的な手続きを検討します。

 

理事会のメンバーは基本的にマンションの居住者ですから、日常的に顔を合わせる住民に滞納したことが伝わります。日常的に顔を合わせる機会があるでしょうから、滞納者の家族は非常に気まずい思いをするでしょう。

 

中には、子どもにも文句を言われるなど、何らかの影響が及ぶことがあります。

 

②総会での報告

年に1度開催される総会では、滞納の件が報告事されるほか、法的手続きを進めるかどうか、出席している区分所有者に意見を求めることがあります。

 

③管理組合の法的な対応

金額が大きい場合や長期間滞納を続けるなど悪質な場合には、管理組合の判断で代理人弁護士を選任し、訴訟を起こします。

 

訴訟により、管理組合は債務名義(債権の存在と範囲を公的に証明する文書)を取り、それに基づき競売の申立てを行います。

 

請求額は、滞納額とイコールではありません。滞納のペナルティとして高額な遅延損害金が加算されるほか、訴訟や競売に要した費用も上乗せされるため、支払い額はさらに膨れ上がります。

 

 

  • 滞納による競売は法的に認められている

 

マンションの区分所有物件は、住宅ローンの担保としているケースがほとんどです。そのため、競売の後は金融機関が優先的に債務を回収します。

 

そのため管理組合は、競売を申立てても滞納されている管理費を回収できる見込みがほとんどないため、通常は競売自体が認められません。しかしそれでは、マンション住民の生活に支障をきたしてしまいます。

 

こうした事態を打開するために有効なのが、区分所有法第59条の規定による競売です。

 

同条では、管理費・修繕積立金の回収が極めて困難な場合には、管理組合は、その区分所有者が所有する区分所有建物の競売を請求できると定めており、たとえ当該マンションの抵当権が資産価値以上に設定されていても、競売を請求することができるのです。

 

競売を実施した後は、区分所有法第8条で『旧所有者が負担していた管理費等の支払い義務を承継する』としている通り、これまでの滞納額を新しい所有者に滞納額を請求することができるのです。

 

 

  • 管理費・修繕積立金を滞納したままの物件は売買できる?

 

管理費等を滞納している区分所有者が、滞納を解消することなく、売却をすることはできるのでしょうか。

ここでは住宅ローン完済済の物件を例に挙げて説明します。

 

①滞納した管理費・修繕積立金は買主が支払いの義務を負う

 

区分所有法第8条では『前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる』とされています。

 

ここでいう債券には、管理費や修繕積立金も含まれます。

つまり、当該物件を購入した新たな所有者には、前所有者が滞納した管理費等の滞納を支払う義務も付随するということです。

 

②売却時は重要事項説明で滞納があることを告知する

 

このため、売却の際は管理費等の滞納の事実を、重要事項説明の中で提示する必要があります。

 

もしこの事実を隠したまま売却すると、損害賠償などの法的措置がとられることになるので注意が必要です。

 

また買主には、過去滞納された管理費等の負担を強いることになるため、相場の価額からあらかじめ滞納額を値引きして売り出すことになります。

 

売却することで滞納は解消できますが、そもそも滞納額があまりにも大きいと、たとえ割り引いた金額で売り出しても、その金額の正当性が疑われることになります。

 

滞納があるからといって売れない訳ではありませんが、滞納があった物件は住人の間で何かと噂されるため、購入したがる人は多くありません。売却価額を大幅に引き下げなくてはならない可能性があることも、視野に入れておくべきでしょう。

 

また買主側も、中古マンションを購入する際には、管理費や修繕積立金の滞納がないかを、事前にしっかりと確認しておくことが必要です。

 

管理費を滞納してしまった時に取るべき対応

 

滞納を続けて何の対処もしないと、最悪の場合、突然競売にかけられるといった展開が待ち受けています。

こうした事態にならないためには、どのように対処すればいいのかみていきましょう。

 

  • 放置は厳禁

 

再三の督促もかかわらず「放置する」。

これは一番やってはいけないことです。

 

支払いの義務を怠った上に連絡もしないとなると、理事会としては次の手段に出るしかありません。法的措置が取られて、知らない間に競売が決定されているという展開も十分にあり得ます。

 

お金ができたら連絡するとか、忙しくても連絡を先延ばしにするのは絶対に避け、早急に対処しましょう。

 

  • 返済の意思があることを伝える

 

まず最初にすべきなのは、理事会に謝罪して滞納の事情を説明し、返済する意思があると伝えることです。

 

債権者は同じ建物に住む近隣住民なのですから、返済する目途を伝えて誠意を見せれば、多少の猶予は与えられるはず。住宅ローンの滞納と違い、突然の法的処置をとられるリスクは回避することができるでしょう。

 

  • 可能な範囲で返済する

 

理事会に経済状況を理解してもらえたら、少しずつでも返済していきましょう。

 

全く払わないまま返済期限の延長を懇願するのではなく、例えば2カ月に1回は払う、少しずつでも滞納額を減らして工面できた月は多く払うなど、できる限り返済を継続すること。

 

そうすることで、滞納を解消する意思があることを示すことができます。

 

  • 任意売却を検討する

 

管理費や修繕積立金の返済の目処が立たなければ、マンションの売却も視野に入れなければなりません。

 

住宅ローンを完済していれば自分の意思だけで売却を決断することができます。

住宅ローンを返済中の場合は、抵当権が設定されているため自由に売却することはできませんが、そのままでは滞納額が増大し、管理組合が競売の実施に踏み切る事態も想定できます。

 

  • 競売は市場価格より安値になる

 

競売は、一般の売却と比べて低い価格で落札されるため、マンションが他人の手に渡った後も、住宅ローンの返済だけが残るという事態がありえます。

 

そのため住宅ローンの残債があるマンションを売却するには、任意売却という方法が適しています。

 

任意売却は一般の不動産売却と全く変わらないので、より相場に近い価格で売却することができます。

 

ただし、金融機関に任意売却を許可してもらう交渉など専門知識が必要なため、任意売却を扱っている不動産会社に依頼する必要があります。

 

  • 任意売却後に残債を返済していく

 

マンションの売却額が、住宅ローン残債と管理費などの滞納額の合計を上回れば、債務は解消されます。

 

売却額が債務を下回るオーバーローンになれば、残った債務の返済方法について債権者と協議します。任意売却はこの点が課題になるものの、売却するのなら競売よりも高く売れる手段を選ぶ方が得策です。

 

このメリットを生かすためにも、可能な限り競売にならないよう、任意売却を実施できる道を模索しましょう。

 

 

まとめ

 

住宅ローンの滞納と比べ、マンションの管理費や修繕積立金は滞納してもそこまで早い段階で督促が来るわけではありません。とはいえ、油断していると債務は大きく膨らんでいきます。

 

督促を無視し続けたり、長期に渡って滞納を続けると、最終的に管理組合から競売を申立てられる可能性もあります。

 

「まだ大丈夫だろう」「お金の目処が立ったら連絡しよう」と対応を先延ばしにするのは厳禁。少しでも早く管理組合に事情を伝え、返済方法を相談しましょう。場合によっては、一定の猶予を認めてもらえるかもしれません。

 

それでも、管理費や修繕積立金を踏み倒すことはできませんので、少しずつでも返済し続けることが大切です。滞納を解消する意思をきちんと示すことで、競売という最悪の自体を回避することが可能になります。

 

北章宅建は、不動産に関するさまざまなご相談に無料で応じています。

マンションの査定や売却など、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。

家を売るなら不動産売却相談 家を売るなら不動産売却相談
  • 基礎にひび割れ・亀裂がある家は売却できる?原因...
不動産売却の⼿引き
PDFダウンロード
住まいの売却完全ガイド
PDFダウンロード