不動産売却のコツ2023.01.16
火事物件を売却する方法をご紹介。告知義務や注意点も確認しよう
こんにちは。イエステーション北章宅建 小樽店の小林です。
火事が起きた物件の売却を検討される際、「土地や建物は問題なく売れるのだろうか」と不安に感じる方も多いはず。
火事の事実がある場合、売主は買主へ告知をしなければならず、売却価格への影響もあります。
そこで今回のコラムでは、火事物件を売却する方法やポイントを解説。
告知義務や価格への影響、火事物件を売る際の注意点もあわせて説明しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
火事物件を売却する前に「告知義務」について知ろう
火事物件を売却する際に売主が必ず行わなくてはいけないのが、過去に起こった火事の事実を買主に伝えること。
実際の告知は、仲介の依頼先である不動産会社が売買契約前に重要事項説明において行いますが、売主にはこの火事の内容をきちんと報告する義務があります。
この義務を「告知義務」といい、売主と不動産会社双方に課せられています。
判断の基準は人それぞれですが、「もしその事実を知っていれば買わなかった」となる瑕疵(欠点)があれば、判断材料として伝えるべきといえます。
瑕疵は大きく分けて3種類。
雨漏りやシロアリ被害などの「物理的瑕疵」や、物件の近くに墓地や工場など忌避される建物(嫌悪施設)がある「環境的瑕疵」、自殺や殺人事件などの「心理的瑕疵」があります。
火事があった事実は心理的瑕疵に該当し、心理的瑕疵がある物件は「事故物件」と呼ばれます。
告知しないと民事上の責任を問われる可能性がある
物件に瑕疵があるのにその事実を買主に告知しなかった場合、買主に「契約時にこんな瑕疵は知らされていない」として、契約不適合責任を問われる恐れがあります。
民事上の責任として、契約解除や代金の減額、損害賠償を求められる可能性があるのです。
事実を伝えていないので、売主としては「火事の事実を知っていたら契約しなかった」と主張されたら反論できません。
引き渡し後にトラブルを招かないためにも、火事の事実は正確に伝えましょう。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)について詳しくは、「不動産売却で注意すべき瑕疵担保責任とは?責任への対策方法も解説」で解説しているので、あわせてご参照くださいね。
火事物件の売却価格はどのくらい下がる?
火事が起きた土地や建物の売却価格は、一般の土地や建物の市場価格と比べて安くなる傾向があります。
ただし、火事の事実があれば必ず価格が下落するということではなく、火事の規模が大きい場合や、亡くなった人がいる場合などは下落率が高くなるのが一般的です。
死亡事故となったケースでは、建物の取り壊し・建て替えをしても相場よりかなり低くなってしまうことが多いでしょう。
つまり、心理的瑕疵が大きくなるほど価格に影響するということです。
火事物件の売却価格の相場は、火事があっただけの場合は約2〜3割ほど落ち込み、火事による死者が出た場合は5割ほど下落するといわれています。
物件や家事の規模によって売却価格が変わってくるので、あくまで目安として参考にしてくださいね。
また、不動産の価格は、スーパーなど生活に役立つ施設へのアクセスが良かったり、公共交通機関が近いなど、人気の立地や周辺環境の要素も関わってきます。
このように立地が良かったり、火事の程度がボヤで済んだ場合や、壁一面が焼けてもリフォームで生活に問題ない程度に修繕可能である場合は、売却価格にそれほど影響しないと思われます。
ただし、建物が焼けた場合は家の構造部などに損傷がないか、耐震強度に影響がないか確認が必要ですので注意しましょう。
火事物件を売却する方法やポイントは?
火事物件は通常の物件と同じく、不動産会社に仲介を頼んで売却することも可能です。
ただし、ポイントとしていくつか工夫を施すことで、売却価格が上がる可能性もあります。
火事物件を売却する際に押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
- 更地にして売却する
- 宅地とは用途を変えて売却する
- ホームインスペクションを受けてから売却する
- 不動産会社に直接売却する
4つ目の方法は、売却価格よりスピードを優先したい方に向けてのものとなりますが、あわせて解説しますね。
更地にして売却する
火事物件を売るコツは、いかに心理的瑕疵の印象を少なくするかということ。
つまり、焼けてしまった建物を取り壊して更地にしてしまえば売りやすくなりますし、立地条件によっては高く売却できるかもしれません。
解体費用を出さなくて済むことは、買主にとって好条件になるでしょう。
ただし、売主側には解体費用の負担だけでなく、固定資産税・都市計画税の負担も増えます。
家を解体することで、それまで住宅用地として適用を受けていた軽減措置が受けられなくなるためです。この点には注意が必要です。
宅地と用途を変えて売却する
心理的瑕疵の影響を軽減する手段として、更地にした後、宅地以外の用途に変えて売り出す方法もあります。
一戸建てやマンションといった住宅を建てるための土地ではなく、駐車場やレンタルスペース用の土地として売る方法です。
居住用ではないので、火事の発生や人が亡くなったことに対する心理的瑕疵は比較的影響しにくく、立地によっては高値で売れる期待が持てます。
ホームインスペクション(住宅診断)を受けてから売却する
ホームインスペクション(住宅診断)とは、プロの住宅診断士に住宅の劣化状況や、不具合の有無、修繕箇所やかかる費用などのアドバイスを受けられる有料サービス。
火事の影響で建物に不具合が生じていないかどうかも、購入希望者にとって気になるポイントです。
売主の自己申告で「問題ないと確認した」と伝えるより、「プロに確認してもらって修繕した」と報告書を提示するほうが不安軽減の効果は大きいはず。
費用は掛かるものの、売り出す前に行えば「火事はあったけど住むには問題ないな」と購入希望者にとっての安心材料になるでしょう。
不動産会社に直接売却する
不動産の売却には、不動産会社に仲立ちを頼んで買主を探してもらう「仲介」と、直接売却する「買取」があります。
買取価格は仲介での売却価格より安くなる特徴があるものの、売却先が不動産会社に決まっているため、現金化までのスピードが早いことがメリット。
そのため、火事物件を高く売る工夫からは外れますが、なるべく早く売りたい方にとっては有用な方法です。
また、一般の買主とは異なり、不動産のプロとして物件状況をよく調査してから買い取るため、契約不適合責任を免責できる可能性も高いです。
買い取られた物件はリフォームしてからの売り出しがほとんどですので、火事物件をそのまま買い取ってもらえるケースが多く、検討の価値があるといえるでしょう。
ただし利用の際には複数の不動産会社に無料査定を依頼し、査定時の対応や査定金額などを比較してから、信頼できる依頼先を選んでくださいね。
火事物件を売却する際の注意点
火事物件を売却する際には、次の3点にご注意ください。
①告知義務の期間を自己判断しないこと
告知義務の期間は火事の規模によって異なるのが一般的。
複数人が亡くなったような大規模火災の場合は、数十年、何十年経っても人々の記憶から消えない可能性が高いでしょう。
一方で、死亡者のいない小規模な火事であれば、時間経過とともに記憶が薄れていく場合もあります。
しかし、心理的瑕疵がある物件の取り扱いには明確な定義がないため、自己判断で「もう忘れられているから告知しなくて良いだろう」と決めるのは危険です。
近所の人が覚えていれば、買主に伝わった際に「火事の事実を聞いていない」として訴訟を起こされてしまう恐れもあります。
自己判断せず、告知義務の対象となるかどうか不動産会社に相談しましょう。
②告知義務は隣地・隣家の火事も対象になること
自分の所有する土地や建物だけでなく、隣接する住戸やマンションの隣の部屋などで火事が起きた場合も、告知義務の対象となる可能性が高いです。
特に死者が出た場合は、告知しておいたほうが無難です。
例えば、火事が起きて自身の家では死亡者は出なかったけれど、隣家に燃え移って死亡者が出てしまった、というケースもあるでしょう。
不動産会社に詳細を説明し、買主に伝える内容を相談することをおすすめします。
③売買契約締結後に火事が発生した場合は契約解除できること
売買契約を買主と結んだあとは、引き渡しをするまで、売主に物件の引き渡し義務・引き渡しまで物件を保全する義務があります。
ただし、物件を引き渡す前に火事(売主の過失ではないもの)が発生して建物が燃えてしまった場合、買主はこの契約を解除することができます。
また、解除されなかった場合、売主は物件を修復して買主に引き渡します。実際には火災保険で修復費用を補填することになるため、引き渡しまで解約しないよう注意しましょう。
ちなみに火事によって損なわれた物件の修復が著しく困難な時や、過大な費用を要する時は、売主側からも契約を解除することができるとされています。
まとめ
●不動産売却の際、売主にはきちんと家の状態を報告し、瑕疵(欠点)があれば伝えるべきとする「告知義務」が課されます。火事の事実は「心理的瑕疵」に該当します。告知義務を怠ると、民事上の責任を負い、契約解除や代金の減額、損害賠償を求められる可能性もあります。
●火事物件の売却価格は、一般物件に比べて安くなる傾向があります。売却価格の下落率は、ボヤ程度の小規模な火事と複数の死者が出たような大規模な火事でも異なります。心理的瑕疵が大きくなるほど、価格に影響するといえるでしょう。
●火事物件の売却価格を少しでも上げたい場合は、いかに心理的瑕疵を小さくするかがポイントです。更地にして売ったり、宅地とは用途を変えて売ったりする方法や、ホームインスペクションを受けて買主の安心材料とする方法もあります。なるべく早く売りたい方には、不動産会社に直接売却する(買い取ってもらう)のもおすすめです。
●火事物件を売却する際は、告知義務の期間を自己判断しないよう注意しましょう。告知義務は隣地・隣家の火事も対象となります。売買契約を結んだあと、引き渡しまでに火事が発生して建物が焼失してしまった場合は、買主から契約を解除される場合があります。そうでない場合は、基本的に売主が物件を修復して引き渡します。
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